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令和4年度施政方針

印刷用ページを表示する更新日:2022年2月21日更新 <外部リンク>

令和4年度施政方針 [PDFファイル/645KB]

目次

【時代認識と市政理念】
【五つの行動】

  1. 超高齢化社会の克服
    ・機運高まる地方への移住・定住、取り込むための挑戦
  2. 子育て環境の向上と教育の充実
  3. 地域の資源を活かした地元産業の活性化
    ・第一次産業と観光の融合
    ・第一次産業就業者のスキルアップ支援
  4. 安全・安心のまちづくり
    ・道路・河川の環境改善と通学路の安全対策
  5. 「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり
    ・住民・各種団体との対話の強化
    ・最強の市役所を目指す人材育成

【令和4年度 歳入歳出予算】
【結びに】

時代認識と市政理念

 第108回南あわじ市議会定例会の開会にあたり、議員各位のご健勝をお喜び申し上げ、日頃のご精励ご活躍に対し、敬意と感謝の意を表します。

 人類と新型コロナウイルスとの戦いは、既に2年を経過しました。我々の対応も、マスク、手洗いといった基本的な衛生対策から、三密防止のための行動制限、ワクチンの接種と進化してきました。一方、ウイルスは、そうした対応を巧妙に回避すべく変異を重ね、波のように引いては押してくるという戦いを続けています。

 この間、医療崩壊を避けるため、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言が数度にわたり発出され、商業施設の休業・時短営業、各種の社会活動やイベントの中止など国民生活に甚大な影響が及びました。一方、不自由な生活に対する国民の理解と忍耐、そして、感染リスクと向き合いながら、日夜、最善を尽くす医療従事者の献身的なご努力、他国に類を見ない速度で進んだワクチン接種など、官民一体となった取り組みにより、欧米先進国に比較すれば、感染者数、死者ともに相当に抑えられた状態を維持しています。

 しかしながら、年明けから広がった感染力の強いオミクロン株の波により淡路島にも多くの感染者が発生しています。現在もまん延防止等重点措置が継続され、予断を許さない状況にあります。市民の皆さまにおかれても、引き続き、感染拡大防止へのご協力よろしくお願い申し上げます。

 ここ一年の私どものコロナウイルスとの戦いを簡単に振り返ってみます。昨年1月、感染の再拡大により兵庫県に2度目となる緊急事態宣言が発出されました。長引く外出自粛や経済活動への制限の影響は、本市においても顕著でした。昨年5月、議会において各種団体からの意見聴取が行われましたが、そこでも、市民の日常生活の制約や感染リスクによる健康不安の増大、観光客の減少による観光業・小売業等への打撃、主力産業である農畜水産物の消費及び価格の低迷、それらが労働者・生活者にもたらす厳しい影響など、切実なる危機感と機動的な対策への期待が表明されました。そうした声も受け、本市では、「必要なところに必要な措置を」の考え方の下、地域の実情やニーズを真摯に取り入れた第4次となる緊急総合対策事業を実施いたしました。

 最優先で取り組んだのは、新型コロナウイルスワクチン接種の推進でした。市医師会、歯科医師会や看護師の方々の絶大なるご尽力と、市民の皆さまの秩序だった接種へのご理解ご協力により、県下トップクラスのスピードで接種を進めることができました。いち早く市民の皆さまに安心をお届けできたことを大変嬉しく思っています。追加接種につきましても、医療関係者の方々のご支援をいただきながら、スピード感を持って進めているところです。

 一昨年に続き、落ち込んだ地域経済の下支えとコロナの時代に対処する社会経済基盤強化にも取り組みました。プレミアム付き商品券や農畜水産物等生産者支援のためのデジタル地域振興券、キャッシュレスポイント還元キャンペーン事業を感染状況をにらみながら実施しました。システムの使い勝手など、反省点もありましたが、結果としては、消費額だけでも8億円を超え、一次産品を含む市内のサプライチェーン全体への波及効果を生むとともに、飲食店等の感染予防対策の普及徹底にも大きな効果があったものと考えています。

 また、生活が苦しくなっているご家庭の安心確保のため、フードドライブ事業の拡充のほか、毎回、約100食のご利用をいただいた、みんなの食堂事業を実施しました。一方、ポストコロナを見据え、地域のデジタル活用を推進すべく、放課後児童クラブのICT環境整備、消費喚起事業における電子決済の活用、高齢者向けスマホ教室の開催、市役所におけるペーパレス化やテレワークの推進などにも取り組みました。

 こうした様々な事業は、関係団体の皆さまの強力なご尽力やサポート、また、市民の皆さまの深いご理解と積極的なご参加により、実施が可能となり、また効果を上げることができたものと考えています。この実践の中で、各種事業の準備段階から、多くの方々と対話し、協働を得て進めることの重要性を改めて痛感したところです。

 総じて、官民一体、まさにオール南あわじの体制で、コロナ対策に取り組むことができたことに、心から感謝申し上げます。今後とも皆さまとの対話を継続し、市民生活や産業経済の実態に応じ、切れ目なく必要な対策を講じてまいります。

 新型コロナウイルス感染症との戦いは、未だその終焉の時期が明確ではありません。しかし、ワクチン接種の進展や経口薬の開発など、暗いトンネルの先に光も見えてきています。人類が新型コロナウイルスを克服するその日まで、私たちも国際社会の一員として、感染防止対策をたゆまず継続することが使命であると思います。

 社会が大きな危機や変動を経験し、乗り切ったとき、それまで水面下に隠れていた中長期的な底流が表面に出て、社会の景色が変わってくることがよくあります。この新型コロナウイルスによる危機を克服した時にも、人々の価値観の変化、都市集中を続けた人口動態の反転、それらに伴う大きな産業構造の変化など、新しい社会像や価値観が広がり、ポストコロナという新たな時代の幕が開けることになるでしょう。

 私たちは、その動きを敏感に捉え、世界の大きな流れも見据えつつ、先人が知恵と努力で築いてきたこの社会の基盤を進化させ、次の時代により良い形で引き継ぐという役割を担っています。

 世界の動きに目を転じると、現在、第二次世界大戦後の世界の経済、社会、安全保障面の秩序が大きな変革・転換期を迎えています。

 経済面では、世界全体の公平な貿易促進を担ってきたWTOに代わり、貿易や投資面の連携を地政学的な視点と連動させる地域的な協定が推進力を持ってきました。

 本年1月1日から東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定が発効しました。これは、日本が中国、韓国と結ぶ初めての経済連携協定でもあります。RCEP協定により、世界のGDP、貿易総額及び人口の約3割、日本の貿易総額の約5割を占める新たな広域経済圏が誕生しました。コロナ禍の影響による国内産業保護的な動きもみられる中、協定の署名は、より一層の経済のグローバル化と国際協調の進展に期待を抱かせるものです。

 一方、北米を巻き込んで12か国で交渉が進められた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)については、トランプ前アメリカ大統領が離脱を宣言し、11か国での協定となっている中で、中国や韓国が参加に関心を示しており、今後の通商環境の変容にも注意する必要があります。

 安全保障に目を移すと、緊張と緩和を繰り返す朝鮮半島情勢、経済、人権さらには東太平洋での安全保障など様々な面で対立する米中関係、ウクライナを巡り緊迫するロシアと欧米との関係など予断を許しません。今後の国際政治の動向により、アメリカと同盟国である日本が難しい選択を迫られる場面も想定されます。

 もう一つ、重要な国際社会のテーマが、SDGsです。ここには、地球環境問題への対応や、人権、福祉、教育など広範な課題が盛り込まれています。SDGsに掲げられた課題への対応は、人類全体として持続的に発展するために不可欠であるとともに、地球で生きる私たち一人ひとりが日々取り組むべきことでもあります。基礎自治体としても、従来にも増して、ユニバーサルな包摂社会の実現や環境問題への取り組みを積極的に進めていく必要があります。

 国内に目を転じますと、我が国の最大の課題とも言える、少子高齢化・人口減少は未だ加速しています。そのため、国全体として市場が縮小する一方で、労働力不足は深刻度を増し、都市部への人口集中と相まって、地方での経済や社会の担い手不足が顕著になっています。将来への悲観による企業の投資抑制が長期的な経済の低迷と低い労働生産性にもつながっています。世界の人口が約79億人を数え、近い将来100億人にも届こうとしている中、日本の人口は約30年後には、1億人を割り込むと推計されています。2020年の国勢調査でも、日本の人口は、5年前の前回調査から約94万8千人減の1億2,614万6,099人となりました。国連推計によると、世界人口上位20カ国のうち日本の人口だけがこの間減少しています。このままでは、GDPにおいて世界トップ3から転落し、国際社会での日本の存在感がどんどん薄くなっていく危険性もあります。

 こうした中、岸田総理は、未来を切り拓く経済社会のビジョンとして、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした「新しい資本主義」の実現を打ち出しました。とりわけ、「コロナ後の新しい社会の開拓」では、「これまで進んで来なかったデジタル化が急速に進展し、社会が変わる。これらの変革は、地方から起こる」と述べられています。

 地方の時代と言われはじめてから、約20年経過しました。私は、今ほど、現実に地方、また、地方自治体の役割が高まったことはないと思います。かつて、欧米先進国に追いつけ追い越せの時代には、他国の経験を国が取り入れ、地方に浸透させるトップダウンの政策展開が有効でした。しかし、世界に前例のない少子高齢化が進み、我が国が巨大な課題先進国となった現在、国民生活や地域産業に直接対峙する地方自治体が、現場の実態に照らして課題解決に取り組み、その中での好事例を国が展開していくボトムアップの政策形成に大きな期待がかかっています。

 今回のコロナ禍の到来は、その流れをさらに加速させました。感染防止や経済回復の方策において、地域の実態を踏まえた規制や呼びかけ、さらには具体的施策の展開が自治体に求められました。また、都市集中の問題が国民に共有され、テレワークの普及とも相まって、地方居住への意識が高まり、自治体が地域の活性化に向けて取り組める方策が拡大しています。

 ここ何年か、私は、成人式のたびに、唱歌ふるさとの3番の歌詞を借りて、「志を果たして」から帰るのでなく、「志を果たしにいつの日にか帰らん」まさに夢を実現するために帰ってきて欲しいと新成人に呼びかけています。今地方に与えられたチャンスを生かし、「志を果たしにふるさと南あわじに帰る」ことが、現実的な選択肢として若者たちに受け止めてもらえるよう、一歩先を見据えて手を打ち、飛躍を期してまいります。

 私は南あわじが大好きです。ここには、魅力あふれる一人ひとりの住民がおり、人と人との豊かなつながりがあります。この「ふるさと」の良さが子どもたち、さらにその次の世代に引き継がれることを願っています。私が思い描く「ふるさと南あわじ」は、市民、行政、企業、関係団体が連携し、男女の区別なく共にやりがいのある仕事と育児・教育を含めた家庭生活を両立することができるまち、「子ども時代を過ごした『ふるさと』で、自分たちの子どもも育てたい」と思えるようなまち、市民皆が生きがいを持ちながら、若者の挑戦や育児を応援する「子育ての喜びが見えるまち」です。

 私が市長就任以来、掲げてまいりました本市の政策の柱「五つの行動」は、相互に補完し合いながら、この「子育ての喜びが見えるまち」の実現を支えるものです。これまでの実績を踏まえ、「五つの行動」をさらに発展・深化させていくため、ここに、市政運営及び主要事業についての方針を表明し、議員各位、市民の皆さまのご理解とご賛同を賜りつつ、ともに希望に満ち溢れ、次世代が自信をもって「ふるさと」と言える、南あわじ市を創っていきたいと思います。

 

五つの行動

1.超高齢化社会の克服

 第一の行動は、『超高齢化社会の克服』です。

 「2025年問題」。団塊世代が後期高齢者(75歳)の年齢に達し、医療や介護などの社会保障費が急増すると懸念されています。老若男女、障害や難病のある方々も、全ての人々が役割を持ち、個性を生かすことができる社会を構築し、少子高齢化を克服するため、今、国を挙げて、全世代型社会保障改革に取り組んでいます。その実現に向けては、医療、介護をはじめとする全国的な社会保障制度の再整備のみならず、地域においても、住民主体の健康増進・予防活動の実践、柔軟な働き方の導入、交通・住居等社会インフラの整備促進など生活や産業の現場における仕組み作りが必要です。本市においても、全ての市民が、人生のステージに応じ、社会と関わりを持ち、生きがいを感じて活躍するとともに、心や身体に支障があっても安心した毎日を送ることができる環境を整備すべく、多面的に施策を展開いたします。

シニアの方々の多種多様な活躍の場の創出

 「人生二毛作」。人生100年時代を迎え、元気な高齢者の方々にもっとご活躍いただきたい。本市では、そんな思いのもと、平成29年度より、全国に先駆けて高齢者等元気活躍推進事業に取り組んでいます。「生活に張りが出て、心身も充実し、何よりも地域に貢献できることが嬉しい」。シニアの方々が気軽に社会貢献活動ができる場を創出する「おもいやりポイント制度」では、参加者からこのような感想もいただいています。また、事業所からは、「人生の経験値が高く活発なシニアの皆さまに来ていただくことでサービスの質の向上につながっている」との声もいただいています。これに加え、令和元年に開始した「働くシニア応援プロジェクト」では、地域の産業が人材を確保しながら成長を続けられるよう、シニア人材を生かす「柔軟な新しい働き方の創出」を目指した取り組みを進めています。これまでプロジェクト参加企業20社のうちの16社に48名の方が新規就労し、関心も高まり、シニアの方々が働きやすい雇用環境の整備に手ごたえを感じています。高齢者等元気活躍推進事業を核に多くの高齢者の方が生き生きと活躍し、社会を支える側に立ち続けていただける環境づくりに引き続き取り組んでまいります。

市民の健康づくり

 「セルフメディケーション」という言葉をよく聞くようになりました。WHOの定義では「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」とされています。多くの方が社会の第一線で活動し続けるためには、住民全体の健康意識のさらなる向上と日々の実践が欠かせません。全世代において、町ぐるみ健診の受診率の向上に努め、健康意識の向上、疾病の早期発見、早期治療を促進するとともに幅広い見地から健康づくりと生活改善の啓発や活動を推進します。

地域で暮らし、地域で支える介護

 無縁社会という言葉とともに、高齢者の孤立の深刻化が指摘されています。社会との接点を失い、活動量が低下することにより、心身の衰えが加速することが懸念され、さらには情報の交流も途絶えて、社会的支援の手が届かないまま放置されるというようなリスクが現実化しています。本市においても、一人暮らしの高齢者は増加傾向にあります。また、例え、子どもや孫が同居していたとしても安心はできません。子ども夫婦は共働き、孫は学校や学習塾と多忙で、年老いた親が、ひとり自宅でテレビを見て過すうち、筋力が低下し、ちょっとした転倒で骨折に至り日常生活が困難になる事例なども皆無ではありません。

 高齢者の孤立によるリスクを低下させるためには、市民が主体となって、疾病やフレイル予防、生活機能維持への関心を高め、共に実践しつづける活動を強化し、その活動の場に、幅広く高齢者を取り込んでいくような地域社会の仕組みづくりが求められています。

 こうした市民による活動や場づくりを後押しするとともに、家事支援などを提供する生活支援型サービスの拠点を増やし、高齢者がサポートも受けながら、地域とのつながりを維持できる環境を整えてまいります。

総合的福祉研究プロジェクト

 これまでの各種の福祉事業や、コロナ対策におけるフードドライブ、みんなの食堂や低所得者に対する商品券配布事業を通じて見えてきたことがあります。それは、市内に、未だ支援の手が差し伸べられていない、あるいは、各種の相談事業でも把握できていない、生活の苦しさや生きづらさを感じている人や世帯が相当数あるという実態です。

 その背景には、そもそも市役所や関係団体の情報に接する機会がない、縦割りの支援策に適合しない、家族関係の問題として外に出したくない、相談しても解決できないと思い込んでいるなど、いろいろな要因が関わっています。こうした生きづらさを感じている人や世帯を幅広く捉え、市役所の各種関係部局と関係機関が連携し、その実態把握に努めるとともに、深刻化する前に発見し相談に導く対話手法や、事態の解決に導く支援手段のあり方などについて幅広く検証し、具体化につなげていく取り組みに着手します。

人に寄り添う公共交通

 自動車による移動が中心となった淡路島においても、高齢者をはじめ、運転免許を持たない方々の移動手段として公共交通の確保・整備の必要性が年々高まっています。

 特に近年は、人口減少による集落の点在化に加え、高齢化がさらに進み、自宅からバス停までの移動が大変という、いわゆるラストワンマイルの問題などが増加しています。路線バスやコミュニティバスといった従来型の公共交通だけでは地域内の細かな移動ニーズへの対応が困難であるため、モデル地区を選定し、地域・事業者・行政が一体となり「地域に合った移動の仕組みと手段」を検討します。

 一方、らん・らんバスについても改善を続けます。乗り継ぎ拠点、病院、大型商業施設にあるバス停に待合用ベンチを設置するなどの環境改善や、住民のみならず、観光等で訪れる方々の利便性を踏まえたルート設定などを進めてまいります。

 また、淡路島地域公共交通網形成計画に基づき、バス事業者及び関係市と協調し、市域を跨ぐバス路線のルート再編、増便を進めるとともに市の支援により運賃の大胆な低減化を実施し、公共交通の利便性の向上と利用拡大を図ります。

機運高まる地方への移住・定住、取り込むための挑戦

 コロナ禍を契機に、地方での生活が見直されています。これは一時的なものではなく、従来から静かに進んで来た着実な底流が、都市の密集への懸念、テレワークの普及、二拠点居住の可能性の拡大などにより、顕在化してきたものと考えています。本市においては、従来から積極的に移住・定住を促す取り組みを進めておりますが、この機運を捉え、来ていただきたい人材に的を絞った対策や、空き家等活用可能な資源のより積極的な発掘・有効利用など、一歩踏み込んだ戦略的な移住・定住を推進してまいります。

 戦略的視点の一つは、市内事業者へのアンケート結果や求人データでも不足が明らかとなっている介護・看護などの福祉人材の確保に向けた制度の創設です。これまでの保育人材確保対策に加え、介護・看護人材への就労一時金の給付や家賃支援により、人材確保と移住を促進してまいります。

 二つ目は、本市の大きな強みである農畜水産業への新規就業促進です。これまで取り組んできた地域主導型就農・定着応援プランは、都市から移住してきた若者が親方農業者の下での研修を経て独立自営就農するなどの事例も生んでおります。関係機関とも協力しつつ、吸引力のある新規就農支援策を検討してまいります。水産業においても、水産業就業体験事業による新たな就業者育成を図ってまいります。

 三つ目は、働く若者支援です。移住者による起業や空き家・空き店舗等を活用した起業への支援を拡充するとともに、学校卒業後、UターンやIターンをして本市で働く若者に対し、大学等の奨学金や教育貸付金の返済を支援する制度を創設します。

 移住定住の促進と住まいの問題は密接に関わります。移住を希望しているが、住みたい住宅が見つからないという声があります。一方、本市には、今すぐにでも利活用可能なもの、多少手を入れれば十分使えるものを含めて多くの空き家等が存在しています。しかし、利活用には制約が多いという所有者の意識もあることから、これまで実施してきた改修等への支援に加え、本市の空き家バンクへの登録に対し、奨励金等を給付し物件の掘り起こしを促進してまいります。

 また、これまでの移住者のマイホーム取得補助に加え、移住支援補助金を拡充するとともに、着実な定住拡大のため、家族の絆の再生や地域の共助を目指した多世代同居・近居支援事業、通勤通学交通費助成なども継続してまいります。

 働き方の変容に対応した仕事の場の拡充にも取り組みます。淡路ふれあい公園内に開設するコワーキングスペースは、柔軟な働き方の実現を応援する場として活用を進めます。加えて、民間のコワーキングスペース施設運営者、関係団体とも協力し、地方創生テレワーク促進コンソーシアムを組織し、官民が一体となって、都市部の企業等の呼び込みを図るなど、関係人口の創出を図ってまいります。

2.子育て環境の向上と教育の充実

 第二の行動は、『子育て環境の向上と教育の充実』です。

 「南あわじ市の将来を良くするためには、「教育」を魅力的にし、ここで子どもを育てたいと思える環境にすることが大切。」と、以前、あるインタビューでお話したところ、多くの共感をいただきました。本市が目指す「子育ての喜びが見えるまちづくり」の実現に向け、三つの柱で進めてまいります。

学校教育の充実と高度化

 第一の柱は、「学ぶ楽しさ日本一」を目標に、全ての子どもたちが主体的な学びを深める教育の推進です。

 人工知能や仮想現実が広がる時代、逆に、実物・現実の意味が増しています。人と人のつながりを感じたり、本物を見て、触れて、使って、考えることで、コンピューターにはできない、感動を呼ぶ創造性が身に付きます。また、ボーダーレスの流れの中、世界中の人々と付き合う上で自分の中に文化的支柱を持つことがとても大切です。世界に誇る伝統芸能である淡路人形浄瑠璃を使ったコアカリキュラムを実践し、「人と関わる力」、「課題解決に向けてやりとげる力」、「自分を見つめる力」、「未来をつくる力」といった見えない学力を伸ばすとともに、文化的支柱を育てます。また、先生同士の授業研究による継続的な検証・改善や動画による啓発・広報コンテンツの自主作成などコアカリキュラムを教員の資質向上にも活用しつつ、自立的運用を目指します。

 スクールチャレンジ事業も継続します。学力向上、特別支援教育、いじめ・不登校問題など課題に対応した教職員の資質向上研修や体制作りを支援し、各学校が特色をもって、「学ぶ楽しさ」を追求する授業や行事、取り組みを展開する環境づくりを進めます。

 遊びを通じた多種多様な体験活動を通じ、「なりたい自分を見つける」ことができる居場所を目指すアフタースクール。広田、倭文、湊、八木、阿万小学校区でのモデル実施を経て、来年度から神代、福良小学校区へも拡充します。地域の人たちが講師となり、市内企業や関係機関とも連携を図りながら、学ぶ楽しさを通じて、子どもたちの自主性、積極性、コミュニケーション力等を育みます。

 引き続き「夢プロジェクト」を展開します。著名なスポーツ選手や文化人の語る言葉は、小中学生の心にスポーツや文化の魅力、楽しさ、そして努力する意欲を芽生えさせます。子どもたちに、大きな夢・目標を持ち、その実現に向かって活動し、自ら未来を開いていく、きっかけを与え続けます。

 学校の環境整備も着実に進めます。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、工事が延期されていた、賀集小学校、志知小学校、榎列小学校、三原中学校の各校舎の大規模改修工事を実施します。

 統合により閉校となった旧三原志知小学校を活用し、令和5年4月の開設を目指し、教育に関する専門的な調査研究や教育関係職員の研修、防災教育の拠点となる「学ぶ楽しさ支援センター」の整備に着手します。また、同センターにおいて、市役所関係課、関係団体との協力のもと、学校への適応に難しさを抱える子ども達のケア及び卒業後のフォローを行い、誰もが幼児期から高校・就労まで学ぶ楽しさを実感できる環境をつくります。

地域の人々に見守られて過ごす場の拡充

 第二の柱は、子どもたちが地域の方々に見守られて過ごす場の拡充です。毎年、子ども議会では、子どもの遊び場の充実の要望をいただきます。それを受けて、これまで、イングランドの丘の無料開放やショッピングセンターシーパでのキッズランドの開設、小学校の校庭の開放、公民館におけるキッズスペースの設置などを進めてまいりました。令和4年度は、倭文神道地区に複合遊具を備えた公園を開設するとともに福良地区の旧南淡庁舎跡地と市立図書館敷地内に公園を設けます。また、一般開放を実施している小学校の遊具の修繕や総合型遊具の設置などを計画的に実施し、家族のふれあいの場、地域住民の交流の場としての環境改善を図ります。

子育て世代の総合的な支援体制

 第三の柱は、子育て世代への支援体制の充実です。

 「子育ての喜びが見えるまち」の実現には、家族にとって安心して子どもを生み育てることができる環境、また、子ども自身が楽しく健やかに育っていける環境を形成することが不可欠です。

 女性の社会進出が目覚ましい昨今、出産・育児は、社会全体で支え合い取り組まなければなりません。子育て家庭が仕事と育児・教育を含めた家庭生活を両立できる環境づくりのために、働き方の見直し、家事育児の積極的分担、地域の子育て支援など、企業、住民、行政、関係団体の連携が不可欠です。コロナ禍で着手が遅れていますが、企業や団体の参加を得ながら、子育てに関する課題の共有、先進事例の調査や情報交換を行うとともに今後の取り組みを提案し協議する場となるコンソーシアムを設立し、子育てに優しい職場環境づくりなどを地域ぐるみで推進する機運を高めてまいります。また、令和4年度で満了する第2次男女共同参画計画については、実施事業を検証し、さらに進化させた第3次計画を策定します。

 幼少期は、生涯にわたる人格や能力の形成を左右する極めて重要な時期であることが明らかになっています。保育所等において、子ども達が遊びを通じ、主体的な学習意欲の基礎となる好奇心、探求心や人間関係の力を養い、それが自然に就学準備にもつながっていく、「学びの芽生え事業」をスタートさせます。加えて、保育士養成課程を持つ大学とも連携し、若い世代の意見を生かした幼児教育の充実を目指します。また、保育施設と地域とのかかわりを深め、子どもの成長を地域ぐるみで見守る関係づくりを進めます。

 安心して子どもを預けられる保育環境を堅持するため、年々難しくなっている保育士の確保に向けて、大学との連携や就労一時金、家賃補助などの支援を継続し、移住者も含めた新規就労の促進や離職防止を図ります。

 子育ての出発点である安心して出産できる環境づくりに引き続き取り組みます。全国的に不足する産婦人科医師の確保は、淡路島全体の共通課題として、県や関係機関へ強く働きかけるとともに、不妊治療費や妊婦健康診査費、島外医療機関での健診・出産に係る交通費の助成を行います。

 また、小児救急への備えとして、休日・祝日及び夜間においても、電話相談や受診が可能な体制を継続して確保します。

地域文化・スポーツの振興

 松帆銅鐸の発見から7年が経過し、まもなく調査が完了します。それを受け、本年7月より、初めて銅鐸7点、舌7本の全てが揃った特別展を玉青館で開催します。併せて、松帆銅鐸をはじめ本市の宝物である文化財の図録やパンフレットを発行し、子ども向けのワークショップなどを通じ、幼少期にふるさとの歴史・伝統などの文化的資産に触れ、郷土愛を醸成する機会を増やしてまいります。

 本市の秋の風物詩として定着してまいりました近畿高等学校駅伝競走大会については、関係機関と連携を図りながら、選手も周囲も安全に競技が実施できるように準備を進めます。

3.地域の資源を活かした地元産業の活性化

 第三の行動は『地域の資源を活かした地元産業の活性化』です。

第一次産業と観光の融合

 古来より、朝廷に食材を献上する「御食国」として知られる淡路島。食料自給率は100%を優に超え、それを支える第一次産業は、言うまでもなく、本市の基幹産業です。一方、世界遺産登録を目指す鳴門海峡の渦潮、日本水仙三大群生地の一つ灘黒岩水仙郷、日本の夕陽百選の慶野松原、質の高い温泉など、自然と調和した観光資源を多数有する本市にとって「観光」は、最も伸びしろの大きい産業といえましょう。

 この二つの主力産業の連携を強化し、融合を図ることで、より地域の個性が鮮明となり、相互に付加価値を向上させることができます。スペインのサン・セバスチャンは、そこで産出する新鮮な食材を、地域ぐるみで高付加価値の料理に昇華させ、おもてなしの街づくりを進めた結果、農漁村地域から世界に名だたる観光都市に進化しました。南あわじ市、淡路島には、それに劣らぬ可能性が十分にあると感じます。

 一つの大きな舞台が、来る2025年に開催され、国内外から多くの観光客の来訪が予想される、大阪・関西万博です。この好機を、淡路島のさらなる活性化につなげるため、淡路島を万博における「食のサテライト」と位置づけ、個性豊かな観光資源のプロモーションと相まって多数の万博来訪者の誘客を目指します。その統一感ある取り組みを加速させるため、島内3市、淡路県民局並びに観光産業関係者が一体となり、次期淡路島総合観光戦略を策定し、海外を含め多様な来訪者をおもてなしできる環境整備やプロモーションの強化を進めてまいります。

人が人を呼ぶ地域づくり

 各地を訪れる人々の志向は、きれいなもの珍しいものを見るだけの観光から、地域の本来の生活に参加し体験し、その地域を構成する人との関係を深めたいというものに変化しています。近年、地域を訪問・紹介するテレビ番組などでも、地域の「人」に焦点を当てています。コロナの波が社会を覆っている時も、淡路島の宿泊施設には、相当数の宿泊客が訪れていました。その背景を伺うと、厳しい環境の時でも常連客は来てくれるとのことでした。また、そうしたお客様とは、顔と顔でつながっていると。

 本市には、体験型観光という視点でも、数多くの資源があります。日本農業遺産の認定を受けた、伝統的な循環型農業での野菜等の植え付けや収穫体験、多彩な海岸線に沿って様々な水産物との出会いを楽しめる漁業体験、瓦やそうめんなどの地場産業見学、いわれや趣に溢れた寺社めぐりなど、アイデアは数えきれません。そして、それ以上に貴重なものが、産業の現場や生活の現場で来訪者を迎え入れる、個性と魅力あふれる「人」の存在です。

 人が人を呼ぶ地域を目指して、体験型観光を拡充し、来訪者と住民が顔と顔、心と心でつながり、多くの人々にとって、第二のふるさとと思っていただける地域づくりを進めます。

ふるさと納税と関係人口の増大

 ふるさと納税は、そうした継続的な関係人口拡大の入り口と位置付けられます。本市の豊富な特産品や観光資源への関心をきっかけにご寄附いただいた方が、継続的に本市のファン・サポーターとなっていただけるよう工夫を重ねます。そのため、返礼品のさらなる発掘・開発と独自性ある広報を進め、より多くの出品事業者と寄附者がつながるよう努めます。また、寄附者の思いが市民に伝わるよう寄附を活用した事業を見える化します。そうした心のつながりが、やがて訪問や移住も含めて南あわじ市に強い関心を持つ関係人口の増加となって現れると考えています。

食材生産の基盤である農畜産業

 畿内随一の高い産出額を誇る本市の農業においても、経営の安定と担い手の確保が強く求められています。地域での課題解決に向けた話し合いを後押しし、人・農地プランの策定を支援することで、集落の未来設計図を明確にし、新規就農、経営拡大を含めた地域の担い手の確保につなげます。また、新規就農の受け皿となる地域の環境整備、親方農家制度の充実や地域に眠る施設や機械の利活用を支援するなど、さらなる担い手の確保策に取り組みます。

 女性農業者は、女性ならではの感性・視点を生かした多様な農業活動、加工品の開発、情報発信などを通じ、益々存在感を高めています。女性農業者グループへの活動を支援し、引き続き、地域農業の幅を広げてまいります。

 農業の基盤整備は、産地の維持と経営の効率化に不可欠です。国衙地区、養宜地区、片田地区、八幡北地区、倭文長田地区のほ場整備を引き続き進めてまいります。4月より市内区間全線開通となる広域農道(オニオンロード)と相まって地域の農業生産性が一層向上することを期待しています。

 深刻化する農業の有害鳥獣被害に対処するため、引き続き、侵入防止柵の整備や猟友会と連携した捕獲活動を推進するとともに、捕獲の担い手確保を図るため、狩猟免許取得に係る経費助成や初心者向けの実技研修の開催を継続します。また、効果が高いとされる集落ぐるみでの被害防止対策を普及させるため、モデル集落での取り組みを推進するとともに、その手法や効果の啓発に努めます。

 酪農・畜産業は、淡路ビーフや牛乳、ヨーグルトなど淡路島のブランド食材を供給する存在であるとともに、堆肥を利用した良質な土づくりにより、本市農業の特長である三毛作の循環型農業を支えています。性選別精液事業や北海道牛導入の経費助成等を通じ、乳質と生産能力の向上や優良後継牛の確保など経営安定化に向けた支援を進めます。

良質な漁場の再生で蘇る水産業

 多彩なブランド海産物を産出する本市の水産業ですが、魚価の低迷、後継者不足、漁獲量の低下など多くの継続的課題を抱えています。

 持続可能な漁業経営には、漁場の環境整備と販売力の強化が不可欠です。漁場環境整備の面では、撹拌魚礁の設置や河川浚渫土を利用した海底覆砂に加え、藻場の減少に対応するため、アカモクを用いた藻場造成試験を新たに開始します。販売力強化の面では、漁協、仲買、関係事業者、地域おこし協力隊、行政が一体となり進めている話し合いに基づき、漁港直送販売や水産物を加工した商品開発などの取り組みを強化し、地産地消の拡大と産品の付加価値向上を進め、漁業者の所得向上につなげてまいります。

第一次産業就業者のスキルアップ支援

 「後継者を作るには、農業や漁業がもっと儲かるようにならんと」多くの一次産業従事者がそう考えています。これからの第一次産業を持続させるためには、収益性の向上は必須の課題です。と同時に、本市の豊かな土壌を、より消費者に強く求められている作物の生産に振り向けていく視点も大切です。そのためには、生産者自らが、世に求められているものを知り、作り、売る、すなわち稼ぐ力を養うことが重要です。来年度、意欲的な一次産業の生産者が、「営業者」として市場とつながり、収益性を高めていく能力を育成する仕組みづくりに着手します。

資源循環産業体系の確立

 持続可能な一次産業の基盤整備として、廃棄物の処理の仕組みづくりが求められています。「南あわじ市資源循環産業体系マスタープラン」に基づき、下水汚泥や玉ねぎ等の野菜残さを微生物処理し、副産物として発生する電気や堆肥などを有効活用する下水道併設型メタン発酵施設の設置に向けた取り組みを進めるなど、資源循環システムの構築を加速させます。

 本事業をはじめとして、SDGsにも貢献するエネルギーの効率的利用や、資源の地域循環をさらに進めてまいります。

吉備国際大学との連携・支援

 吉備国際大学では、淡路島なるとオレンジやジビエカレー、ワイン、日本酒など地元産品を使った商品を吉備大ブランドとして開発・販売するとともに、市民を対象とした生涯学習講座の開催やジビエ処理施設を活用した有害鳥獣捕獲活動に取り組むなど、地域の活性化や課題解決に貢献しています。また、卒業生が市内・島内で活躍する事例も増えており、引き続き、同大学が本市において、地域の産業振興や若者の定住促進等の役割を果たせるよう入学奨励金の交付や地域の関係者と連携した研究活動に対する支援を継続します。

ポストコロナ社会を見据えた観光産業の基盤整備

 淡路島の豊かな食材と観光との融合により高付加価値で個性ある観光地を目指すと申し上げました。その前提として、それぞれの観光資源を磨き上げることが求められます。

 本市の観光産業もコロナ禍での外出自粛や外国との往来制限により甚大な影響を受けました。本市の観光施設入込客数は、コロナ前の令和元年と比較し、昨年は速報値で約57.6%の約160万人と低調でした。この再興に向けて、ポストコロナ社会を見据えた構想を描きつつ、観光の基盤整備に取り組んでまいります。

鳴門海峡の渦潮をめぐる観光産業の取り組み

 兵庫県、徳島県、鳴門市と連携し進めている渦潮の世界遺産登録の活動は、令和2年12月に世界有数の急流での渦潮を有するノルウェー王国ボーダ市と友好連携協定を結び一歩前進しました。コロナ禍により、一時停滞していましたが、来年度は、兵庫・徳島「鳴門の渦潮」世界遺産登録推進協議会による学術調査、普及啓発の実施とともに、複数国で共同申請することも視野にスコットランドとの連携の可能性も検討するなど、歩みを進めてまいります。なお、ボーダ市との友好連携協定は、渦潮世界遺産登録での連携のみならず、観光や水産業など幅広い分野における交流等を通じ、互いに発展していくことを目的としています。まずは、実務者会議を開催し、お互いの強みなどを理解しながら、信頼関係を構築しているところです。今後、具体的な連携事業などの創出に向け両市での取り組みを着実に進めてまいります。

 鳴門市と連携し、実施している広域観光ブランディング事業は2年目を迎えます。令和3年度は、観光客へのヒアリング調査を基に両市の飲食店等と鳴門海峡の渦潮周辺の食材を生かしたグルメ商品の開発に取り組みました。間もなく、お披露目会を開催する予定です。令和4年度は観光マイスター制度を立ち上げ、人材の育成によるホスピタリティの向上を図ります。「渦潮」を中心とする鳴門市との広域連携により、長期滞在型観光をはじめ、観光産業の発展に努めます。

観光施設の着実な整備

 観光施設の整備も着実に進めてまいります。

 灘黒岩水仙郷は、地元関係者等との意見交換の場でいただいた貴重なご提案を可能な限り設計に反映させ、地域の方々も活躍できる場として、再整備を進めてまいります。

 大鳴門橋周辺環境整備事業を通じ、鳴門市との連携による鳴門岬周辺の観光圏域の構築をハード面から推進します。老朽化した道の駅うずしおをサイクリストにも対応した施設として建て替えるとともに、増加した観光客をスムーズに受け入れられるよう周辺環境も整備します。加えて、現在、兵庫、徳島両県において、大鳴門橋桁下空間を活用した自転車道の整備の検討が進められています。サイクリングをはじめとする国内観光・インバウンド需要を確実に捉えるためにも、早期実現に向け、兵庫県はじめ関係機関に強く働きかけてまいります。

地域商工業の再活性化

 地場産業は、まちの個性を形作る大切な存在です。淡路瓦は近年、東南アジアを中心に海外輸出にも注力し、販路を拡大させるとともに壁や床、アクセサリーなど新たな使途の開発を進めています。一方、瓦ぶき技術者の高齢化が進み、後継者難も課題です。淡路手延素麺においても、物産展への出店など都市部を中心に独自ブランドとしての認知度向上に努めるとともに新商品の開発も進めています。市としても地場産業の市場開拓や後継者育成を各種の手段で支援してまいります。

 また、商工会とも連携し、起業家育成、立ち上がり支援を行い、産業の振興と新たな雇用創出を図ります。

4.安全・安心のまちづくり

 第四の行動は、『安全・安心のまちづくり』です。

 従来、生活の安全・安心は、まちづくり・地域づくりを進めていく上で当然確保すべき最低の条件と考えられてきました。すなわち、あって当たり前であり、それがあるから魅力的というようなものではないということです。私もそう考えていました。しかし、地域の防災の会合で、大学教授が語った、「防災への取り組みは、まちの魅力に変えることができる。それをこの地域は証明している。」という言葉で考えが変わりました。

 災害・犯罪がない場所はありません。むしろ、市民が高い意識を共有し、一致団結して防災や防犯などに取り組むまち、危機感を梃子にして共助の精神を育むまちは、住民一人ひとりが輝いて見え、魅力的で、人を惹きつけます。そんな理想を持って「安全・安心のまちづくり」に取り組みたいと思います。

防災力の強化

 私たちは、今後30年以内に70から80パーセントの確率で発生するといわれている南海トラフ巨大地震による津波地震災害や、近年、巨大化傾向にある台風やそれに伴う高潮、頻度を増す豪雨などに常に備えていく必要があります。

 その備えの基本は、私たち自身が、自分の地域にどのような危険があるのかを知ることです。このため、県が新たに示した最大規模降雨による被害想定等を加え、ハザードマップを更新し全戸に配布します。加えて、ハザードマップの見方と避難行動に関する説明会等を地域ごとに開催し、啓発に取り組んでまいります。

 南海トラフ巨大地震に備える「福良港湾口防波堤」に、このほど浮上式水門が設置されました。地元をはじめとする関係者のご協力と関係行政機関のご支援に厚く感謝申し上げます。令和5年度の完成に向け、国県と連携して「兵庫県津波防災インフラ整備計画」を着実に進めるとともに地域と一体となった津波防災対策に取り組んでまいります。

 水害対策についても、計画的に事業を進めます。

 三原川流域等の低地における浸水被害の防止・軽減を目指す松帆古津路地区の堀岸川の護岸整備については、三原川水系河川整備計画との調整を図りながら工事を進めます。また、福良地区の内水対策にも取り組みます。豪雨時に道路の冠水被害が確認される浜町では、排水ポンプの設置に向け、調査を進めます。向谷地区では、県道阿万福良湊線の道路改良工事、防潮堤整備工事などの県事業が、引き続き、着実に推進されるよう県と連携してまいります。

 ソフト面での対策の強化も併せて実施します。

 南あわじ市消防団は、県内最大の消防団であり、地域防災の核として活動いただいています。全国的になり手不足が叫ばれている中、消防団の機能を維持・増進するため、消防団との対話やアンケート調査を行いました。団員のメリットが感じられる仕組みをとの声を受け、まずは、準中型自動車免許等の取得費用に対する支援制度を創設するなどの改善を図ってまいります。また、消防車両や小型動力ポンプをはじめ所有備品の更新を進め、円滑な消防団活動と消防力の維持整備に努めてまいります。

 防災力の強化は、市民の防災力の向上が鍵となります。地域の防災組織の活動の強化とともに、防災ジュニアリーダーの育成、幅広い児童生徒の防災活動への参加やそれを通じた家族への啓発など改善を重ね、防災意識の市民への浸透と地域の実践力の向上に努めます。

 道路・河川の環境改善と通学路の安全対策

 自治会、各種団体などからいただく、多種多様な要望の中で多くを占めるのが、道路・河川の環境改善と通学路の安全対策です。市道をはじめとする公共土木施設の環境改善については、傷みの程度や通行量などから勘案して優先順位をつけ、緊急性の高いものから直営で修繕を実施するとともに、道路法面などの草刈等については、資材提供や機材の貸し出しをさせていただき、地元の皆さまの労力もお借りしながら進めてきています。私は、公共施設は、市民、地域と行政との共同作業で維持管理すべきものという考えは変えておりませんが、一方で、地元の皆さまが高齢となり、これまでのように、ご対応いただくことができないケースも増えてくると思います。来年度は、直営予算を増額するとともに、将来を見据えて、道路・河川堤体の草刈、道路の小規模修繕など公共インフラのメンテナンスのあり方について、市民・地域の皆さまのお知恵も借りながら検討を進めてまいりたいと思います。

 通学路の安全対策も急務です。南あわじ市通学路安全推進会議において、南あわじ警察署、学校、PTAなどの関係機関との連携を強化しつつ、学校周辺のグリーンベルトの施工や、危険個所へのカーブミラーの新設、転落防止柵の設置などのハード整備に重点的に取り組みます。また、特に通学ゾーンで交通規則を厳守する意識の醸成が図られるようドライバーへの啓発も進め、児童・生徒の通学の安全を確保してまいります。

犯罪防止と人権啓発

 犯罪の少ない地域づくりは、市民全員の願いです。地域の安全を守るため、防犯灯や防犯カメラの設置・維持管理に対する補助を継続します。

 また、安全安心な消費生活の実現を図るため、引き続き、消費生活センターに消費生活相談員を配置し、消費者トラブルの相談や解決のための支援を行ってまいります。複雑化・巧妙化する悪質商法等の被害防止のための出前講座の実施や広報に加え、インターネットによるトラブル増加や成年年齢の引き下げに対応した若年者教育にも取り組みます。

 インターネット上のコミュニケーションサイトやSNS等の普及に伴い、差別を助長する表現や人権に関わる悪質な書き込み等が増加しています。このため、問題のある書き込み等をモニタリング(監視)し、その実施を広く周知することにより抑止効果を高めます。また、差別事象や人権相談などには、弁護士や法務局の職員はじめ有識者等で構成される人権相談等行動連携会議において関係者の連携を図りながら適切に対応してまいります。

公衆衛生を支える環境整備

 衛生環境の維持向上も市民生活の安心の条件です。

 長年の課題であった新火葬場の建設については、関係者の皆さまのご協力により、着工することができました。改めて、この場を借りてお礼申し上げます。令和4年度中の完成に向け、周辺環境と調和のとれた施設整備に努めます。また、下水放流施設につきましても地元の皆さまのご理解、ご協力により整備を進めております。

 下水道事業では、中長期的な視点に立って、経営戦略に基づき、計画的かつ効率的な予防保全型の維持管理を実施します。加えて、処理場の統廃合による、さらなる経営の合理化を進めるとともに、アクションプランに基づき、松帆・湊処理区、八木・榎列処理区、広田処理区において、処理区域の見直しと事業再評価を進め効率的な整備に取り組みます。また、合併浄化槽での処理区域では、合併浄化槽設置補助金を継続し、生活排水の適正な処理を支援します。

5.「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり

 第五の行動は『「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり』です。

 市民の皆さまと対話し、地域の将来像を共有しつつ共に行動していくこと、それが、これまで述べた四つの行動を進めていくための大原則です。

住民・各種団体との対話の強化

 その考え方に則り、令和元年度に「地域と市長の対話の場」を設け、21地区の皆さまと意見交換を行い、それぞれの地域が抱える問題や可能性等を共有させていただきました。これに対応すべく各種施策を展開してきており、その状況説明やさらなる意見交換をさせていただく「地域とのフィードバック対話」を旧町を単位とした市内4エリアにおいて、年初にも開催すべく準備してきたところです。新型コロナウイルス感染症の影響により延期となりましたが、令和4年度の早い時期には開催したいと考えております。

 また、着任以来、商工会、農協、社会福祉協議会と定期的に会議を開催し課題や意識の共有を進めて来たところ、コロナ対応をはじめとする各種課題への円滑な対処に相当な効果が見られています。さらにより多くの分野の関係者との意見交換をいたしたく、昨秋より「分野別対話の場」をスタートしております。令和5年度までの間に市内37団体と対話の機会を設け、各団体・分野の現状と課題や推進すべき取り組みについて意見交換を進め、これを通じ、連携を強化しつつ、各分野の課題解決に努めてまいります。

 平成29年度からスタートした「地域づくりチャレンジ事業」は、これまで9地区10事業が認定を受け活動を進めています。コロナ禍の影響を受けている活動もあるものの、様々な成果が見られており、今後も、地域が主体となった課題解決に対する取り組みを応援してまいります。

地域コミュニティ力の再強化

 地域コミュニティの力は、本市の強みです。その伝統は、地域のお祭りやスポーツ大会などの交流事業、文化芸能活動などの地域行事等を通して、強化されてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、これらの活動の多くは中止を余儀なくされました。地域のつながりが希薄化することによる地域コミュニティ力の低下を懸念しています。来年度、地域行事等の再開や地域のつながりを強化する活動を支援し、本市の地域コミュニティ力の再強化を目指します。

 また、そうした活動の下支えとなるのが、地域ごとの基礎的な団体である自治会、老人会、消防団です。令和元年度「地域と市長の対話の場」においても、会員の減少や役員のなり手不足など、それぞれに重い課題を抱えていることが指摘されました。この問題に対応すべく、市役所内で横断的な対策チームを令和2年9月に設置し、昨年度、実態調査を行うとともに、対応の方向性について、各団体と意見交換を行ってきました。令和4年度は、その結果をもとに具体的な対策に着手し、持続可能な地域コミュニティの基盤強化を進めます。

市役所機能と発信力の強化

 住み続けたいと思われるまちの条件の一つとして、市民と行政とのつながり感があります。その要素としては、市役所機能の利便性、快適性や施策・イベント情報の発信力・届きやすさなどがあげられます。

 これまで、窓口業務に関しては、総合窓口システムの導入、市民交流センターの窓口機能強化、マイナンバーカードを使ったコンビニでの証明書発行、電子決済の導入等利便性の改善を続けてきました。待ち時間の予測性を求める来訪者の声も踏まえ、来年度、本庁舎に窓口混雑状況WEB配信システムを導入します。インターネットを利用した窓口の混雑状況の見える化と待合スペースでの三密回避など快適性の向上を期待しています。

 施策情報の発信力強化にも努めます。現在、民間から招聘したシティプロモーション戦略統括官を核に、「市民の皆さまへの効果的な情報提供」と「本市の対外的な認知度向上とブランド力強化」を二本柱とする「シティプロモーション戦略」を進めています。

 市民の皆さまへの情報提供については、市広報紙やホームページ、SNSやさんさんネットコミュニティチャンネルなど各種メディアを活用し、効率的かつ効果的な情報発信を行うための業務フローや実行体制の見直しを進めます。制度や施策を用意して待つという姿勢でなく、市民の皆さまに情報を積極的にお届けし、利用してもらうことが自分の仕事であると職員一人ひとりが理解し実践する組織を目指します。

 対外的なプロモーションについては、メディアへの露出度調査や新たな発信手法の開発などに積極的に取り組みます。また、商工観光や農林水産担当と協力し、本市の産業や観光資産の魅力あふれるプロモーションや、本市が取り組む先進的施策展開についての認知度向上の手法の開発を進め、本市のイメージ向上、市民の誇り、市民プライドの高揚とともに、来訪者、関係人口、移住者の増大につなげます。

最強の市役所を目指す人材育成

 就任当初より掲げていた「最強の市役所」という目標があります。「対話と行動の行政」の実現の最大の鍵は、職員の能力向上、すなわち「人材育成」にあると考えています。目指す人材像は、「対話を通じて市民の課題を的確に把握し、専門知識や人的ネットワークを活用して効果的な課題解決の道筋を導き出し、わかりやすく将来の姿を描き出しつつ、緻密な職員間連携のもと、市民とともに具体的な行動を起こしていくことができる人材」です。その根底にあるのは、相手の考えや感情を引き出し、必要な知識や情報を集め、取り組むべき目標に向けて人の心を動かしていく「対話力」であると考えています。一方、人を動かすという本来の仕事に集中できるようICTなどを活用して、目の前の業務を改善し効率化していくことができる能力も求められます。

 職員の能力の開発については、国・県への派遣や他組織からの人材の受け入れ、研修強化などを進めてまいりました。さらに取り組みを強化するため、令和3年度より人材育成室を設置し、資格取得等自己研鑽を支援するとともに、現在、本市独自の「目標管理制度」導入の準備を進めています。本制度は、職員皆が「実現させたい南あわじ市の未来の姿」を共有し、日々の業務が、その姿の実現にどう寄与しているかを考え、上司部下が密接に対話を繰り返しながら常に高い目標に向かって仕事を前進させるとともに、自己の能力を高めていくという取り組みです。来年度からの運用を通じ、効果を検証しさらに向上させてまいります。また、組織の要となる幹部や管理職の指導力向上にも努めます。私自身も足らざるところ多々あり、ともに自己研鑽に励みつつ、公務員の先輩として、これまでの職歴で培ってきた「対話の心構えや技術」、「課題解決の手法」などのノウハウを伝承し、学び合う組織文化の構築に貢献したいと思います。

令和4年度 歳入歳出予算

 令和4年度予算の提案にあたり、市政運営、主要事業についての方針をお示しいたしました。新型コロナウイルス感染症により、社会情勢が不透明な中、厳しい財政状況は今後も続くものと思われますが、本市が抱える様々な課題解決のため、重点化と継続性に配慮しつつ予算の編成をいたしました。その結果、令和4年度歳入歳出予算は、

一般会計「291億2,000万円」(前年比 -1.0%)

特別会計「123億7,203万4千円」(前年比 -1.2%)

企業会計「58億4,706万9千円」(前年比 +14.2%)

合計「473億3,910万3千円」(前年比 +0.6%)とさせていただいています。

結びに

 岸田総理は「新自由主義」を脱して「新しい資本主義」を目指すと表明されました。その意味について私の解釈を述べさせていただきます。

 「新自由主義」の根幹は、個々人が、自分だけの幸福を追求すれば、神の見えざる手により、全ての人に幸福がもたらされるという考え方にあります。しかし、現実は、そのようには機能していません。従って、「新しい資本主義」の根幹は、一人ひとりが周囲の幸福に貢献することにより、人間自らの手で幸せが連鎖する社会をつくるという考え方に置くべきである。

 アメリカの思想家エマーソンの「幸福は香水のようなものである。人に振りかけると自分にも必ずかかる。」という言葉があります。市民一人ひとりが、幸せの香水を周囲の人に振りかけ、その飛沫が自分にもかかる。その香りの連鎖によって心豊かに社会をつないでいく。そんな地域社会は、住民一人ひとりに魅力があり、人が人を呼ぶ賑やかな地域となることでしょう。

 南あわじ市は、そんな新しい社会を先導することのできる地域であると確信しています。全ての市民の皆さまが周囲に幸せの香水を掛け合い、笑顔の絶えない地域となり、「子育ての喜びが見えるまち」という理想がさらに希望ある未来に引き継がれていくよう、ぶれない「5つの行動」のもと、職員一丸となって、立ち止まることなく、市政を進化させてまいります。議員各位におかれましては、何卒ご理解賜り、慎重審議のうえ、適切なるご決定をいただきますようお願い申し上げ、私の施政に臨む方針といたします。

 令和4年2月21日

南あわじ市長 守本 憲弘

 

 

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