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私たちは今、世の中の常識が大きく変化していく社会と自然の大きな転換期の中にいます。加速する我が国の人口減少、気候変動の深刻化、世界の中で立ち後れる経済と技術の進歩、静かなる有事とも言うべきこの危機に際し、国においても政権構成が再編され、大胆な改革が進められようとしています。令和8年度の予算編成にあたり、私たちは、この大きな環境変化、そして、その変化に対応し、克服するために国や県がとる政策の方向性など、時代の潮流を的確に分析し、地域の針路を定めなければなりません。大きく言えば、それらは、次のようになるでしょう。
(政治経済環境のパラダイムシフト~成長と強靭化の両立~)
第一に、政治経済の枠組みへの変化への対応です。新政権は、責任ある積極財政により、国民経済の安定と成長を図る施策を展開しつつあります。物価高に対する直接的な激変緩和策のみならず、ガソリン税の暫定税率廃止や税制の抜本見直しなど、国民の手取りを増やすことで消費と投資を活性化させ、力強い経済循環の構築を目指しています。あわせて、危機管理投資の考え方を導入し、有事や災害、エネルギー不足といったリスクへの備えを成長の機会と捉え、官民が連携して先端技術に戦略的投資を行う仕組み作りに取り組んでいます。地方においても、この国の投資意欲を活用し、諸情勢の変動に迅速に対応できる自立した経済圏の再構築に役立てていくことが望まれています。
(国土強靭化と防災の標準装備化)
第二に、災害大国としての新たな国土強靭化です。能登半島地震から2年を迎えた中、令和8年度には防災庁が設立されます。その眼目は、平時からの徹底した事前防災の実現にあります。デジタル技術、衛星情報、ドローン等の先進技術を活用しつつ、事前防災の準備を平時からの、そして、全国の標準装備にすべく、急ピッチで作業を進めていくこととなります。加えて、発災時には、復旧・復興まで一貫して自治体を支援する体制を整えます。南海トラフ巨大地震や予期せぬ集中豪雨の危機が迫る中、地方自治体は、国の新たな防災体制と連携し、ハード・ソフトの両面、また、行政側の装備と住民力の強化の両面により人命と地域社会を守り抜く仕組みの構築が不可欠になっています。
(食料・エネルギー安全保障の再定義)
第三に、国家の存立基盤である食料とエネルギーの持久力強化です。緊迫する国際情勢や気候変動は、食料やエネルギーの海外依存から脱し、国内自給を含めた多様化を実現することを迫っています。本市においては、新政権が掲げる「農業構造転換集中対策期間」の創設が重要な意味を持ちます。これは、農林水産業を単なる地域産業ではなく、国家の安全保障の根幹として位置づけ、先端技術の導入はじめ、事業革新による稼げる農業への転換と食料生産の持続的拡大を図ろうとするものです。この趣旨を受け止め、強靭な食糧供給基地としての機能を確立することが求められています。
(人口減少下におけるウェルビーイングの追求)
最後に、少子高齢社会の不可避な進行への対応です。歯止めがかからない出生数の減少を背景に、社会保障制度の持続可能性を確保する給付と負担の議論は待ったなしで進められています。そうした中、高齢化で先行する私たちが目指すべきは、健康寿命を延ばし、シニア層や女性が主体的に活躍できる場を広げつつ、次世代を担う若者たちの負担を軽減し投資を強化していく道です。世代を超えて手を取り合い、好意を返し合って地域を支える新しい互助社会を築くことが、一人ひとりの「幸福感(ウェルビーイング)」の最大化を目指すこの国の地域社会のモデルを示すことになると考えます。
(基礎自治体の役割と南あわじ市の使命)
ここで、改めて社会の枠組みが大きく変容する激動の時代において、基礎自治体が果たすべき役割を確認しておきたいと思います。
自然環境や社会構造の変動の影響は、まず地域の生活や産業の現場に現れます。地方自治体は、その変化をいち早く察知し、当面の激変緩和に努めるだけでなく、将来を予測して長期的視野から必要な施策を実行する責務があります。日本は、他の先進国やアジア諸国に先駆けて人口動態や食料・エネルギー安全保障をはじめ多くの課題を背負っています。その現場を担う私たちは、中央の施策を待つのではなく、実体に即して声を上げ、国や県を動かし、地方から日本を強くしていく役割を担わなければなりません。
とりわけ本市は、全国へ良質な食材を届ける「食の産地」として、食料安全保障を支える大きな役割を担っています。さらに、豊かな自然や歴史文化といった観光資源、近畿圏と瀬戸内を結ぶ地勢、そして何より、シニア層や女性の就業率が極めて高く、このまちをより良くしていこうとする、市民の皆さまのあふれる活力という大きな潜在力を持っています。
この強みを最大限に活かし、現在の日本が直面する課題を先進的に解決する強靭でしなやかな地域モデルを構築すること。それが、これまで市民の皆さまと共に積み上げてきた歩みの先にある、本市が目指すべき姿であると考えております。
市政運営の指針となる最上位の計画、「第2次南あわじ市総合計画」は、令和8年度をもって期間満了を迎えます。令和9年度からは、これから策定する新たな指針に沿って政策を推進することとなります。令和8年度を次期計画の策定期間とし、これまでのまちづくりの実績も踏まえつつ、ワークショップや対話を通じ、市民や多様な地域団体の方からの意見を頂戴し、市民と協働のもとに計画を策定してまいります。また、本計画に合わせて、本市の地域創生施策の推進戦略をまとめた「第3期地方版総合戦略」を策定し、一体的に政策方針を提示します。
これらの計画に基づき、政策の一貫性・整合性を確保しつつ、着実に次代への基盤を築くため、令和8年度予算においては、以下の通り政策の軸である「5つの行動」を進化させながら、市政を力強く展開してまいります。
第一の行動は、『超高齢社会克服のモデルとなるまちづくり』です。
令和6年版高齢社会白書によれば、令和2年の世界総人口は約78億4千万人で、40年後には、約100億7千万人となる一方、高齢化率も、この間、9.4%から18.7%に急上昇すると見込まれています。その中で、我が国では、令和5年10月で既に総人口1億2,435万人中、65歳以上は3,623万人、15歳から64歳の生産年齢人口は7,395万人と、高齢化率29%に達し、2人に満たない現役世代で高齢者1人を支えるという状況にあります。
一方、南あわじ市の高齢化率をみると、令和5年度末で約36.0%、国全体の人口推計では、約20年先に相当します。しかし、本市の高齢者就業率は、約4割と、国や県の平均を大きく上回り、健康長寿で、支える側でご活躍くださっているシニア層が多いことが伺えます。更に、女性就業率も57%と国平均を大きく上回り、全員参加社会に最も近い地域の一つであると言えます。この強みを更に伸ばし、障がいをお持ちの方も含め、誰もが活躍でき、いつまでも支え合う、少子高齢社会克服のモデルとなるまちをめざし、次の4つを重点に施策を展開してまいります。
まず、生涯活躍社会の実現です。年齢や性別を問わず、生涯にわたり地域の中で役割を持ち、いきいきと活躍できる地域社会を目指し、引き続き具体的な取組を進めてまいります。本市では以前より、高齢者等元気活躍推進事業を展開するなど、シニア世代がこれまでの経験や能力を活かし、地域社会の担い手として活躍できる環境づくりに取り組んでいます。その中のひとつ、働くシニア応援プロジェクトでは仕事の切り出しや就労支援などを行ってまいりました。令和7年度からはシニア層に加え、障害や疾患を理由にフルタイムの就労が困難な方など、多様な方の力を地域で活かす超短時間雇用プロジェクトに発展させ、潜在的な働き手と人手不足に悩む事業所とを結びつける、本市独自の先進的な取組を進めています。令和8年度は、官・民・関係団体と連携し、地域に根付いた持続可能な仕組みとすべく、本事業の拡大と定着を図ってまいります。
そして、生涯活躍社会の前提となるのは、健康寿命の延伸です。その中核であるフレイル予防について、さらなる普及を図ります。フレイル外来については、6か月間の指導終了後も、生活機能の維持及び健康習慣の定着を図るため、専門職による社会参加への同行支援を開始します。加えて、移動手段を持たない等、通院が難しい高齢者を対象とした訪問型の支援にも着手します。また、まちぐるみ健診を強化し、病気の早期発見・早期治療を文化として定着させてまいります。
健康の確保においては、日常的に身体を動かし、無理のない形で活動量を維持する環境づくりも重要です。本市は、シニア世代の移動手段の確保と、安全に身体活動を継続できる環境づくりの一環として、令和7年度から電動アシスト自転車を活用したeチャリプロジェクトに着手しました。令和8年度は、第2期実証事業として、自転車利用が健康に及ぼす効果の検証に取り組むとともに、三輪型電動アシスト自転車も導入し、その活用の可能性も検証してまいります。
加えて、持続可能な地域包括ケアに向け、昨年度より「シニア元気分け合いプロジェクト」を始動しています。介護専門職だけでなく、地域の団体や住民一人ひとりが、それぞれの得意分野を活かしながら主体的に関わり、高齢者の暮らしを地域全体で支える仕組みを構築します。その取組の一つとして老人福祉センター湯の川荘を活用した「ふらっと湯の川」を整備します。運動や入浴、買い物、娯楽、移動支援などを一体的に提供する新たな居場所のモデルを構築し、市内全域への展開を目指します。
健康維持に不可欠な課題が地域医療の充実です。小児科をはじめとする医師の高齢化や、産婦人科、助産院が市内に存在しないなど極めて厳しい現状を改善するため、新たに未来医療サポート事業を創設いたします。医療機関の開業等に費用を助成することで、次世代を担う医師の呼び込み・定着を図り、市民が身近な場所で安心して医療を受けられる体制の維持向上につとめます。医療・介護専門職の人材確保と、地域医療の維持向上、そして住民同士の支え合い。これらを融合させ、市民の健康と安心を、責任感を持って次代へと繋いでまいります。
人生の大先輩方がいつまでも役割を持ち、生き生きと輝き続ける生涯活躍の社会づくりは、ふたつの意味で、次世代を支える礎となります。まず、働くことに喜びを感じ、生涯を通じて生き生きと挑戦し続ける大人の姿を身近に感じることで、子ども自身、生涯を通じて学び、挑戦したいと願う前向きな活力を引き継いでいきます。また、高齢者が自立し、子どもたちの成長を応援するなど様々な形で社会に貢献しつづけることにより、若い世代の負担が大きく軽減され、子どもを産み育てる意欲へとつながります。
その視点も踏まえた本市の目指す姿が「子育ての喜びが見えるまち」です。
地域の宝である子どもたちが、自らの可能性を信じ、伸び伸びと個性を輝かせることができるよう、次のような施策を展開し、地域全体で子育て世代の安心を支え、次世代を育む環境をさらに強固なものとしてまいります。
まず、産まれる前から子育て期に至るまで、保護者が安心を実感できる切れ目ない支援をさらに充実させてまいります。
新しい命の誕生を祝福する出産祝金を継続するとともに、令和8年度は母子の健やかな人生を支える第一歩として、新たに妊婦歯科個別健診を開始します。通院を支援する出産・健診安全アクセス支援事業と合わせ、妊娠期から市が寄り添う体制を整えます。
子育て期は、こども誰でも通園制度の本格実施により、多様なライフスタイルに応じた身近な居場所を地域全体で確保いたします。あわせて、保育現場に導入しているICT業務支援システムも活用しつつ、保育士が子ども一人ひとりと向き合う時間を最大限に確保し、質の高い教育・保育環境を実現してまいります。
加えて、地域全体で子育てを支える基盤として令和5年度に発足した、「子育て応援コンソーシアム」を深化させます。これまで多くの市内企業が「子育て応援挑戦企業宣言」を行い、参画の輪が広がっています。今後は、経営層向けのセミナー開催などを通じ、働きやすさと働き甲斐が両立する企業風土の醸成をバックアップし、取組企業の更なる拡大を進めます。企業同士が課題を共有し、コンソーシアムが自走する組織へと発展することにより、地域全体として、若い世代にも選ばれる職場環境が実現するよう、行政自身も取組を先導します。
こうした子育て現場を支援する施策の充実に加え、小学校給食費の無償化やこども医療費助成の拡充、地場食材を活かした食育などを通じて、子育て世代の経済的なゆとりと安心を創出してまいります。
次に、小中学校を主軸として、子どもたちの可能性を最大限に引き出せる教育環境を構築してまいります。全ての学校で子どもたち自らが学び合う授業を実践し、定着させるとともに、校務の徹底した合理化により、教職員が子どもたちと向き合う時間を確保し、すべての子どもが活躍できる「魅力ある授業づくり」を目指し学校改革を進めます。また、スクールイノベーション事業の推進により、学力向上や教育DXなど、各校が直面する課題に対し、現場が主体となって解決を図る特色ある学校づくりを支援します。
こうした取組を下支えする、学習環境の改善にも取り組みます。令和8年度は、市内小中学校の照明LED化を集中的に進め、適切な学習環境の確保と持続可能な学び舎を構築いたします。
また、学校・家庭・地域が連動した活動をさらに進化させます。部活動を地域へとつなぐ部活動地域展開、いわゆるミナカツ事業は、令和10年度の2学期に完全実施するため、令和8年度は体制整備を加速させるとともに一部先行実施にも取り組みます。子どもたちの自主性と時間を尊重し、スポーツ科学、教育科学の導入を旨として、従来の部活動のイメージにとらわれない南あわじスタイルの構築を目指します。また、市内全15校区でアフタースクール事業を展開します。地域住民がまちの先生として参画し、遊びを通じた多彩な体験を提供することで、子どもたちの豊かな感性と主体性、郷土愛を育みます。
学校に行けない、行きづらい等さまざまな課題を抱える子どもたちに対して、切れ目ない支援を行うとともに多様な学びの場を提供します。第三の居場所である「島のゆくりば」、適応教室から名称を改めた教育サポートルームを引き続き運営するとともに、安心して校内で過ごせる校内サポートルームを重点的に配置します。日々の中で子どもたちが見せてくれる変化の兆しを学ぶ楽しさ支援センターに持ち寄り、一人ひとりの歩みに寄り添い、社会とのつながりを保ちながら成長していけるよう尽力してまいります。
昨年改定した教育振興基本計画において、「学ぶ楽しさ日本一」はすべての市民のものであるべきことを確認しました。生涯を通じて楽しく学ぶ機会を持ち、心豊かな日々を送るためには、すべての人々の人権が尊重され、互いを認め合う社会が前提となります。今後も人権にかかる様々な施策を推進していくため、市民の人権意識の現状を把握する調査を実施いたします。また、近年、深刻な課題となっているインターネット上の差別的な書き込み等の抑止のため、インターネット・モニタリングや、関係機関と連携した相談体制を継続してまいります。こうした取組により、市民自らが自身の人権意識を確認する大切なきっかけを創出し、誰もが自分らしく暮らせる社会の実現に向け、歩みを進めてまいります。
生涯を通じた学びの場を提供するため、開館30周年を迎える市立図書館を拠点とした読書推進や、公民館活動等を通じた伝統文化の継承、多文化共生の歩みを進め、地域全体の豊かな教養を育んでまいります。
こうしたきめ細かな環境整備こそが、誰もが学び続け、学び合う地域の土壌となります。「学ぶ楽しさ日本一 ~生涯を通じて学びの『いぶき』がみなぎるまちづくり~」の実現に向け、本市の未来を担う子どもたちの成長へ、そして市民の皆さまの生涯を通じた豊かな学びへ、果敢に投資を続けてまいります。
第三の行動は、「地域の資源を活かした地元産業の活性化」です。生涯現役として地域を支える高齢世代の確かな経験と子どもたちの可能性が互いに支え合う多世代共生のまちの実現。そのためには、学びの場で育まれた志や地域の人々の繋がりを確かな活力に変えていく経済の基盤が不可欠です。地域の産業の強みを活かしながら、福祉や教育という「人」への投資を、地域全体の活性化へと繋げ、若者が誇りを持って働き、全世代がこの地で暮らし続けられる豊かな土壌を整えてまいります。
本市の基幹産業である農業、畜産業、そして水産業。社会情勢や自然環境が目まぐるしく変化するなかにあっても、生産の現場が安定して継続できるよう、基盤整備と課題解決に着実に取り組んでまいります。
近畿圏トップの生産額を誇る本市の農業・畜産業の大きな課題は後継者の確保とより効果的な農地の活用です。認定農業者や新規就農者など多様な担い手の確保・育成を進めるとともに、将来の農地利用の姿を明確化した地域計画の実現に向け、集落での機械共同利用による低コスト化などの取組を支援してまいります。あわせて、倭文長田、片田、養宜、賀集地区におけるほ場整備の実施や市内各所の防災重点農業用ため池改修、地籍調査を着実に推進し、次世代へ健全な農地を引き継ぐための環境を整えます。生産活動を脅かす有害鳥獣対策についても、令和5年度より開始した集落単位での計画的な対策の範囲を拡大し、地域一丸となった「守り」の体制をより強化してまいります。
畜産では、日本農業遺産に認定された本市独自の耕畜連携の生産循環システムを継承し、淡路ビーフの増産や淡路島牛乳をはじめとする酪農経営の安定化を強力に後押しします。飼料自給率の向上や優良牛の増産支援を継続します。
さらに、将来にわたる持続可能なまちづくりの一環として、分野横断的な資源循環型産業体系の構築を図ります。玉ねぎをはじめとする野菜残渣や、下水汚泥、食品残渣などのバイオマス資源を取り込み、地域の中でエネルギーや肥料等に有効活用する、環境・経済の両面で無理のない持続可能な資源循環システムの形成を、一歩ずつ進めてまいります。このため、令和7年度に改定される資源循環産業体系マスタープランに基づき、令和8年度は残渣等処理施設の整備に向けた基本計画を策定いたします。
水産業においても、漁協・大学・行政が一体となった漁場環境保全など、豊かな海の資源を次世代へ引き継ぐための取組を加速させます。沼島で実施してきた鉄鋼スラグを活用した藻場礁の試験設置は、令和8年度より場所を福良へと移し、海の再生に向けた検証を継続いたします。また、稚魚の放流事業や沼島における未利用魚等の活用モデル構築を継続し、水産資源の安定確保に努めます。
丸山地区において、漁協と民間企業、そして大学が協力し、全国を先導する「海業」の取組が始まっています。水産物の消費拡大に加え、観光業や飲食業など多岐にわたる取組を融合させることで、地域の賑わいと新たな所得・雇用を創出し、「食と観光の島」としての価値を一段と高めようとするものです。この挑戦を通じて、若者が誇りを持って働ける漁村モデルが構築されるよう、強力に支援していきます。あわせて、海に親しむ拠点である浮体式多目的公園(メガフロート)の魅力向上と長寿命化を図るため、老朽化した管理棟の屋根やトイレの改修工事を実施し、利用者の皆さまが安全・快適に利用できる環境を整えてまいります。
本市の伝統産業である淡路瓦と淡路手延そうめんは、創意工夫により新しい価値を生み出しています。淡路瓦はインテリアやアート作品にも使われるなど、伝統と革新が融合した産業に育ちつつあります。一方、淡路手延そうめんは都市部での積極的なPRや地元宿泊施設等での活用によって、高級贈答品として広く知られつつあります。今後も、販路の拡大や後継者の育成、技術の向上を支援し、地場産業の活性化に力を入れてまいります。あわせて、地域経済の基盤である中小企業や小規模事業者に対しては、商工会と連携し、起業支援や事業承継に注力するとともに、特色ある中小企業振興条例策定に取り組み、地域の持続的な発展を支えてまいります。
本市の強力な地域資源である「豊かな食」と「歴史・文化溢れる風光明媚な景観」を活かし、地域経済を潤す観光戦略を引き続き推進してまいります。
まず、インバウンドをはじめとする多様な観光客を呼び込む施策として、豊かな飲食産業の集積を持つ神戸市と、「世界一の食の島」を目指す淡路島が連携し、神戸・淡路地域の「食」を一層磨き上げ、世界に誇る食のエリアの形成による誘客促進を図ります。加えて、福良地区において、空き家を活用して飲食店等を誘致・集積させる「食の街区」形成の中核を担うまちづくり会社の設立が進んでいます。この地域資源を活かした新たなビジネスの芽を大切に育てるべく、イベントの実施などを通じ、地域住民や事業者の皆さまと歩調を合わせ、機運醸成に努めてまいります。
また、令和3年度より広域的な誘客の要として、徳島阿波おどり空港と本市を直結させる徳島空港線バスを支援しています。首都圏等から淡路島に来訪する方々にとって利便性の高い路線として徐々に認知度が高まるとともに、空港を利用した南あわじの魅力発信にも貢献しています。今後さらに広域連携を強化するため、令和8年度から徳島県にも本事業に参画いただけるよう調整を進めているところです。この路線をはじめ、高速バスの来訪者の流れを市内の賑わいへと繋げるため、ハード・ソフト両面での受け入れ態勢を強化いたします。大鳴門橋自転車道の完成を見据え、徳島県及び鳴門市との幅広い広域連携の検討に着手するとともに、大鳴門橋周辺地域では(仮称)淡路島南駐車場の整備や、高速バス停のサービスエリア近傍への移設とアクセス道の整備、複数の駐車場の状況を一覧できる満空表示板の設置などを進めます。これにより、公共交通、自家用車、そして自転車が円滑に結ばれる利便性の高い観光周遊基盤を構築してまいります。
このエリアの中核である「鳴門海峡の渦潮」、その世界遺産登録活動については、昨年の国際シンポジウムを経て、渦潮の魅力や海洋保全への関心がさらに高まりつつあります。今後も世界遺産と観光資源の両側面から、その価値を守り魅力を発信していく取組を推進していきます。
本市が誇る観光資源も丁寧に磨き上げを行います。淡路ファームパークイングランドの丘の暑さ対策や、灘黒岩水仙郷における落石対策・球根定着などに取り組むほか、令和9年度に開催されるワールドマスターズゲームズに向けて慶野松原の環境整備を行い、白砂青松と夕日を世界へ発信してまいります。こうした地道な積み重ねにより、本市を「何度でも訪れたくなる、選ばれる目的地」へと高めてまいります。
魅力ある地元産業に惹かれて流入する多様な人材が、自ら産業をおこし地域を活性化する。その好循環を次世代へと引き継いでいくためには、本市の魅力を効果的に発信し続け、若い力の活躍の場を創造することが不可欠です。
まず、本市のブランド価値を磨き、新たな人の流れを生み出すための情報発信を強化してまいります。全国のマスメディアやSNSを活用し、その効果分析も踏まえつつ、より質の高い魅力的な情報を戦略的・継続的に届けます。それによる、南あわじ市の認知度を高め、本市を訪れ、深く関わり続ける関係人口の創出・拡大を進めます。
外部人材ならではの視点を取り入れ、地域に新しい風を吹き込み地域外にも発信するのが地域おこし協力隊です。令和8年度は、新たに2地区において任用すべく調整を進めています。新たな取組として、実際の活動や生活を具体的にイメージできるインターン制度を創設し、地域との確実なマッチングを図ってまいります。
さらに、学びの場を通じた若い力の育成と、先端技術の活用による地域課題の解決を推進いたします。吉備国際大学においては、新たに「アクア・グリーン・フィールド学科」が開設され、就学定員が拡充されます。同学科では、一次産業の理解を基盤に、環境保全や食品製造などの専門知識を備えた地域リーダーを育成します。本市も、地元漁協や商工会、淡路三原高校などと連携した大学の研究活動を引き続き支援するとともに、入学奨励金制度を継続してまいります。
私は、現在、兵庫県における「地方部の高校を考える首長の会」の代表世話人として、多くの首長とともに県立高校の魅力向上方策を検討し、県教委等と協議を進めています。その先導役としての意識も持ちつつ、Sagasプロジェクト、子育て応援コンソーシアムへの巻き込みをはじめ、地元高校生と共に地域を学ぶ機会の拡大を推進します。
また、令和7年度には、東京大学先端科学技術研究センターと包括連携協定を締結しました。第一の行動で述べた超短時間雇用プロジェクトの推進、大鳴門橋周辺地域の交通渋滞対策など、共同研究が可能な分野を幅広く模索しながら、地域の課題解決を図る先進的な取組を進めてまいります。
こうした交流や学びと並行し、この地を自らの拠点と選ぶ若者が安心して活動できる環境づくりに努めます。このため、移住者に対するマイホーム取得補助や、多世代同居・近居支援など、充実した「住宅確保支援パッケージ」を継続するほか、奨学金返済支援などを通じ、本市での暮らしを多面的に支えてまいります。
第四の行動は、「安全・安心のまちづくり」です。
これまで述べましたシニアの活躍、子育ての喜び、そして地元産業の活性化や賑わいは、すべて、市民の皆さまの安全な暮らしという土台の上に成り立っています。
生涯現役を貫く高齢者の皆さまの歩みも、子どもたちの登下校の列も、そして観光に訪れる方々の笑顔も、強靭なインフラと地域の防災・防犯文化が連携した安全・安心の体制に守られていなければなりません。自然災害の激甚化や新種の犯罪の拡大という厳しい現実に直面している今、私たちは暮らしの質を支える足元の備えを、より強固にすべく施策を展開してまいります。
まず防災面では、進めてきた防災インフラの基盤の上に、装備やソフト面の施策の充実を進めます。地震や風水害などの緊急時に、住民の皆さまへ迅速かつ確実な情報伝達を行うため、防災行政無線システムの更新を進めてまいります。あわせて、地域防災の要である消防団の車両等を計画的に更新し、消防力の強化を図ります。
防災力の最大の要は、住民一人ひとりが防災意識と備えを高め、地域全体で連帯することにあります。防災訓練、防災イベント、自主防災組織の支援等を通じ、「自分の命は自分で守る」「地域の命は地域で守る」という地域防災文化の浸透を徹底してまいります。
防犯対策においては、自治会等の地域団体が行う防犯カメラの設置に対する経費補助を継続し、地域の見守り力を支えます。また、依然として深刻な状況が続いている特殊詐欺の被害を未然に防止するため、防犯機能付き電話機等の購入経費の補助を継続します。
防犯及び交通安全について、南あわじ警察署や防犯協会、交通安全協会等関連団体と協力しつつ、市民の皆さまに広く浸透する啓発活動を展開してまいります。
市民の皆さまが住み慣れた地域で安心して暮らし続ける基盤として、持続可能な地域交通の維持に努めてまいります。市内を細やかに結ぶコミュニティバスは、通院や買い物といった日々の生活を支え、社会との繋がりを保つために欠かせない役割を担っています。経験とデータを蓄積し、利用実態に即した運行ルートの精査や効率的な運用に努め、将来にわたって市民の皆さまの暮らしの安心を支える公共交通ネットワークを堅持してまいります。
あわせて、離島である沼島地域における、持続可能な貨物等の海上輸送体制の構築に向け、住民の皆さまと共に検討を進めてまいります。
日々の暮らしの土台となる道路や河川、市営住宅などのインフラや公共施設においては、中長期的な視点に立った戦略的な維持管理を進めてまいります。市営住宅においては、建物の老朽化状況や住生活基本計画に基づく需給状況を勘案し、長寿命化に資する大規模改修を実施してまいります。道路整備においては、舗装やガードレール等の計画的な修繕など適切な維持管理による安全な通行の確保を最優先に実施するとともに、通学路におけるグリーンベルト等、児童の安全な通行確保を重点的に進めます。また、橋梁の点検・補修を着実に実施するとともに、下水道事業では計画区域における未普及解消の早期完工と、供用中施設の統廃合を含めた持続可能な経営体制を構築してまいります。
南あわじ市には、過去から蓄積してきた膨大なインフラが存在します。その維持管理を、限られた財源と人員制約の中で迅速に進めていくためには、地域の事情をよく知る皆さまとの連携が欠かせません。地域の力をお借りして市道や河川の小規模な維持修繕を実施し、現場の課題に即応するインフラメンテナンス事業を引き続き推進します。また、自治会等の皆さまによる一部市道の除草や水路清掃に対する経費の補助等を継続してまいります。あわせて、将来にわたり豊かな環境を維持するため、ごみの3R(リデュース(減量化)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用))を一段と加速させます。淡路島三市の新可燃ごみ処理施設の整備を着実に進めつつ、製品プラスチックの分別回収と資源化の徹底など、令和11年度の焼却処理量を令和元年度比で15%削減するという目標に向け、市民の皆さまと手を携え、持続可能な循環型社会を築き上げてまいります。
最後に、五番目の行動は、「対話と行動の行政」です。
これまで述べてまいりました、生涯現役で輝くシニアの「活力」、子どもたちの未来を拓く「学び」、地域を潤す産業の「賑わい」、そして命を守る「安全」。これらすべての施策は、独立して存在するものではありません。市民一人ひとりの想いが重なり合い結びつくことで、初めて南あわじ市の確かな未来が形づくられます。
令和4年に策定した本市の総合計画後期基本計画では、目標年度において各分野で市民の皆さまがいきいきと活動する姿を描かせていただきました。策定に着手した第3次総合計画においても、市民の皆さまとの協働のもと、市民一人ひとりが豊かに暮らし活躍する未来を描くものになると思います。まちづくりは市民が主役です。行政は、市民の皆さまと緊密に「対話」し、皆さまが思い描く地域の将来像を共有し、その実現に向けて皆さまとともに「行動」してまいります。本方針の締めくくりとして、私どもの施策すべての原動力となる第五の行動、「対話と行動の行政」によるまちづくりについて申し上げます。
対話と行動の行政は日々の各種業務の執行における基本として実践に努めています。加えて、その象徴的な取組として、令和元年度から地域と行政の対話を始め、令和4年度には4エリアでフォローアップ会合を開催し、加えて分野別団体等との対話を実施しています。都度それぞれの地域や分野が抱えている課題が明らかになり、対応を重ねてきています。令和7年度からは、三ラウンド目の地域との対話を開始しており、引き続き、地域の課題や将来について市民の皆さまと語り合いながら、共通の認識を持ち、共に取り組むまちづくりを進めてまいります。
これまでの対話の中で、多く出された課題が、自治会等地域団体における役員の高齢化や後継者不足の問題でした。これらの問題に正面から対応するため、地域の担い手づくり補助金等若者層が地域の次世代の担い手となる仕組みづくりを進めてきました。令和8年度は、地域づくり協議会に、若者が主体となって活躍する若者部会等の組織を設置して活動する地域に対しては、地域づくり事業交付金に担い手確保加算を措置し、これから取り組む地域で活動する若者グループに対しては、地域の担い手づくり事業により支援することといたします。
また、単位自治会の現状と課題を把握するため、改めて実態調査を実施いたします。自治会への加入率低下や役員の負担が重いことなど、現場の切実な声を施策に反映し、時代に即した自治会運営の支援策を検討してまいります。
各地区が課題解決に立ち上がる際には、引き続き、地域づくりチャレンジ事業によりプランづくりの段階から行政が伴走し、自主的な取組に対し補助金による財政的支援を行います。
市民協働を円滑に進める基盤として、市政情報や地域の話題、イベント情報などを市民に確実に伝え、市政への関心・理解度を一層高めます。「広報南あわじ」とケーブルテレビにおけるより魅力的な情報発信や、ホームページを基軸に市公式LINE、SNSを組み合わせる広報など、あらゆる媒体を効果的・複合的に活用し、市の施策や魅力をお届けします。
対話と行動の行政の質を上げていくためには、市役所自身が変化を恐れず進化し続けなければなりません。私たちが目指す「最強の市役所」とは、地域・市民との積極的な対話を通じ、皆さまの想いや課題を迅速に把握し、関連分野の職員が協力して、課題解決やビジョン実現に向けた対応策を組み上げ、市民と将来像を共有してその実現に向け行動する組織です。
現在、行政を取り巻く環境は、業務の多様化・複雑化、厳しい予算・人員制約の一方で、情報技術の急速な進展など、大きな転換期にあります。制約を克服して最強の市役所を現実のものとするには、一人ひとりの職員が大きく成長する必要があります。その基本はまさに日々の業務への挑戦と反省の積み重ねにあります。
その取組を加速するため、生成AIをはじめとする情報技術も積極的に活用しつつ、業務の徹底した効率化と高度化を進めます。そこで生まれた時間と知識を市民の皆さまとの対話や、新たな価値創造のために活用してまいります。
加えて、本年4月より、組織を再編いたします。五つの行動に基づく政策の流れに整合し、市民にも分かりやすい体制としつつ、横連携の組織文化を高めて複雑な課題解決にも機動的かつ効率的に対処してまいります。
この改革を機に、職員一人ひとりが現場の課題を自らの事として捉え、自律的に考え行動する「自走する組織」を、職員と一丸となって築いてまいります。
令和8年度予算の提案にあたり、市政運営、主要事業についての方針をお示しいたしました。
現在、物価高騰による市民生活や産業への影響、加速する少子高齢化に伴う担い手不足、さらには激甚化する自然災害への備えなど、本市が直面する現実は極めて厳しく、あらゆる課題に対して迅速に、かつ正面から対応が求められる状況にあります。
一方で、南あわじ市の高い潜在力を開花させ、地域の大きな成長に繋げる挑戦の機会が目前にあることも事実です。
こうした背景を踏まえ、限られた財源を最大限に活用し、地域資源の可能性を伸長し、子育ての喜びを分かち合い、学ぶ楽しさを次代へ繋ぐための、「健幸と食、そして学びを育む未来創生予算」として編成した結果、令和8年度歳入歳出予算は、一般会計「329億6,000万円」(前年比-1,000万円)となり、当初予算では昨年度と横ばいとなりました。
また、特別会計「123億6,048万円」(前年比+454万円)、企業会計「68億2,919万円」(前年比+5億1,411万円)で、合計「521億4,967万円」(前年比+5億865万円)となっています。
私たちが生きる今という時代は、予測困難な現象が次々と押し寄せる、大きな変化の中にあります。しかし、この南あわじ市は、これまで先人達が懸命に育て、守ってきた地域の資源、みずから地域を高めようとする住民の熱意、未来を担う子供たちの笑顔に限りない愛情を注ぐ文化など、社会の枠組みの変化を乗りこえる十分な力を持っています。
誰もが役割を持ち、支え合える「健やかな幸せ」が続くまちづくり。五感を満たす「食と絶景と文化」の島としての進化。そして、郷土を愛し、次世代が伸びやかに育つ環境の充実。
「南あわじ市に住んでよかった」。誰もがそう心から実感できる、強靭でしなやかな郷土づくりを目指して、市民の皆さま、議員の皆さま、そして職員と共に、未来への想いを分かち合い、手を取り合って一歩ずつ進んでいけることに、私は限りない喜びを感じています。
議員各位におかれましては、何卒ご理解賜り、慎重審議のうえ、適切なるご決定をいただきますようお願い申し上げ、私の施政に臨む方針といたします。
令和8年2月24日
南あわじ市長 守 本 憲 弘