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令和5年度施政方針

印刷用ページを表示する更新日:2022年2月21日更新 <外部リンク>

令和5年度施政方針 [PDFファイル/653KB]

目次

【時代認識と市政理念】

【五つの行動】

  1. 超高齢社会の克服
    ・シニアの方々の多種多様な活躍の場の創出
    ・人に寄り添う公共交通
  2. 子育て環境の向上と教育の充実
    ・学校教育の充実と高度化
    ・子育て世代の総合的な支援体制
  3. 地域の資源を活かした地元産業の活性化
    ・人が人を呼ぶ・何度でも行ってみたくなるまちづくり
    ・「地方の時代へ」移住・定住・関係人口の取り込みに向けて
  4. 安全・安心のまちづくり
     ・道路・河川の環境改善と通学路の安全対策
  5. 「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり
    ・地域コミュニティ力の再強化
    ・最強の市役所を目指す人材育成とDXの推進

【令和5年度 歳入歳出予算】

【結びに】

時代認識と市政理念

 第118回南あわじ市議会定例会の開会にあたり、議員各位のご健勝をお喜び申し上げ、日頃のご精励ご活躍に対し、敬意と感謝の意を表します。ここに、令和5年度予算案等をご提案させていただくに際しまして、市政運営に臨む方針を明らかにし、市民の皆さま並びに議員各位のご理解とご賛同を賜りたく存じます。

 新型コロナウイルスとの闘いは、丸3年を経過しましたが、依然、感染の波を繰り返しており、闘いが終わったわけではありません。一方、世界は、この感染症の存在を許容しつつ、人々の活動に対する制約を取り払う努力を加速しています。我が国においても、令和5年度は、新型コロナウイルス感染症の法律上の位置づけが変更されるなど、コロナの制約から脱して、力強く前に踏み出す年になると考えています。この3年間は、世界、日本、そしてこの南あわじ市に暮らす我々にとって、どのような意味を持ったのでしょうか?ここから一歩踏み出すに当たり、冷静に見つめておく必要があるのではないかと私は考えています。

 まず、この3年間の基調はコロナとの闘いでした。しかし、それだけではなく、ロシアによるウクライナ侵攻や自然災害の頻発という三つの要素が互いに影響し絡み合った期間であったと考えています。

 第一に、この新しい感染症そのものは、社会に甚大な影響を及ぼしました。人々の活動は、社会、経済、文化はじめ、おおよそ生活や産業の全分野にわたり抑制され、収入や消費を縮小させ、将来不安を増大させるとともに、これまでの習慣や意識を覆すに至りました。

 第二に、一年前、意表をついて発生したロシアのウクライナ侵攻は、急激な国際安全保障環境の悪化をもたらしました。現在の我が国をとりまく状況は、国民的な脅威感の高まりを生んでいます。また、米国の金利上昇による著しい円安と相まって、エネルギー価格や肥料、飼料の高騰という経済的な衝撃も加わりました。防衛力の強化のみならず、製造業の国内回帰や食料自給率の向上などの重要性が再認識されることとなりました。

 第三に、自然災害の影響です。国際的な地球環境保護への声は、戦争にかき消されがちではあるものの、前例のない規模での降雨や地震、線状降雪帯による大雪など、継続する難題は、地球温暖化の脅威を実感させ、脱炭素をはじめとするSDGsへの取組の重要性を再確認させる時代ともなりました。

 さらに、コロナの衝撃により、以前からのトレンドが一気に加速した分野もあります。主に次の3点が挙げられます。

 1つ。デジタル化の機運の拡大です。省力化・合理化の視点に加え、コロナを機に、非接触、リモートの重要性が見直されるなど、社会構造を変えていく力が再認識されました。テレワークの急速な普及がその象徴です。

 2つ。少子化、人口減少への危機感です。令和4年の日本の出生数は80万人を初めて割り込む見込みと言われます。衝撃的な数値です。国も、子育てに特化した「こども家庭庁」を設け、本腰を入れて少子化対策に注力する姿勢を打ち出しています。女性や高齢者など、全ての人の能力発揮・活躍も今まで以上に重要になってきています。

 3つ。基礎自治体の政策企画・実行能力への期待の拡大です。コロナ禍において、国は、感染拡大防止対策については、国主導で枠組みを作り、実行する一方、経済・社会・教育面の対応などについては、財源を自治体に渡し、現場の実態をふまえた政策の企画・実行にゆだねる方針をとりました。これにより、各自治体は創意・工夫をこらし、対策を重ねてきました。コロナがきっかけになったとはいえ、今後もこの方向性はとどまらないと考えています。閣僚経験のある国会議員の言葉「複雑化、流動化する経済、安全保障環境の中で、明治から続いてきた国主導、東京への人口、権限の一極集中を転換し、分散自律型の社会構造を構築する必要がある。」ここに全てが集約されていると感じます。

 こうした、大きな社会・環境の変化の中で、我々基礎自治体は、市民生活の実態、地域産業活動の実態をつぶさに把握し、世界・日本が直面する課題の緩和・解決に向けて、将来の展望を持った政策を創造し実施していく先導役となることが求められています。そのためには市民や地域の産業界の皆さまと連携し、試行錯誤を重ねながら、一つひとつ現場での課題解決の手段を開発していくことが必要です。そして、その活動に必要な制度・財政・人材面の支援を国や県に要請するとともに、得られた成果や教訓を他の自治体と交換・共有し、互いに高め合うことも忘れてはなりません。

 南あわじ市は、恵まれた産業資源、人的資源、地域コミュニティ力を活用し、自らを律するという意味での分散自律型の社会づくりを先導できるポテンシャルを十二分に持っています。そのことを心に刻み、トップランナーを目指します。

 本市は、これまでも、市民との協働を強めながら、少子・高齢社会を克服する柱となる五つの行動を推進してきました。その内容は、今、基礎自治体に期待される方向と一致しています。それぞれの柱に新たな要素を加えつつ、「子育ての喜びが見えるまち」の実現をめざし、引き続き、市政を前進させてまいります。

 

【五つの行動】

1.超高齢社会の克服

 第一の行動は、『超高齢社会の克服』です。

 厚生労働省によると、2021年の日本人の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳となっています。ある研究では、2007年に日本で生まれた子供の50%が107歳より長く生きると推計されています。

 人生100年時代が進む中、日本が、長生きの国として世界を先導できることは、喜ばしいことです。では、何故超高齢社会が問題とされるのでしょうか。それは、次の2点からです。

 1点目。人口の高齢化は少子化・人口減少を伴うことが通常です。生産年齢人口が減少し、経済的な担い手、地域社会の担い手不足となって、社会全体の生産力が低下することが想定されます。

 2点目。人は高齢化するに従い、心身の機能が低下します。高齢人口の増加により、医療費や家族の介護・看護時間の増大を通じて、生産年齢人口への負担が増し、さらに社会の生産力の低下につながることが想定されます。団塊の世代が後期高齢者(75歳)の年齢に達し、社会保障費が急増すると懸念されている「2025年問題」はその事例です。

 私は、この想定は、2つの条件を変えることで、覆すことが可能だと考えます。

 一つは、高齢化しても健康であり続け、自立した生活を送ることができること。もう一つは、その健康な高齢者が、積極的に産業、あるいは、社会活動に携わることにより、経済社会を支える側として貢献しつづけることです。

 高齢社会白書によりますと、令和元年度における健康寿命は、男性が72.68年、女性が75.38年と、平成22年度から、男性で2.26歳、女性では1.76歳延びています。

 さらに、令和2年の国勢調査によると、本市においては、65歳以上の就業率は4割を超え、国・県の平均を大きく上回り、元気でご活躍されているシニアが極めて多いことが分かります。この長所を更に伸ばしていけば、超高齢社会を克服する先導的な地域となることが十分可能です。

 本市としては、3つの視点から、この課題に取り組みます。

シニアの方々の多種多様な活躍の場の創出

 1点目は、シニアの方々の更なる活躍の場の創出です。本市が進めている、高齢者等元気活躍推進事業は、「働くシニア応援プロジェクト」、「おもいやりポイント制度」、「生涯現役カレッジ」を主要な柱としています。「体が続く限り働きつづけたいと思う職場が見つかり、本当にうれしい。第2の天職だ。」働くシニア応援プロジェクトの参加者からいただいた言葉です。また、おもいやりポイント制度の参加者は、「週に1回1時間ずつでも、自分が役立つ存在であると感じられる居場所と役割が見つかった。」と話されました。本事業の着実な成長と浸透を実感します。令和5年度は新たにシニアの生涯活躍総合相談窓口を開設し、併せて、ハローワーク洲本の出張相談も行います。引き続き、本事業を核に多くの高齢者の方がいきいきと活躍し、皆が支え合う好循環の環境づくりを進めてまいります。

市民の健康づくりと健康寿命の伸長

 2点目は、市民の健康づくりの推進です。本市の特定健診受診率は兵庫県内平均受診率を上回っており、健診受診への関心は高くなっています。引き続き、まちぐるみ健診のさらなる受診率向上や、保健指導の利用を促し、早期の生活習慣の改善と健康寿命の延伸を図ってまいります。

 より高齢になってからの心身のケアも重要です。第9期老人福祉計画及び介護保険事業計画の策定を進めつつ、75歳以上の高齢者に対し保健事業と介護予防事業とを一体的に提供し、疾病の予防、生活機能の維持という二つの側面から高齢者の健康維持を図ってまいります。さらに、令和5年度は、「糖尿病性腎症重症化予防」、「骨折予防」などに加え、新たに高血圧の方に対する重症化予防を目的とした訪問も開始します。また、第4次障害者計画及び第6期障害福祉計画、第2期障害児福祉計画の策定を進めます。

人生100年時代を住み慣れた地域で

 3点目は、できるだけ長く、住み慣れた場所で過ごすことができる地域づくりです。本市においても独り暮らしの高齢者は増加しています。地域コミュニティの希薄化を背景に高齢者が孤立しやすい状況にもあり、高齢者が住み慣れた地域でいつまでも生きがいをもって生活していくためには、地域住民とふれあう場、さらには、高齢者の知恵や技術・能力などを地域で発揮できる機会の創出、交通や買い物の利便性の向上、などが必要となります。加えて、様々な形態で、生活の難しさを抱える人・家族への適切な支援も必要です。総合的な福祉の観点からも、施策を展開してまいります。

総合的福祉研究プロジェクト

 「現行の支援体制では支援しきれない複合的な生活課題を抱える事例や、社会的孤立から支援につながっていない事例などに対応する仕組みをつくる必要がある。」コロナ対策における、フードパントリー、みんなの食堂や低所得者に対する商品券配布事業に併せて行ったアンケートなどを通じて見えてきた課題です。「総合的福祉研究プロジェクト」によって、高齢・障害・子ども・生活困窮など分野を問わない「相談支援」、本人と支援メニューのマッチングを行う「参加支援」、地域の交流の場や居場所を整備する「地域づくり」、「支援が届いていない方を発見し、支援につなげる方策」などを一体的に推進します。

人に寄り添う公共交通

 淡路島における公共交通は、自家用車の普及と人口減少に伴い、縮小を続けてきました。しかし近年、次の3点から、公共交通の重要性が高まっています。その1。免許を返納される高齢者、運転免許を持たない若者の増加です。高齢化と人口減少による集落の点在化により、自宅からバス停までのラストワンマイル問題への関心も高くなっています。その2。淡路島の知名度の拡大による、遠方からの来訪客の増加です。そしてその3。SDGs、特に地域の脱炭素のためには、自家用車から公共交通シフトが必須であることです。

 これらの視点を踏まえつつ、令和5年度はバス事業者及び関係市と協調しつつ、従来の淡路島地域公共交通網形成計画を見直し、新たな課題やニーズへの対策を盛り込んだ「淡路島地域公共交通計画」を策定します。

 また、らん・らんバスや市域を跨ぐバス路線のルート再編、市の支援による運賃の大胆な低減化による公共交通の利用促進に引き続き取り組むとともに、課題となっている沼島地区の海上貨物等の輸送手段維持についても、現状把握に努め、将来を見据えた対策の検討を進めてまいります。

 

2.子育て環境の向上と教育の充実

 第二の行動は、『子育て環境の向上と教育の充実』です。

 地域社会が教育はじめ子育て環境の向上に取り組む意味は大きく三つあります。一つ。子どもたちの将来の幸せのため。これは学ぶこと本来の目的でもあります。二つ。社会を支える人材をつくり、地域社会を持続的なものとするため。そして三つ。魅力的な教育で人を惹きつけ、地域の更なる発展を図るためです。子育て世代の地方移住者の約4割が、子育て環境の良さを地域選定の理由に挙げているという調査もあります。引き続き、「子育ての喜びが見えるまち」の実現に向け、次の3つの柱で進めてまいります。

学校教育の充実と高度化

 第1の柱は、「学ぶ楽しさ日本一」の実現に向けた施策展開です。

 子どもは地域の宝、南あわじの宝です。南あわじっ子が「なりたい自分になれる」ことを支援していくため、読解力と探究心を柱とする学校教育の充実と、様々な課題をかかえる子どもたちの学びの保障を進めます。ボーダーレスの流れが加速し、地球規模の問題が拡大する中、世界の人々とコミュニケーションを図り、協働していくためにも、自分の中に文化的支柱を持つことが重要です。本市独自の小中学校の9年を通した総合学習、「コアカリキュラム」は世界に誇る伝統芸能である淡路人形浄瑠璃を題材に、子どもたちの心に文化的支柱を確立するとともに、探求心を深め、「人と関わる力」、「課題解決に向けてやりとげる力」、「自分を見つめる力」、「未来をつくる力」といった、これまで明示されてこなかった「生きる力」と言う見えない学力を伸ばします。

 本物に触れることは、子どもたちの探究心を育てる重要な機会です。

 著名なスポーツ選手や文化人の語る言葉は、小中学生の心にスポーツや文化の魅力と楽しさ、そして努力する意欲を芽生えさせます。南あわじ市の子どもたちが、大きな夢・目標を持ち、その実現に向かって活動し、自ら未来を開いていく。そんなきっかけを与え続ける「夢プロジェクト」を引き続き展開します。

 幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基盤を培うとともに、小学校以降の学習能力の土台となります。「学びの芽生えノート」は幼児たちの成長を見える化し、保護者と園が一体となって成長の様子を共有していく取り組みです。子どもたちが興味・関心のある遊びを通して主体的に学ぶ習慣を身に付け、児童期の大きな成長につながるよう支援します。加えて、保育士養成課程を持つ大学とも連携し、若い世代の意見を生かした幼児教育の充実を目指します。

 読解力の向上にも努めます。幼児期から読書力を養うため、絵本にふれあうイベント、定期的な読み聞かせ、絵本講座などを充実します。加えて、読書推進員の活動に基づき、学校図書館の司書増員や、リニューアルプロジェクトを計画的に進めるとともに、市立図書館では新システムを基盤に読書手帳などにも取り組みます。

 学校の経営力強化も重要です。各学校が特色をもって、「学ぶ楽しさ」を追求する授業や行事などを展開するスクールチャレンジ事業なども継続し、学力向上、特別支援教育、いじめ・不登校問題など課題に対応した教職員の資質向上や体制作りをバックアップします。

 令和5年度には、「学ぶ楽しさ支援センター」が稼働します。教職員の自主研修支援、防災教育サテライト校、社会的自立支援の3つを軸に市民との連携協働も深め、学齢児を中心に市民全世代にわたる「学ぶ楽しさ日本一」を目指してまいります。

地域の人々に見守られて過ごす場の拡充

 第2の柱は、子どもたちが地域の方々に見守られて過ごす場の拡充です。子ども議会では、毎年、遊び場の充実の要望をいただきます。令和4年度は、旧南淡庁舎跡地、市立図書館前に公園を設置したほか、地元のご協力により神道ふれあい公園も整備することができました。また、一般開放を実施している小学校の遊具の修繕や総合型遊具の設置なども計画的に実施し、家族のふれあいの場、地域住民の交流の場としての活用を進めます。

 放課後、全ての児童が、多種多様な遊びや体験活動と地域住民や企業・団体など「まちの先生」との触れ合いを通じ、「なりたい自分を見つける」ことができる居場所。アフタースクールは、そんな場となることを目指しています。広田、倭文、湊、八木、阿万、神代、福良に加え、令和5年度は辰美、北阿万を加えた9校区で展開します。

 また、国は、公立中学校での部活動改革として、段階的に地域の文化芸術・スポーツ団体などに活動の場を移行する「部活動の地域移行」構想を掲げています。各団体や保護者、民間事業者等の協力の下、学校と地域が協働・融合できるよう、一歩一歩進めてまいります。また、小学校のプール授業については、民間プールの活用を試行してまいります。

 「校内放送から流れる『お世話になります。気を付けて工事をしてください。』という児童のメッセージを聞いた時、必ず期間内で終わらせようと思った。」児童らが、賀集小学校大規模改造工事に関わった人たちに感謝を伝えようと開いた「感謝の会」での関係者の話です。素直に感謝の心を伝えられる子どもをはぐくむ。そんな場所を目ざし、学校の環境整備を着実に進めます。令和5年度は、小学校音楽室の空調設置のための設計業務や北阿万小学校の予防改修事業などに取り組みます。

子育て世代の総合的な支援体制

 第3の柱は、子育て世代への支援体制の充実です。

 核家族、共働き家庭の増加などの家族の姿の変化、地域とのつながりの希薄化など、地域の子育て環境は、大きく変化しました。また、続くコロナ禍は特に家事・育児の面などにおいて、我が国の男女共同参画が進んでいないことを浮き彫りにしました。

 「子育ての喜びが見えるまち」の実現には、子育てしやすく、安心して暮らせる環境と地域の共同支援体制の構築が必要です。男女共同参画を支える地域の職場環境づくりはその大きな要素です。コロナ禍で進捗が思うように進まないところがありましたが、「子育て応援コンソーシアム」を本格稼働させ、商工会とも協力し、広く企業や団体の参加を得ながら、仕事と育児の両立に関する課題共有、先進事例調査や情報交換を行い、今後の方向性を提案・協議する場としてまいります。加えて、改訂を進めている第3次男女共同参画計画を実行し、子育てに優しい職場環境づくりなどを地域全体で応援する気運を形成します。

 安心して子どもを預けられる保育環境を堅持するため、年々難しくなっている保育士確保に向け、就労一時金、家賃補助などの支援による移住者も含めた新規就労の促進や離職防止を図ってまいります。

 安心して出産できる環境づくりは、子育ての出発点です。淡路島全体の共通課題である産婦人科医師の確保を、三市協力して県や関係機関へ強く働きかけます。不妊治療費や妊婦健康診査費、島外医療機関での健診・出産に係る交通費の助成を継続しつつ、妊娠期から出産・育児まで一貫して身近で相談に応じ、必要な支援につないでいく伴走型子育て支援を推進します。また、休日・祝日及び夜間においても、電話相談や受診が可能な小児救急体制を継続して確保します。令和5年度は、新たに、新生児聴覚スクリーニング検査の受診費用への助成や高校生世代の医療費無償化を実現し、子育て世代の更なる負担軽減につとめてまいります。

地域文化・スポーツの振興

 松帆銅鐸の発見から早8年。昨年は、初めて銅鐸7点、舌7本の全てが揃った特別展を玉青館で開催できました。松帆銅鐸をはじめ本市の宝物である文化財の図録の発行、子ども向けのワークショップなどを通じ、市民参加型の郷土愛を醸成する機会を増やすとともに、松帆銅鐸の国指定重要文化財の指定を目指すなど、文化財を次世代へと継承していきます。また、保存継承検討委員会で検討を重ねてきました淡路人形座の在り方については、委員会の答申を受け止め、人形浄瑠璃の魅力を最大限に活かし、伝統芸能の保存伝承及び観光振興などへの活用を可能とする組織への再編を進めます。

 秋の風物詩として定着した、近畿高等学校駅伝競走大会も令和5年度で5回目の本市開催となります。引き続き関係機関と連携しつつ、安全な競技実施のための準備を進めてまいります。

 地域の人々が祭礼などを通じ、世代を超えて伝えてきた阿万の風流大踊小踊が全国の風流踊とともにユネスコ無形文化遺産に登録されました。地域と協力し、保存伝承のあり方を検討してまいります。

 

3.地域の資源を活かした地元産業の活性化

 第三の行動は『地域の資源を活かした地元産業の活性化』です。

食材生産の基盤である農畜産業

 ロシアのウクライナ侵攻や円安を契機とする食料や飼料の高騰は、一次産業の重要性を改めて認識する機会となりました。一方、近畿圏内トップの産出額を誇る本市の農業でさえ、経営の安定と担い手の確保は長年のそして喫緊の課題です。地域計画(旧人・農地プラン)の策定は、集落の未来設計図を明確にし、新規就農、経営拡大を含めた地域の担い手の確保につながります。地域での課題解決に向けた話し合いを後押ししてまいります。また、親方農家制度の充実、地域に眠る施設や機械の利活用への支援、女性ならではの感性・視点を活かし、益々存在感を高めている女性農業者グループの多様な活動への支援など、引き続き新規就農の受け皿となる地域の環境整備に取り組みます。また、「持続的な生産活動」を実践する優良企業に与えられる世界共通規格GGAP認証更新への支援や効果的なプロモーションにより「淡路島たまねぎ」のブランド力の一層の向上を進めます。

 シカやイノシシなど、有害鳥獣の出没範囲は拡大傾向にあり、被害は深刻化しています。高齢化する捕獲従事者の持続的な確保のため、狩猟免許取得に係る経費助成や初心者向けの実技研修の開催を継続するとともに、ICT機器の活用等による捕獲時の負担軽減を進めます。また、侵入防止柵の整備や猟友会のご協力による捕獲の重点実施を継続するとともに、捕獲資材や追い払い機材導入など、計画的かつ総合的に鳥獣対策に取り組む集落を支援する「集落ぐるみの鳥獣対策支援事業」を創設します。

 酪農・畜産業は、淡路ビーフや淡路島牛乳、ヨーグルトなど淡路島の高付加価値食材供給の源です。加えて、本市で営まれる三毛作を支える良質な土づくりに必要不可欠な堆肥の供給源として、日本農業遺産に認定された循環型農業の核の一つとなっています。引き続き、経営安定化に向けて、優良後継牛の増頭や育成、乳質向上などの支援を実施してまいります。加えて、市内の水田を有効活用し、耕種農家と畜産農家の連携による循環型農業の促進と水稲作付面積維持への取り組みを支援します。近年、国際情勢や円安による影響を大きく受ける輸入飼料の脆弱性が再認識されています。そうした課題の緩和に向け、主食用米から籾米サイレージ飼料への転換を推進し、輸入割合が高い「濃厚飼料」を自ら生産する仕組みの構築を進めます。

 産地維持と経営効率化に農業の基盤整備は不可欠です。賀集地区での県営ほ場整備事業、新田や国衙地区の県営ほ場整備後のコンクリート畦畔工事などを着実に進めるとともに、養宜地区、片田地区、八幡北地区、倭文長田地区のほ場整備も継続して実施します。また、ため池については、豪雨時の被害軽減のための提体整備や水位調整を通じ、安定的な農業用水の確保と防災の両立を進めます。

良質な漁場の再生

 「南あわじのさかな 旬のカタログ」をご覧になったことがあるでしょうか?年間を通じ、また、四季折々に水揚げされる豊富な海産物がまとめられています。しかし、本市の水産業も、魚価の低迷、後継者不足、漁獲量の低下など、多くの継続的課題を抱えています。

 漁業者の所得向上、漁業集落の再生のため、漁業者自らの創意工夫による種苗放流や漁場の生産性向上への取り組みを応援します。

 持続可能な漁業経営には、漁場の環境整備と販売力強化が欠かせません。環境整備の面では、アカモクの種苗導入と栽培試験による藻場育成試験の継続や牡蠣殻を利用した改良材による福良湾の底質改善モニタリング調査のほか、沼島沖への並型魚礁の設置などの支援も行ってまいります。また、販売力強化の面では、有識者を迎え、漁協、仲買、関係事業者、地域おこし協力隊、行政が一体となって行う、漁業者の所得及び魚価の向上、地産地消の促進を引き続き支援します。

資源循環型社会の推進

 市内には玉ねぎ等の野菜残渣や下水汚泥などのバイオマス資源があります。それらを適切に処理しつつ、処理残存物の有効活用に加えて、地域内でのエネルギーを創出するなど、資源が循環する産業体系の構築が急がれています。引き続き、「資源循環産業体系マスタープラン」に基づき、バイオマス資源を生物処理するとともに、電力や堆肥を生み出す効果的方策を検討し、実現を目ざします。また、脱炭素への取り組みを加速するため、温室効果ガスの排出量等の調査を行うとともに、コミュニティバスへのEV車導入やEV公用車導入を進めてまいります。

人が人を呼ぶ・何度でも行ってみたくなるまちづくり

 コロナ禍での外出自粛や外国との往来制限により停滞したとは言え、観光産業は、南あわじ市にとって最も伸びしろの大きい分野の一つです。現在、全国的にインバウンドを含む観光産業の再立ち上げを進める時期が来ていますが、本市の観光産業にとっても、令和5年度の兵庫デスティネーションキャンペーン、2025年の万博、それに続き、慶野松原をビーチバレーの会場とする関西ワールドマスターズゲームズと、立て続けに、大きな波が押し寄せます。

 本市で、コロナ禍の時期においても、市民・市内事業者の皆さまとともに、感染防止と経済活動を両立する新たな生活様式「南あわじStyle」の普及など安全な観光地づくりに取り組んでまいりました。令和4年には、全国旅行支援制度などの後押しも活用しつつ、宿泊を除く観光施設入込客数は、ほぼ令和元年のレベルを取り戻すなど、良好な再スタートの環境にあります。

 今後、本市の観光政策では、次の3つの視点が重要と考えます。

 一つ。市域を超えた広域的な視点、すなわち、淡路島全体、四国との連携等を踏まえた取り組みです。二つ。第一次産業と観光業との融合の視点。三つ。SDGs、体験観光など新たな価値観を取り込む視点です。それぞれについて、お話していきたいと思います。

 一つ目は、市域を超えた広域的な視点についてです。

 以前より、観光については、淡路島全体での取り組みが重要であると申し上げてまいりました。実際、平成30年度に、県、島内3市、淡路島観光協会等が協力して「淡路島総合観光戦略」を策定し、淡路島観光戦略室を設けて統一的な取組を進めています。現在、二期目の戦略を策定中であり、本市も積極的な提案を行っています。また、万博にあわせて、島の地場産業や食、文化等が体験できる「AWAJI島博(仮称)~いのち輝く島~」を開催することが、県、島内3市、淡路島観光協会等において合意されました。今後、DМOである淡路島観光協会が舵取り役となり、県が進める「ひょうごフィールドパビリオン」への参加を軸に観光拠点の磨き上げや万博来訪客の呼び込みのためのツアー造成などが推進されます。

 本市としても、その方向性と整合性をとりつつ、ビッグプロジェクトを推進しています。灘黒岩水仙郷は、12月オープンに向け着実に整備を進めます。鳴門海峡周辺においては、間もなく竣工の絶景「うずまちテラス」に加え、「道の駅うずしお」も令和7年春のオープンを目指し、佇まいを一新した再整備を進めます。本市の推進体制も強化しつつ、島内3市一丸となっての取り組みをリードします。

 徳島空港経由で来訪される多くの方は、四国と淡路島を一つの観光エリアと見ています。鳴門海峡周辺を一体と捉え、淡路島と四国をつなぐ観光ルートを形成することも大切です。鳴門市と進めている広域連携事業において、うずしおを核とした地域資源の磨き上げや人材の育成によるホスピタリティの向上など、圏域としてのブランド化を進めるとともに、徳島空港アクセスバスの実証運行も継続してまいります。

 兵庫・徳島両県は、令和5年度に「大鳴門橋自転車道」整備事業に着手すると発表しました 。実現すれば総延長500キロの「セトイチ」サイクリングルート、瀬戸内大交流圏が見えてきます。官民含めた連携の枠組みであるASAトライアングル交流圏などを通じて自転車分野での広域連携も深めてまいります。

 二つ目は、第一次産業と観光産業との融合についてです。

 豊かな食材産業と観光産業は、付加価値を高め合う関係にあります。よく知られているスペインのサン・セバスチャンは、そこで産出する新鮮な食材を、地域ぐるみで高付加価値の料理に昇華させ、地方の農漁村地域から世界に名だたる観光都市に進化した好事例です。そして、淡路島、南あわじ市には、それに勝るとも劣らぬポテンシャルがあります。

 既に、淡路島全体としては、「御食国淡路島」の掛け声の下、県、淡路島3市、観光協会が協働し、地場産品メニューを作る「淡路島」プロジェクトや京都府、福井県若狭、三重県伊勢志摩と連携した御食国プロジェクトを進めています。加えて、鳴門市との広域連携事業においても、海の幸を中心に両市の食材を活用したグルメ開発が柱の一つとなっています。

 美菜恋来屋を拠点に活動している地域おこし協力隊の南あわじを味わう試食イベントや地元産品を使った商品開発により地産地消を推進していきます。

 わがまちの大学として定着している吉備国際大学に、海洋水産生物学科が新たに設置されます。地元農産品を使った魅力ある新商品の開発、有害鳥獣のジビエ利用などに加え、水産業での連携が加わることは、心強い限りです。引き続き、同大学が、本市の産業振興や若者の定住促進等に役割を果たせるよう、入学奨励金の交付や地域の関係者と連携した研究活動に対する支援を継続します。以上の様な取り組みを通じ、引き続き、第一次産業と観光業の融合を進めます。

 三つ目は、SDGsや体験観光など、訪れる人の心に触れる観光地づくりについてです。人々が観光に求めるものが、多様化しています。単に、美しい景色を見るということではなく、自然に触れ、それを守る活動に参加して、地球環境に貢献している、自分を高めているという実感を得たい、あるいは、そこに住む人々と交流し、生活を実感しながら、自分の居場所として癒しを味わいたいなどのニーズが高まっています。こうした視点で、本市を見ると、日本農業遺産に認定された、循環型農業での野菜の植え付けや収穫体験、多彩な水産物との出会いを楽しめる漁業体験、瓦やそうめんなどの地場産業の製造現場での学び、歴史伝承や趣に溢れる寺社めぐり、そしてまた、白砂青松での清掃活動など、「是非参加し、体験してほしい。」と思えるアイデアが湧いてきます。

 そして、本市には、個性と魅力あふれる温かい「人」の存在という強みがあります。来訪者と住民が顔と顔、心と心でつながるという、体験型観光の神髄を満喫していただけると信じています。

 美人の湯として知られている温泉での癒しも大きな魅力です。引き続き、温泉旅行等のニーズに対応するため、南あわじ温泉郷事業協同組合と連携し安定的な湯量確保のための泉源開発に取り組みます。

 兵庫・徳島「鳴門の渦潮」世界遺産登録推進協議会を通じ世界遺産登録の活動も推進していきます。学術調査、普及啓発を進め、スコットランドとの連携も含めた複数国での登録申請の可能性も検討してまいります。とりわけ、市民の皆さまが海浜の清掃活動を通じて気運を高めていることが注目されています。関係各位のご尽力に感謝申し上げるとともに、こうした自然保護活動を応援します。また、ノルウェー王国ボーダ市との友好連携協定に基づき、実務者会議等を進め、幅広い分野での意見交換を通じて交流を実現してまいります。

地域商工業の再活性化

 淡路瓦、淡路手延そうめんをはじめとする地場産業は、まちの個性であり魅力です。淡路瓦は屋根瓦材としてのみならず、壁や床、アクセサリーなど新たな利用シーンも増えてきました。近年は、東南アジアを中心に海外の販路も拡大しています。

 また、淡路手延そうめんも、物産展への出店など都市部を中心に独自ブランドとしての認知度向上を進めています。関係者の皆さまの創意・工夫に頭が下がる思いです。

 一方で、地場産業も後継者不足に悩んでいます。市としても市場開拓や後継者育成を支援してまいります。

 市商工会開催の創業塾の受講生は顕著に増加傾向にあり、本市における起業マインドの高まりを感じます。「我々小規模事業者が設備投資をするのに大変ありがたかった。」とは、起業支援事業補助金をご利用いただいた方からの言葉です。関係者のご意向を伺いながら丁寧に制度設計を行ってきただけに、この言葉は大変嬉しく思いました。引き続き、改善を重ねながら、起業家育成、立ち上がり支援を充実し、産業の振興と新たな雇用の創出を図ってまいります。

ふるさと納税とプロモーションの強化

 ふるさと納税は、年を追うごとに、全国津々浦々、多くの方々からご寄附いただくようになっています。本市を応援したいという温かい気持ちからお寄せいただいた貴重な財源に感謝するのはもちろんのこと、返礼品を通じて、高いポテンシャルを持つ本市の特産物や観光資源などが、全国に知られていくことは大変有難く思います。心より感謝申し上げます。

 令和4年度、宿泊し、飲食や観光施設を訪れる方々に使っていただこうと、ふるさと南あわじ応援券を発行しました。それも含め、宿泊券のお申込みがずいぶん増えています。一期一会といいますが、返礼品をきっかけにつながった方々が、本市を訪れ、様々な体験や人々との交流を通じて、更に深く本市の魅力を知り、継続的なサポーターとなっていただけるよう工夫を重ねます。そうした繋がりの強化が移住や企業誘致につながることも期待しています。

 対外的発信を強化し、本市の認知度やイメージを向上していくことも、サポーターを増やすための重要な要素です。シティプロモーション戦略統括官を中心に、メディアへの露出度を分析し、主要観光施設へのサイネージ設置やECサイトからの本市企業紹介動画の配信など、新たな発信手法の開発に取り組みます。また、本市の農畜水産品や観光資産の、さらなる魅力あふれるプロモーションを展開します。

「地方の時代へ」移住・定住・関係人口の取り込みに向けて

 「地方の時代」を象徴する指標があるとすれば、その最たるものは、地方への移住・定住の増加ではないでしょうか。そして、その背景には、3つの好循環という視点が存在しています。

 1つ。地域産業の循環です。魅力的な産業づくりには、働き手の確保が欠かせません。一方で、夢を実現したい若者を呼び込むためには、彼らが携わるべき魅力的な職場が必要です。

 2つ。教育・子育て環境の循環です。良い子育て環境は、若い世代を惹きつけます。一方で、子どもが増えれば、更に子育て環境整備のために市の資源を投入できるようになります。

 3つ。地域の担い手の循環です。高齢化が進む中、住みやすい地域づくりのためには、担い手の増加が求められています。担い手が増えれば、負担が分散され、更に住みやすい地域となっていきます。

 こうした好循環を念頭に、産業、教育・子育て、地域環境の魅力整備に努めつつ、不足している人材に焦点を当てた移住・定住対策や、空き家等活用可能な資源の積極的な発掘、有効利用など、戦略的な五つの施策を展開してまいります。

 一つ目は、令和4年度から開始した、人材不足が顕著な介護・看護などの福祉人材の確保に向けた取り組みです。現時点で17件の就労支援への申請があり、うち移住・定住につながったものは15件と着実に成果を上げています。従来から実施している保育士確保対策と合わせて、引き続き、人材の確保と移住を複合的に促進してまいります。

 二つ目は、本市の強み、豊かな食材を生む農畜水産業への新規就業促進です。新規就農者育成総合対策事業や、農業女子プロジェクト事業に加え、新たに、雇用就農者等受入促進事業により、親方農業者による就農希望者の雇用を支援します。また、水産業においても、就業体験事業による新たな就業者育成を図ってまいります。

 三つ目は、働く若者支援です。引き続き、本市の未来を担う若者たちのUIJターンを支援します。大学等の奨学金や教育貸付金の返済を支援する制度、移住者による起業、空き家・空き店舗等を活用した起業への支援の継続など、本市に戻り働く若者を応援します。また、ふるさと南あわじを離れて頑張る若者を応援する若者ふるさと応援便や、同窓会応援事業などを通じて、いつか帰ってきたいと思えるつながりを構築してまいります。

 四つ目は、空き家確保や改修等への支援の継続です。「移住を希望しているが、住みたい住宅が見つからない。」という声があります。一方、本市にはすぐにでも使える、あるいは、リフォームすれば十分使える空き家が沢山あります。引き続き空き家バンク登録物件の掘り起こしを推進してまいります。

 また、これまでの移住支援補助金を拡充するとともに、家族の絆の再生や地域の共助を強める形での定住促進を目指した多世代同居・近居支援事業、移住者のマイホーム取得補助、通勤通学交通費助成などを継続します。

 五つ目は、働き方の変容に対応した関係人口の創出です。コロナ禍は、生活様式そのものを劇的に変化させました。Web会議やテレワークの急速な普及などによる二拠点居住ニーズの拡大、都市集中への懸念など地方移住や職場移転への関心は高まり続けています。市内のコワーキングスペース施設運営者、関係団体で組織する地方創生テレワーク促進コンソーシアムにおいて、都市部の企業を呼び込み、市内事業者等と結び付けることで新産業を創出するとともに、関係人口の拡大と深化を進めます。

4.安全・安心のまちづくり

 第四の行動は、『安全・安心のまちづくり』です。

 生活の安全・安心は、あって当たり前というこれまでの考え方は転機に来ています。各地を襲う地震や豪雨などの災害、次々と形を変えて迫ってくる犯罪など、危険がない場所はない時代になりました。

 だからこそ、「安全・安心に取り組むまち」は、市や地域の魅力となる。私はそう考えてきました。市民が防災、防犯などに高い意識を共有し、一致団結して普段からのコミュニティ活動に取り組むまち、共助の精神を育むまちは温かく、魅力的で、人を惹きつけます。そんな理想を持って「安全・安心のまちづくり」を進めてまいります。

防災力の強化

 「天災は、忘れた頃にやってくる」という言葉があります。しばらくの間、本市では、台風の直撃など、大きな災害被害は発生していません。また、現実に震災を体験した阪神・淡路大震災から28年、日本中に災害のリスクを再認識させた東日本大震災からも12年が経とうとしており、防災意識の風化が危惧されています。更に、新型コロナ感染症の影響で、防災訓練などにおいても、十分な活動ができづらい環境が続きました。

 一方、近年、全国的に台風や集中豪雨による風水害が多発している上、本市は、今後30年以内に70から80%の確率で発生するといわれている南海トラフ巨大地震により大きな津波地震の被害を受けると想定されています。

 災害の防止や被害の低減には、インフラや装備など、公共が中心に実施するハード面と、人々の日頃の備えと助け合う心というソフト面の双方がしっかりとかみ合っている必要があります。今一度、地域の安全について基本から見つめなおすべき時期に来ていると感じます。そうした考えを踏まえ、市民の皆さまとともに、着実にハード・ソフト両面の対策を進めてまいります。

 自然災害の被害防止の最大の鍵は、市民一人ひとりと地域の防災力向上にあります。私たち自身が、自分の地域にどのような危険があるのかを知ることは、備えの基本・始まりです。昨年、改訂したハザードマップを全戸に配布させていただきました。その後、自主防災組織や自治会等における防災の取り組みを促進するため、担当部署が各地域での説明会に回らせていただいています。引き続き、積極的なご参加をお願いいたします。

 子ども達の防災における役割が見直されています。防災ジュニアリーダーの育成、幅広い児童生徒の防災活動への参加やそれを通じた家族への啓発など、防災意識のさらなる浸透に向け工夫を重ねます。また、防災訓練も、地域の実践力向上につながるよう、毎回改善に努めます。

 地域の安全は地域で守る。南あわじ市消防団は、県内最大級の消防団であり、地域防災の要です。団員の皆さまのご尽力に心から敬意と感謝を表します。従来より、団との対話やアンケート調査の結果を取り入れ、団員の準中型自動車免許等の取得費用に対する支援制度を創設するなど処遇改善を進めています。令和5年度は、出動手当や団員報酬の引き上げにも取り組みます。また、消防車両や小型動力ポンプなど、所有備品の更新を進め、円滑な消防団活動と消防力の維持整備に努めます。

 国県と連携しつつ、ハード面の整備にも、積極的に取り組みます。南海トラフ巨大地震に備える「福良港湾口防波堤」は、令和5年度の完成に向け着々と工事が進んでいます。引き続き、「兵庫県津波防災インフラ整備計画」を進めます。

 三原川流域等の低地対策にもたゆまず取り組みます。孫太川湊内水対策事業における、湊東1排水ポンプ場整備及び排水路の整備工事のほか、入貫川志知川内水対策事業として、志知川の排水ポンプ場整備も進めます。また、福良では、向谷地区の防潮堤整備、排水路工事など県と連携し高潮対策事業にも継続して取り組んでまいります。

 防災にも新技術を取り入れます。大規模災害時、特に情報収集が必要となるエリアについて、民間事業者との協力により、事前にドローンの運行ルートを設定し、迅速な情報収集に努めます。令和5年度はまず、津波による浸水が想定されている南淡、西淡地区の運行ルートを作成します。

 一時退避後の避難生活におけるトイレ問題は隠れた最重要課題です。これまでも、トイレカーの導入や仮設トイレの確保に取り組んできましたが、さらなる改善に向けて、マンホールトイレの設置を進めてまいります。

道路・河川の環境改善と通学路の安全対策

 道路・河川の環境改善は、自治会、各種団体などからいただく要望で最も多く、私どもも全力を挙げて取り組んでまいりました。しかし、現在、20世紀後期に集中的に整備されたインフラの傷みが全国で顕在化する時期となっており、本市においても対応が遅れがちになってきたことは否めません。

 令和4年度から、予算・体制を強化し、道路については、傷みの程度や通行量などから勘案して優先順位をつけ、緊急性の高いものから直営で修繕を進めています。また、河川浚渫や大・中の樹木等の伐倒除去にも取り組んでいます。

 とりわけ、通学路の安全対策については、令和3年の子ども議会で子どもたち自身からも問題提起があり、対応を強化しています。令和4年度はグリーンベルトと区画線計約17kmの設置を行いました。令和5年度はグリーンベルトなどに加え、地元協議が整いつつある市小学校周辺におけるゾーン30の整備やカーブミラーの設置にも、重点的に取り組んでまいります。

 今後、さらに増加すると考えられる地域からのご要望に対応するためには、新たな仕組みが必要と考えています。令和5年度は、道路法面の草刈等について、資材提供や機材の貸し出しをさせていただく従来からの制度に加えて、自治会による作業を助成する仕組みを新たに構築します。

 私は、公共施設は、市民、地域と行政との共同作業で維持管理すべきものであると考えています。案件が増加する一方で、高齢化の進展等により、地域による作業がより難しくなるということも想定し、引き続き直営予算を確保していくとともに、将来を見据えた、公共インフラのメンテナンスのあり方について、市民・地域の皆さまのお知恵、お力も借りながら対応を進めてまいりたいと思います。

犯罪防止と人権啓発

 南あわじ市は、都市部に比較すると犯罪や交通事故が少ないと言われます。これは、地域の皆さまによる地道な活動のおかげであると感謝しています。

 しかし、技術の発達や社会環境の変化により、犯罪の態様が多様化する中、本市においても、様々な被害が発生していますし、令和4年度は、2度にわたり交通死亡事故多発非常事態を宣言しました。引き続き、市民の皆さま、警察、行政がタッグを組んで、より安全・安心なまちづくりに取り組める環境整備に努めます。

 犯罪が起きやすくなるような要因を除去し、犯罪の機会を抑制する環境づくりを進めます。その一環として、地域と連携した防犯カメラの設置・維持管理に対する補助、高齢者等に対する特殊詐欺被害の防止のため、防犯機能付き電話機等の購入への支援を継続します。

 益々巧妙化する悪質商法などによる消費者被害。成年年齢の引き下げも影響し、インターネットによるトラブルなど若年層の被害も増加しています。消費生活センターでは、引き続き消費生活相談員による消費者トラブルの相談や解決のための支援を行ってまいります。また、複雑化・巧妙化する悪質商法等の消費者トラブルの未然防止のため、高齢者や小・中・高校生などに向けた出前講座を実施します。

 犯罪・交通事故の防止には、広く市民の皆さまの協力が不可欠です。警察、防犯協会や交通安全協議会の皆さまとも協力しつつ、広報・啓発に尽力してまいります。

 全ての市民の人権が守られることも、安心して住める地域の条件です。インターネット上の人権侵害の課題については、差別的な書き込み等のモニタリングを継続し、抑止を図ります。また、差別事象や人権相談などには、弁護士をはじめ有識者等で構成される人権相談等行動連携会議で連携をもって適切に対応します。

公衆衛生を支える環境整備

 衛生環境の維持向上も市民生活の安心の条件です。

 長年の課題であった新火葬場の竣工が間近となってきました。今後も周辺環境と調和のとれた運営に努め、人生の最期を思い出とともに送り出す場となることを願っています。

 また、下水放流施設も令和4年度に竣工いたしました。隣接する公園も、子どもたちが元気に集う場となり喜んでいます。

 両施設の整備に際し、ご理解とご協力をいただきました皆さまに心から感謝申し上げます。

 下水道事業では、中長期的な視点に立って、経営戦略に基づき、計画的かつ効率的な予防保全型の維持管理を実施します。加えて、処理場の統廃合による、さらなる経営の合理化を進めるとともに、国の方針も踏まえ、整備区域の見直しを進めます。また、合併浄化槽での処理区域では、合併浄化槽設置補助金を継続し、生活排水の適正な処理を支援してまいります。

 さらなる、ごみ減量化の取り組みとして、生ごみ処理器の普及や雑紙回収などの取り組みを進めます。

 

 5.「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり

 第五の行動は『「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり』です。

 「対話と行動の行政」は、これまでの四つの行動を進めていくための大原則です。

 この、市民の皆さまと共に歩むまちづくりをスムーズに進めるためには、3つの条件が必要だと考えています。

 1つ。十分な対話の機会や現場をつぶさに見る機会が確保されること。2つ。市民の皆さま同士が円滑に意見交換でき、また、協働できるコミュニティが確保されていること。3つ。そうした対話・協働の機会を活用し、施策を企画し市民の皆さまと協働して実現していくための市役所の人材・組織開発です。

 こうした観点から、次の取組を進めます。

住民・各種団体との対話の強化

 1つ目。住民や各種団体との対話の強化です。

 令和元年度の「地域との対話の場」で、それぞれの地域が抱える問題や可能性等を話し合い、共有させていただけたことは、これからの南あわじを考える大きな財産となりました。コロナ禍で開催が遅れていましたが、令和4年度は、いただいた課題などについての対応状況の報告と、更なる課題の共有の場として「地域とのフィードバック対話」を旧町単位4箇所で開催させていただきました。並行して、市内37団体との「分野別対話の場」を順次開催しています。都度、取り組むべき課題が見えてきており、対応も始めています。

 着任以来、商工会、農協、社会福祉協議会との定期会議を開催し、課題や意識の共有を図ってまいりました。特にコロナ禍における対策を、共に検討し、実行したことにより、円滑な施策執行と、効果の向上を得られたのではないか、と実感しています。また、コロナ感染症の拡大防止対策においては、医師会、歯科医師会をはじめとする皆さまのご尽力に心より感謝申し上げます。

 社会の転換点とも言える時期、これからも幅広い分野で、多くの方々との意見交換や連携を強化し、協働してまいります。

地域コミュニティ力の再強化

 2つ目。地域コミュニティ力の再強化についてです。

 元来、地域のお祭りやスポーツ大会、文化芸能活動などの地域行事を通して本市の地域コミュニティ力は強化されてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、多くの活動が中止を余儀なくされ、人々の交流や協働の機会が減少しました。

 こうした懸念から、令和4年度は、地域行事等再開応援事業によって、コミュニティ活動の再開や地域のつながり強化を支援してまいりました。地域づくり協議会単位では全21地区、単位自治会では約8割の自治会で、ご利用いただくことができ、コロナから立ち上がるきっかけになったのではないかと思っています。

 令和5年度には、さらなる地域コミュニティ力の強化に向け、課題である自治会への加入促進にかかる取り組みや若者をはじめとする新たな地域の担い手による地域活動の取り組みを支援していきます。

 同じ思いで、平成29年度にスタートした「地域づくりチャレンジ事業」についても、これまで9地区10事業が認定を受け活動いただいています。コロナ禍の影響を受けている活動も多数ありますが、計画の見直しも図りながら事業を継続することで、様々な成果が見られています。引き続き、地域が主体となった課題解決に対する取り組みを応援してまいります。

 老人クラブの活動についても、組織の活性化に向けて対話を継続します。また、今後のデジタル化の進展を見据え、高齢者の方々の交流機会の拡大、利便性の向上に役立つよう、スマホ利用などの相談窓口を引き続き設置します。

 市民の皆さまからの申請率がすでに70%を超えたマイナンバーカードと暗証番号を登録し利用する電子証明書は、行政のデジタル化に必要な基盤です。引き続き普及を促進してまいります。

最強の市役所を目指す人材育成とDXの推進

 3つ目。「最強の市役所」を目指す人材・組織開発です。

 冒頭、大きな社会の変化について申し上げ、自らを律するという意味での分散自律型の地域社会の構築に基礎自治体が貢献しなければならないと述べました。その実現のためには、市役所機能の大幅な向上が不可欠です。私の思い描く「最強の市役所」とは、1.市民や産業界との幅広い対話を通じ、市民生活・産業活動の現状や課題を的確に把握し、2.専門的な知見を駆使しつつ効果的な課題解決の道筋を導き出し、3.緻密な職員連携のもと、市民の皆さまと将来の姿を共有し、共に具体的な行動を起こしていくことができる、そのような能力をもつ集団です。

 就任当初から、一歩ずつ前進すべく、職員にその思いを伝え、具体の業務に反映させるよう努めるとともに、国・県との人事交流や専門人材の受け入れなど順次手を打って来ました。

 令和3年度には人材育成室を設置し、資格取得や勉強会の支援等自己研鑽への支援を強化するとともに、職員の資質向上の鍵となる「対話力」の強化のため、私自身も講師となりシリーズの動画研修を実施するなど、学習機会の充実を図ってきました。

 そして、令和4年度から、「実現させたい南あわじ市の未来の姿」を共有し、日々の業務が、その姿の実現にどう寄与しているかを考え、上司部下が密接に対話を繰り返しながら常に高い目標に向かって仕事を前進させ、自らを成長させる、本市独自の「目標管理制度」を導入しました。その取り組みと整合性がとれるよう、人事評価の仕組みも大幅に見直し、令和5年度から本格導入します。まだ道半ばではありますが、人材・組織成長の着実な手ごたえは感じています。引き続き、「学び合い・学び続ける」好循環の組織を目指してまいります。

 市役所機能の向上で特記すべきことが二つあります。

 一つは、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みです。本市では、国が推進する行政システム標準・共通化や行政サービスのオンライン化などに対応すべくプロジェクトチームを作って検討を進めているほか、現場レベルでの個別業務の改善にも積極的に取り組んでいます。

 もう一つは、市役所情報の発信力強化です。市からの情報が必要な時に必要な方に的確に届くことは、市民との対話の基礎でもあります。「市民の皆さまへの効果的な情報提供」を「シティプロモーション戦略」の柱の一つと位置付け、施策を企画・実現するだけでなく、市民の皆さまにわかりやすい形でお届けするまでやり切るのが担当者の責任であるという広報マインドを全職員に徹底していきます。

 令和4年度のアンケート調査では、市からの情報を入手するツールとして1番が「広報南あわじ」、次いで、ケーブルテレビ、市のホームページやSNSなどインターネット経由であるとの結果が出ています。より見やすい広報紙やホームページ作りを進めるとともに、SNSやさんさんネットコミュニティチャンネルなど本市のもつ各種メディアの相互連携、動画の活用など、さらに効果的な情報発信方法を開発します。

【令和5年度 歳入歳出予算】

 令和5年度予算の提案にあたり、市政運営、主要事業についての方針をお示しいたしました。新型コロナウイルス感染症は5類への引き下げが正式に発表されましたが、まだ多くの不透明な要因もある一方で、厳しい財政状況は今後も続きます。本市が抱える様々な課題解決のため、重点化と継続性に配慮しつつ「新型コロナからの再始動予算」として予算を編成いたしました。その結果、令和5年度歳入歳出予算は、一般会計「293億4,000万円」(前年比 +0.8%)となり、当初予算では過去2番目の規模となりました。また、
特別会計「121億8,913万7千円」(前年比 ▲1.5%)
企業会計「58億614万6千円」(前年比 ▲0.7%)
合計「473億3,528万3千円」(前年比 増減0%) とさせていただいています。

 

【結びに】

 「一方はこれで十分だと考えるが、もう一方はまだ足りないかもしれないと考える。そうしたいわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む。」とは、松下幸之助さんの言葉です。市長就任2期目もいよいよ3年目に入りました。今年の干支(えと)は、「癸(みずのと)卯(う)」です。「対話と行動の行政」のモットーのとおり、卯の耳のようにピンとアンテナをはり、しっかりと現状を把握し、施策に生かしていくことを大切にしながら、現状に決して満足することなく市政を進化させてまいります。

 議員各位におかれましては、何卒ご理解賜り、慎重審議のうえ、適切なるご決定をいただきますようお願い申し上げ、私の施政に臨む方針といたします。

令和5年2月21日

南あわじ市長  守 本 憲 弘

 

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