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更新日:2024年2月23日更新

令和7年度施政方針

令和7年度施政方針 [PDFファイル/1.45MB]

目次

【時代認識と市政理念】

【五つの行動】

  1. 超高齢社会の克服のモデルとなるまちに
    ・シニアの方々をはじめとする多種多様な活躍の場の創出
    ・市民の健康づくりと健康寿命の延伸
    ・総合的福祉プロジェクト、人に寄り添う公共交通
  2. 子育て環境の向上と教育の充実
    ・学校教育の充実と高度化
    ・子育て世代の総合的な支援体制
  3. 地域の資源を活かした地元産業の活性化
    ・食材生産の基盤である農畜水産業と後継者問題
    ・一次産業と観光振興の融合~世界一の食の島へ~
  4. 安全・安心のまちづくり
    ・防災力の強化
    ・道路・河川の環境改善と通学路の安全対策、人権啓発と犯罪防止
  5. 「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり
    ・住民・各種団体との対話の強化
    ・最強の市役所を目指す人材育成・組織開発

【令和7年度 歳入歳出予算】

【結びに】

 

時代認識と市政理念

 経済社会、そして地球環境の構造変化が言われて久しくなります。しかし、昨年程、その変化が実態を持って迫って来た年は、なかったのではないでしょうか。これからの基礎自治体は、大きな変化を受け止め、むしろ先手をとりつつ対応していく能力が問われると痛感しています。その大きな流れについて、まず再確認したいと思います。

(自然災害の切迫性の高まり)

 第1に、自然災害の切迫性の高まりです。

 昨年元日、能登半島を大地震が襲いました。家屋の倒壊、広範な液状化によるインフラの大損壊が発生し、更に津波により残された生活・産業基盤も破壊されました。その回復もまだ緒に就くかどうかという時期に、今度は豪雨が追い打ちをかける複合災害となりました。犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、被害にあわれた皆さまに改めましてお見舞い申し上げます。

 軌を一にするかのように、西日本においても、8月初旬、日向灘を震源地とする大きな地震が発生、気象庁は、南海トラフ地震情報(巨大地震注意)を発表しました。加えて、同月末には、淡路島南部を兵庫県初の線状降水帯が襲いました。幸いにして、地震情報は、1週間後に終了され、豪雨についても短時間で、被害は軽微でしたが、少し様相が違えば、本市にも深刻な被害がもたらされていたことは想像に難くありません。今年に入って南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率が「80%程度」へと引き上げられました。世界的にも、カリフォルニアの山火事など、史上類を見ないほどの自然災害が頻発するようになってきたと感じます。

 最大震度7を記録し、甚大な被害をもたらした兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)から30年。「災害への備えを日本の標準装備に」私たちは、阪神・淡路大震災や東日本大震災の記憶を風化させることなく、巨大地震や豪雨などの自然災害に常に備えなければなりません。

(気象変化による日常生活等への影響の拡大)

 第2に、気象変化による日常生活・産業活動への影響の拡大です。

 地球環境の大きな変化、温暖化は、豪雨災害等の直接の原因となると同時に、身近な生活や産業にも大きな影響を与え始めています。昨年夏は、日本でも過去最高の暑さを記録しました。酷暑の下、屋外での仕事やレクリエーションに熱中症の危険が迫る時代の到来です。農作物も、気温変化についていけず、不作が頻発しています。海水温上昇等が、藻場の減少、魚の生息域変化をもたらし、水産業も大きな影響を受けています。

 この変化への対応が、経済・食料安全保障の視点からも不可欠であるとともに、一人ひとりが、持続可能な社会の構築を強く意識し、温暖化を食い止めていくという行動を起こさなければなりません。

(少子高齢化の加速度的進行)

 第3に、少子高齢社会の加速度的な進行です。

 こども家庭庁が発表した「令和6年版こども白書」では、令和4年の出生数は77万759人と報告されています。さらに、令和6年の1年間の出生数は、70万人を割り込む見込みで、コロナ禍以降も日本の少子化傾向には歯止めがかかっていません。こうした中、あらゆる分野で人手不足が顕在化しつつあります。

 石破総理は、10年前に、担当大臣として「地方創生」を推進されました。総理になった現在、改めて地方創生を掲げています。ただ、前回は、努力すれば、地方の人口は回復するという前提で、地方に創意工夫を求めましたが、今回は、人口が必然的に減少する状況でも、持続可能な地域社会を創るという考えに立っている点が大きく違います。

(政治経済環境の大変化)

 第4に政治経済環境の大きな変化です。

 近年、ロシアのウクライナ侵攻、ガザ地区におけるハマスとイスラエルの交戦など、不安定な安全保障環境が、エネルギー価格や為替レートにも影響を与え、それが、我が国における輸入資材高騰によるインフレなどにもつながっています。

 加えて、世界各国、とりわけ民主主義国において、顕著な政治的変動がみられるようになっています。韓国の政治的混乱、米国における大統領選挙の変質、欧州での中道勢力の縮小、そして、我が国においても、安定政権から与野党伯仲の政治環境への移行が発生しています。この背景には、情報通信技術の発達等による富の集中と中産階級の縮小、SNSという新たな情報拡散手段の急速な普及による人々の意識形成の変質があります。

 こうした中で、米国新政権による貿易政策、安全保障政策の先行き、また、その影響も踏まえながらの金利政策をはじめとする我が国の経済政策の動向など、政治経済環境全体が極めて予見困難な状況になっています。

(基礎自治体の役割と南あわじ市)

 以上のように、社会のあり方が、大きな曲がり角にある激しい変化の時代において、基礎自治体が果たすべき役割は何でしょうか。

 これからは、様々な変動を、生活面でも、経済面でも乗りこえていける「ハード・ソフト両面での強靭でしなやかな地域づくり」が大切になってきます。当然、国や県でも国民・県民の声を聞き、対応策を打ち出すと思います。しかし、自然環境や社会構造の変動の影響は、まず地域の生活や産業の現場に現れます。市役所は、それをいち早く把握し、当面の激変緩和対策を進めつつ、将来を予測し、長期的視野からも必要な施策を立案し、実行する立場にあります。そして、現場から声をあげ、国や県をも動かしていく役割を担っています。

 とりわけ、本市は、多彩で高品質な食材の生産力を誇る食糧供給基地であるとともに、自然環境、文化・歴史資産などの観光資源にも恵まれ、更には、シニア層、女性の就業率が極めて高く、地理的にも広域連携のメリットが感じられる、大きな潜在力を持った地域です。その強みを存分に活かし、現在の日本が背負った課題を先進的に解決し、変化を乗り越える強靭な地域のモデルを構築していくことができる、また、そうなるべき地域であると私は考えます。

 こうした視点に立って、これまでも、各分野において、未来志向の取り組みを進めてまいりました。その結果、近年においては、住みたい地域、訪れたい地域として取り上げられ、域内での新規創業や移住も加速的に増加しています。

 更に今後、各分野の取り組みを担い、進化させていく若い力を育て、また、招き入れていくために、農業、畜産業、水産業の収益性を向上するための基盤整備や後継者対策、一次産業・地場産業を活かす観光産業の振興、魅力ある子育て・教育環境の整備、市民の健康・生涯活躍、インフラ整備などを強力に進めて行く必要を強く感じています。

 引き続き、市役所の機能を向上させ、施策のレベルを引き上げながら、ぶれることのない五つの行動を実行してまいります。

【五つの行動】

1.超高齢社会克服のモデルとなるまちに

 第一の行動は、『超高齢社会克服のモデルとなるまちづくり』です。

 令和6年版高齢社会白書によれば、令和2年の世界総人口は約78億4千万人で、40年後には、約100億7千万人となる一方、高齢化率も、この間、9.4%から18.7%に急上昇すると見込まれています。その中で、我が国では、令和5年10月で既に総人口1億2,435万人中、65歳以上は3,623万人、15歳から64歳の生産年齢人口は7,395万人と、高齢化率29%に達し、2人に満たない現役世代で高齢者1人を支えるという状況にあります。

 一方、南あわじ市の高齢化率をみると、令和5年度末で約36.0%、国全体の人口推計では、約20年先に相当します。しかし、本市の高齢者就業率は、約4割と、国や県の平均を大きく上回り、健康長寿で、支える側でご活躍くださっているシニア層が多いことが伺えます。更に、女性就業率も57%と国平均を大きく上回り、全員参加社会に最も近い地域の一つであると言えます。この強みを更に伸ばし、障がいをお持ちの方も含め、誰もが活躍でき、いつまでも支え合う、少子高齢社会克服のモデルとなるまちをめざし、次の4つを重点に施策を展開してまいります。

シニアの方々をはじめとする多種多様な活躍の場の創出

 1点目は、シニアの方々をはじめとする多種多様な活躍の場の創出です。引き続き、高齢者等元気活躍推進事業を推進してまいります。シニアの方々の社会参加・活躍の場を、特に人手不足を抱える分野で創出していくことで、仕事や社会貢献活動の継続による生きがいの創出、社会を支える担い手の拡大、更には、健康寿命の延伸、人手不足の解消や地域の絆の強化という好循環を目指します。新たに取り組む「超短時間雇用創出プロジェクト」により、高齢者のみならず、障がいをお持ちの方々などの活躍の場の創出にも取り組みます。誰もが、生きがいをもって活躍し、支え合うまちづくりに引き続き挑戦します。

市民の健康づくりと健康寿命の延伸

 2点目は、市民の健康づくりと健康寿命の延伸です。

 健康づくりには、自らが健康意識を高め、健康に関する知識を吸収し、積極的に取り組むことが重要です。

 本市の特定健診受診率は、県内のそれを上回り、市民の健康への高い関心を示しています。引き続き、まちぐるみ健診の更なる受診率向上や、保健指導の利用を促し、早期の生活習慣の改善を進めます。また、新たに電動アシスト自転車の活用による、高齢者の健康増進と短距離移動手段としての有用性の検証に取り組みます。

 合わせて、フレイル外来事業によりフレイルリスクがある高齢者の早期発見と、運動や食事などの生活指導を実施するとともに、75歳以上の高齢者の疾病予防と生活機能維持のため、保健事業と介護予防事業を一体的に提供します。また、チームオレンジの取り組みによる認知症の方や家族に対する早期支援にも取り組みます。生活の質の低下や、フレイルに繋がりうる難聴への対策として、補聴器購入の助成を継続してまいります。

 持続可能な地域包括ケアシステムの構築に向け、介護予防事業の強化、訪問介護員の育成、介護専門職以外の新たな支え手の確保に取り組んでまいります。

 また、深刻化する酷暑による熱中症などの健康被害防止のため、一定要件を満たす低所得世帯を対象にエアコン設置への助成制度を創設します。これらの取り組みを通じ、全世代にわたる健康増進、健康寿命の延伸を図ってまいります。

総合的福祉プロジェクト

 3点目は、総合的福祉プロジェクトの推進です。

 市民の方々の実生活においては、複合的な問題を抱える世帯や社会的孤立により情報が遮断され支援に繋がらない案件など、現行の制度・支援体制では対応が難しい事例が増えています。それらの解決に向け総合的福祉プロジェクトを推進します。新たに重層的支援体制整備事業に取り組み、分野を問わない「相談支援」、本人と支援メニューのマッチングを行う「参加支援」、地域の交流の場や居場所を整備する「地域づくり」などにより、支援が届いていない方を発見し、適切な支援につなげる方策を、関係部門や関係機関との連携により、一体的に進めてまいります。

人に寄り添う公共交通

 4点目、公共交通の充実は、超高齢社会の主要課題の一つです。

 車社会である淡路島においても、高齢による免許返納者が増えつつあります。さらに、自動車観光客の増加に伴う渋滞緩和、免許を持たない観光客の誘致、そして地域の脱炭素化などのためにも、公共交通等へのシフトが求められています。

 民間バス路線の見直しや運賃低減の取り組みにより、路線バスの利用者は増加しています。引き続き、バス事業者の理解と協力を得ながら使いやすい地域公共交通ネットワークの構築を目指します。また、らん・らんバスについては、利用者や地域の声を踏まえた再編を行い生活移動手段を維持確保するとともに、幅広く利用されるコミュニティバスとなるよう努めてまいります。

 沼島地区の交通手段維持にも引き続き取り組みます。沼島汽船への支援を継続するほか、喫緊の課題である海上貨物等の輸送手段維持確保の方策について、地域とともに検討を進めます。

2.子育て環境の向上と教育の充実

 第二の行動は、『子育て環境の向上と教育の充実』です。

 今ほど、子育て環境が地域の魅力・吸引力を左右する時代はなかったのではないでしょうか。地域の持続的発展という視点で見た時、子どもが健やかに、逞しく育つ環境は、将来の地域の担い手を創るという意味でも、地域に子育て世代という担い手を呼び込むという意味でも極めて重要です。

 本市では、地域全体が子ども達を応援し、その喜びを分かち合う「子育ての喜びがみえるまち」の実現に向け、次の4つの柱を中心に、教育の充実や、安心して子育てができる環境づくりに取り組んでまいります。

学校教育の充実と高度化

 第1の柱は、「学ぶ楽しさ日本一」の実現に向けた学校教育の充実です。

 その基盤となる、学校現場の授業改革と校務改革への取り組みを加速させています。各校で取り組むスクールイノベーション事業では、子ども達が主体となり学び合う授業や、タブレットを活用し個々の進度に合わせ課題を設定する授業など、各校が主体的な取組を通じた特色ある学校づくりを進めています。本市ではGIGAスクール構想の取り組みとしてLTE通信を備えたタブレット機器を先進的に導入し、全国的にも好事例として挙げられています。来年度は機器の更新及びAIを活用した学習支援システムの導入を行うなど、引き続き教育のICT基盤維持向上を図ります。

 小中学校の9年を通し、淡路人形浄瑠璃など地元の文化を実践しつつ学び合う「ふるさと創造学習」に取り組み始めてから7年となりました。子どもたちの心に文化的支柱を確立するとともに、探求心を深め「人と関わる力」、「課題解決に向けてやりとげる力」、「自分を見つめる力」、「未来をつくる力」などの、いわゆる「見えない学力」を伸ばすことが目的です。授業の進め方も現場で改善が重ねられ、取り組む教員のスキルが向上し、ひいては学校授業全体の改革に繋がっていると感じます。成果が目に見えるまでは時間がかかるかもしれませんが、引き続き、全ての学校で、探求心や主体性、対人能力の高い子ども達を育成できる新たな学びの仕組みを構築してまいります。

 学ぶ楽しさを支える基本は、理解し伝える力、すなわち読解力であり、学校図書館は、その核となります。新たに、学校図書館コーディネーターを配置し、4名の学校司書と連携しつつ、図書室のリニューアルや学校の読書活動推進について指導・助言を行う体制を充実します。

 市立図書館では、幼児期からの読書力を養う定期的な読み聞かせや絵本に触れ合う機会づくりなど、市民と共に成長する図書館づくりを推進してまいります。

 令和5年4月に開設した「学ぶ楽しさ支援センター」は3つの機能を担っています。第1に、課題を抱える子ども達の学びを保障し社会的自立を支援すること、第2に、教職員の自主研修を通じ本市の教育の充実を支援すること、第3は、本市の子ども達を横断的につなげる防災教育の拠点となることです。市民の皆さま、地域の皆さまとも連携協働し、まち全体の「学ぶ楽しさ日本一」実現に、当該センターを有効に活用してまいります。

 「南あわじ市の給食は美味しい」この評価を更に高めたいと思います。物価高騰の中ですが、保護者負担の増とならないよう配慮しつつ、「学校給食地場産食材利用拡大事業」により、できるだけ給食に南あわじ市自慢の食材を提供し、子ども達がふるさとを味わうだけではなく、地元の産業や自然、食文化への理解を深められるような食育に取り組みます。

 幼児教育期間における、遊びを通じた子ども一人ひとりの成長と学びの芽生えを保育・幼児教育施設(園)と保護者間で共有し、小学校での学びへとつなげる「学びの芽生えノート」に引き続き取り組みます。また、保育・教育養成課程を持つ大学との連携により、若い世代の意見も活かした幼児教育の充実を図ってまいります。

 学校施設についても校舎の補修など、学ぶ環境整備に努めます。音楽教室などの空調設備については、来年度、新たに7校の整備を予定しています。合わせて小中学校体育館にスポットクーラーを設置します。また、児童生徒数の減少傾向を踏まえ、今後の学校施設のあり方についてもそれぞれの地域と対話を重ねつつ検討を進めてまいります。

 さらには、淡路三原高校における探究活動への支援を進化させ、地元高校生と市役所等が協働して行う地域課題の解決に向けた活動を応援します。地域の方や地元企業とともに、実際に課題解決に取り組んでみることで郷土愛が育まれ、将来の定住意欲の向上や、魅力ある高校づくりに寄与することが期待されます。

遊び・集いの場の拡充

 第2の柱は、アフタースクールをはじめ子ども達が地域の人々に見守られ過ごす場の拡充です。

 アフタースクールは、放課後、希望する全ての児童が、地域住民や企業・団体など「まちの先生」に支えられ、多種多様な遊びや文化・スポーツなどを体験するなかで「やりたいこと、なりたい自分を見つける」ことを目指しています。ご協力いただいている皆さまに感謝と敬意を表します。来年度は市と松帆を加え、13校区に拡大します。

 子ども達の遊び場、家族や地域の方々の交流の場の充実をという子ども議会での要望に応え、従来より、小学校の校庭開放や随時の公園設置などを進めてきています。来年度は、旧三原庁舎跡地に防災機能を備えた公園を設置するとともに、老朽化したセンターパークの大型遊具を撤去します。各所の遊具の計画的な修繕を進めるとともに、屋内での遊び場整備にも取り組みます。

 公立中学校全体の大きな課題となっている部活動の地域連携・移行に、本市は県内でもいち早く取り組んでまいりました。その背景には、多くの、文化・芸術・スポーツ団体、民間事業者及び保護者のご理解とご協力があります。深く感謝申し上げます。先行しているが故の試行錯誤の部分もありますが、関係者とのきめ細やかな調整を行いつつ、学校と地域が協働・融合した活動となるよう進めます。

 また、小学校の水泳授業の民間プール活用についても継続し、指導の質の向上と教員の働き方改革の好事例となるよう努めてまいります。

子育て世代への総合的な支援体制

 第3の柱は、子育て世代への支援体制の充実です。

 本市では、全国に先駆けた保育料の無償化や教育環境整備など、様々な角度から子育て環境の充実に取り組み、令和2年の国勢調査においても合計特殊出生率1.71と県内上位にありました。しかし、その後、市内の出生者数は、令和4年度197人、令和5年度181人、令和6年度は更に減少する見込みで、国全体の傾向とはいえ、コロナ後の出生数回復への期待は実現されていません。

 少子高齢社会の克服には特効薬はありません。しかし、この状況を打開するため様々な施策を創意工夫し動員し続けなければ、持続的な社会の構築はできません。合計特殊出生率全国一位の徳之島町では、地域社会全体で子ども達を育てる文化が根付いていると聞きます。「子育ての喜びが見えるまち」を目指す本市においても、地域の共同支援体制を強化し、安心して子育てできる環境が魅力となり、選ばれるまちになるよう、次の4点から総合的に施策を展開します。

 1点目は、子育てや介護と仕事を両立できる市域全体の働き方改革です。本市では、令和5年から、商工会や観光協会、社会福祉協議会、市内企業も参加する「子育て応援コンソーシアム」を進めています。仕事と子育てや介護とを両立させるための働き方改革の必要性や、その具体的な方法を共に学び、昨年10月には、市役所を含む第1期参加企業が「子育て応援挑戦企業宣言」を行いました。現在2期目となる参加企業の皆さまと勉強会を開催し、意見交換を進めています。若者や子育て世代に選ばれるまちとなるよう、市役所自身も働き方改革を先導しつつ、市域一丸となって「男女問わず働きやすく、働き甲斐がある」職場づくりに取り組みます。

 2点目は、安心して出産できる環境づくりです。その基本は、妊娠期から出産・育児まで一貫して身近な相談に応じ、必要な支援につなぐ伴走型子育て支援です。出産祝い金や不妊治療費助成、産後ケア事業に加え、妊婦健康診査費や島外医療機関での健診・出産に係る交通費の助成、出産・子育て応援交付金などにより、出産・子育てを応援します。島全体の課題である産婦人科医師の確保などについては、3市協力して関係機関に働きかけを続けてまいります。

 3点目は、保育環境の充実です。子育て世代の働き方も多様化しています。家庭と仕事の両立支援と多様な業種での労働力の確保を目的に、土曜日保育や休日保育、平日の一時預かり事業を継続します。公立保育施設での使用済み紙おむつの園処分も継続し、保護者の負担軽減を図ります。

 また、保育人材確保のための就労一時金や家賃補助などの支援も継続し、新規就労と定着を促進します。

 急な子どもの体調不良も子育て世代には不安の一つです。小児救急体制についても、休日・祝日及び夜間における、電話相談や受診が可能な体制を継続確保するなど、引き続き、子育て世代の安心をサポートしてまいります。

地域文化・スポーツの振興

 第4の柱は、地域文化・スポーツの振興です。門崎砲台跡の戦争遺構については、審議会の答申を踏まえデジタルを活用したARとジオラマの制作、各種講演会や報告会を実施するほか、保存・活用方策を検討します。松帆銅鐸については、引き続き、調査研究委員会の意見も伺いつつ国指定重要文化財への指定を目指します。また、市内各所の貴重な歴史文化遺産の未来への継承に努めてまいります。

 淡路人形座の新体制がスタートして1年。新たな指定管理者のもと、淡路人形浄瑠璃の魅力を最大限に引き出し、伝統芸能の保存伝承と観光振興を一体として進める取り組みに挑戦中です。500年以上の歴史を誇る伝統芸能を大切に継承し発展させてまいります。

 著名なスポーツ選手や文化人等を講師に迎え、講演会や実技指導などを通じて、小中学生が本物に触れる「夢プロジェクト」。昨年も、各界で活躍する著名な方々が、子ども達に語りかけ、実技を披露してくださいました。この出会いを契機に、子ども達が、大きな夢や目標に向かって自ら努力し、未来を切り開いていくことを大いに期待し、事業を継続します。

3.地域の資源を活かした地元産業の活性化

 第三の行動は『地域の資源を活かした地元産業の活性化』です。

 本市の産業の特徴は、農畜水産のブランド産品を軸に強力なラインアップを誇る一次産業、自然、歴史や文化など豊かな資源を有する観光産業、淡路瓦や淡路島手延そうめんなどの地場産業という3つの柱の存在です。

 これらの柱をそれぞれに発展させることに加え、スペインのサンセバスチャンに負けない「世界一の食の島」を目指した取り組みを進め、3つの柱が相互に支え合い成長する好循環を作ります。

食材生産の基盤である農畜水産業と後継者問題

 昨年問題となったコメ不足、海外情勢の不安定化やそれらに起因する円安などを背景に、食糧安保という言葉を頻繁に耳にするようになってきました。一次産業は、食料自給率を支え、雇用を生みだし、環境保全に寄与するとともに、新技術導入の可能性が大きい分野として、改めて注目されています。

 本市は、9年連続で、農業産出額近畿圏内市町村のトップとなりました。生産者の皆さまの長年の努力に感謝と敬意を表します。全国的なブランドとなった淡路島たまねぎやレタスなどを将来につなげていくため、地域計画の策定や変更、そして、その実現を支援し、地域営農の効率化や新規就農を促進します。また、就農希望者の受け皿である親方農家の拡大や地域の環境整備を進め、中長期的な担い手の育成につなげるとともに、新規就農時の投資的経費や女性農業者等の農業生産における課題解決に向けた取り組みに対しての支援を継続するなど多様な担い手の増加を図ります。

 酪農・畜産業は、淡路ビーフや淡路島牛乳など、全国的に知られる高付加価値食材を産出するのみならず、現場から提供される堆肥を活用し、減化学肥料など環境負荷の低減を実現しつつ行われる良質な土づくりが数々のブランド産品を生みだす圃場を支えています。この循環型農業は、日本農業遺産の認定の根拠にもなっています。

 引き続き、経営安定化に向けた優良後継牛の増頭や育成、乳質向上などの支援を行うとともに、飼料供給と水稲作付面積維持を両立する耕畜連携の循環型農業を進めます。また、輸入飼料や物価高騰により生産費が高止まりしている酪農家への支援を継続してまいります。

 全国的にシカやイノシシ、サルなど有害鳥獣の被害はより一層深刻化しており、その出没範囲は農地周辺だけでなく生活環境にも拡大する傾向にあります。改めて、被害軽減に向け、捕獲にご尽力いただいている猟友会の皆さまに厚くお礼申し上げます。引き続き、狩猟免許取得に係る経費助成や初心者向けの実技研修開催など捕獲従事者の確保に努めるとともに、ICT機器の活用等による捕獲能力の維持向上に取り組みます。また、住民が協力して侵入防止柵の整備、捕獲や追い払い資機材の導入など、計画的かつ総合的に鳥獣対策に取り組む集落を支援する「集落ぐるみの鳥獣対策支援事業」について、成果を見つつ拡充してまいります。

 農業者の高齢化や減少が進む中、効率的かつ安定的な農業経営は不可欠です。地域の営農形態や実情に応じた圃場整備を推進し、農業生産の拡大や担い手の増加を図ります。国衙や賀集立川瀬地区の県営圃場整備後のコンクリート畦畔工事などを着実に進めるとともに、令和7年度で完了予定の八幡北をはじめ、養宜・片田・倭文長田地区の整備も継続します。加えて、賀集・野田地区の圃場整備着手に向け取り組みます。防災重点ため池の改修工事を進めるとともに、適切な水位調整を通じ、安定的な農業用水の確保と防災の両立を図ります。また、土地取引の円滑化や、災害発生時における早期復旧に寄与する地籍調査を引き続き推進してまいります。

良質な漁場の再生

 昨年1月、「淡路島3年とらふぐ」が地理的表示(GI)に登録されました。水産物としては関西圏で第一号となります。

 本市の水産業は、ふぐに加え、淡路島サクラマスや沼島の黄アジ、ハモ、鯛や若布、ナマコ、鰆やシラスなど、年間を通じ多彩な産品を誇ります。一方、温暖化の影響や栄養塩不足などによる藻場の減少、魚の生息環境変化などにより、漁獲量は低迷しており、藻場の造成などによる漁場再生に向けた取り組みが不可欠です。丸山海岸での、河川浚渫土を活用した砂浜の保全並びに海域への栄養塩供給試験の実施のほか、企業との協力により鉄鋼スラグを使い、水産資源の増大及びブルーカーボン生態系の創出など、多面的な効果を狙った藻場造成の実証試験を進めてまいります。また、福良湾の底質環境の改善と漁場環境の保全に向け、漁協、大学、行政が連携した調査や研究を進めます。加えて、魚価の低迷や後継者不足に対応し、漁業集落の再活性化、産品のブランド化を通じた漁業者の所得向上など、課題解決に向けて幅広く取り組みます。その一環として地域おこし協力隊による未利用魚を含めた「南あわじの美味しい魚」の地産地消の促進、観光客等へのPRや商品開発を推進します。

 漁港施設の老朽化対策も必要です。阿那賀、仁頃漁港及び漁港海岸施設の長寿命化に向けた機能保全計画の更新を行うなど、計画的な維持管理を図ってまいります。また、国の海業(うみぎょう)振興の枠組みを活用し、丸山漁港において民間事業者の創意工夫による水族館事業はじめとする漁村の賑わいづくりを進めます。

資源循環型社会の推進

 資源循環型社会構築の視点も踏まえ、野菜残渣や下水汚泥などのバイオマス資源の適切な処理と有効活用の検討に引き続き取り組みます。来年度は、野菜残渣等の処理手法を絞り込み、「資源循環産業体系マスタープラン」の改定を進めてまいります。

一次産業と観光振興の融合~世界一の食の島へ~

 日本政府観光局の発表によれば、昨年の年間訪日外国人客数は、3,600万人を超え、過去最高を記録しました。来年度は、いよいよ大阪・関西万博が開幕します。令和9年度には、慶野松原を舞台に、ワールドマスターズゲームズ2027関西ビーチバレーボール大会が開催されます。また、兵庫・徳島両県の連携により進んでいる「大鳴門橋自転車道」も令和9年度の開通を目指しており、観光の起爆剤となる事業が今後も続きます。

 本市では、こうした動向も踏まえつつ、観光基盤を再構築すべく、県内有数の観光スポットとなったうずまちテラスや来年度完成予定の道の駅うずしおをはじめとする鳴門岬周辺の開発、通年営業となる灘黒岩水仙郷のリニューアルを進めてまいりました。加えて、古くは万葉集に詠まれ、瀬戸内随一の白砂青松を含む慶野松原エリアの大きなポテンシャルを活かし、民間活力による慶野松原荘の再生や旧神戸大学海洋実習施設の利活用をはじめ、地域住民の皆さまとも協力しつつ活性化を進めています。

 観光産業は、本市の資産を有効に活用できる成長力の高い産業です。その波及効果を最大化するため、観光政策を進めるに当たっては、次の3つの視点をもって進めてまいります。

 1点目は、淡路島全体、四国との連携など市域を越えた広域的取り組みです。

 万博の機会を活用し、淡路島の認知度向上と誘客につなげるために、淡路島3市・淡路県民局・観光協会・くにうみ協会などが連携し、万博催事に参加します。また、淡路島の多様な楽しみ方を形にして提供する、AWAJI島博と花みどりフェアを同時期に開催します。これに合わせ、イングランドの丘ではピーターラビット™フラワーガーデンを中心に多彩なイベントを実施します。

 関東方面や海外から来訪される多くの方にとって、四国と淡路島は一つのエリアです。本市は、30年来、鳴門市、東かがわ市とのASAトライアングル交流圏の枠組みによるサイクリング振興などのほか、鳴門市とともに、鳴門海峡の渦潮エリアのプロモーションを進めるなど、連携を強化してまいりました。本市に最も近い徳島空港では、韓国や台湾との直行便の運航も開始されました。オニオンバスの実証運行を継続し、観光やビジネス両面で同空港を淡路島とつなぐバス路線の可能性を追求してまいります。

 一方で、観光客の増大による渋滞等は、多くの観光拠点で課題となっており、先行的な対策が必要です。大鳴門橋周辺地域のオーバーツーリズム対策基本計画を踏まえ、高速バス停整備などによる公共交通シフトを進めるとともに、新設駐車場整備のため用地取得及び実施設計に着手します。

 2点目は、一次産業と観光振興との融合です。

 今や、どこにいても、世界・日本各地の食材を取り寄せ、口にすることは可能ですが、その土地の食材を、その地で食べてこそ、感じられる深い味わいがあります。豊かな食材を活かし、全島をあげて「食」を磨き上げ、世界中から来訪する人々に淡路島の恵みを堪能していただく「世界一の食の島」づくりは、淡路島の潜在力を大きく開花させます。

 まず、食の魅力が多くの人を惹きつけることにより、自然や歴史などの観光資源を活性化します。一方で、観光産業における食材の地産地消の拡大と、各地からの来訪者に認められることによる食材のブランド価値向上が相まって一次産業の収益力が向上します。この取り組みを本格化させる先導モデルとして、地域の皆さまと協力しつつ、空き家等を活用した「食の街区」形成を進めてまいります。兵庫県、神戸市とも連携を図り、神戸・淡路地域を美食のエリアとして世界に発信する方策も探ります。

 さらに、鳴門市と本市の事業者が連携して「うずの幸グルメ」や「カップイングルメ」の開発、地域の恵みの魅力を伝える「うずの幸マイスター」認定試験制度の導入を進めるほか、美菜恋来屋を拠点に活動する地域おこし協力隊の野菜の地産地消推進などにも引き続き取り組んでまいります。

 「海洋水産生物学科」が3年目を迎える吉備国際大学。入学予定者も増加し、地元漁協との連携協定や商工会でも大学連携が重点事業に位置付けられるなど、地域との連携が強化されつつあります。本市も、入学奨励金を継続するとともに、地元農産品を使った新商品開発や有害鳥獣のジビエ利用、研究活動支援などで後押ししてまいります。

 3点目は、観光における新たな価値観の創造です。

 「鳴門海峡の渦潮」の世界遺産登録活動は、SDGsの視点からも重要です。目指せ世界遺産を旗印に開催される「3海峡クリーンアップ大作戦」は、年々参加者が増加しています。関係者の皆さま、市民の皆さまのみならず観光で来られた方も参加され、環境保護活動を行う姿に敬意を表します。サルトストラウメン海峡の渦潮を育む、ノルウェー王国ボーダ市とも児童生徒を交えた文化交流を継続しつつ、兵庫・徳島の「鳴門の渦潮」世界遺産登録推進協議会を中心に、学術調査や普及啓発に努めるとともに、国際連携による登録申請の可能性も含め、前進させてまいります。

 万博に合わせて全県で取り組む、ひょうごフィールドパビリオンでは、沼島でのおのころクルーズや鳴門海峡の渦潮クルーズ、淡路人形座鑑賞やバックステージツアーなど12件がSDGs体験型地域プログラムとして認定されています。これらを更に磨き上げ、人が人を呼ぶ観光地として進化を目指します。

 6つの泉源がある南あわじ温泉郷も大きな魅力です。湯量確保のため、南あわじ温泉郷事業協同組合と連携し取り組んでおりました新泉源の開発事業がこのたび完了しました。新泉源を起爆剤にさらなる温泉郷のブランド力強化を図ってまいります。

地域商工業の活性化

 屋根材にとどまらない進化を続ける淡路瓦。創意工夫を凝らす生産者の皆さまに敬意を表します。淡路島手延そうめんも、地元イベントでのふるまいや都市部の物産展への参加などにより、独自ブランドとしての認知度を向上させています。これからも、地場産業の市場拡大や後継者育成を支援してまいります。

 「また、新しい店ができた!」そう思われる方も多いのではないでしょうか。商工会主催の創業塾の受講者数は令和2年に比較して令和6年度では3倍近くの約90名と見込まれ、本市での起業マインドは高まり続けています。創業塾の卒業生は、本市の産業活力アップ起業支援事業補助金が活用できます。産業の振興や新たな雇用にもつながる市内での起業を引き続き商工会と連携し支援してまいります。

担い手・後継者不足に対応する移住・定住政策の強化

 少子化が進む中、一次産業、観光産業をはじめ、あらゆる産業で担い手不足が深刻化し、担い手の移住・定住は一層求められています。

 本市の移住・定住政策は、主に4つの視点から取り組んでいます。

 第1は、福祉関連人材に対する一時金や家賃補助です。これを活用し、人材不足が顕著な介護・看護などの福祉・医療人材や保育人材などの移住も進んでいます。また、市内に設置されている看護専門学校入学者の支援も開始します。

 第2に、農畜水産業への新規就業の促進です。農業では、相談会等による就農希望者の掘り起こし、親元での就農や親方農業者への雇用支援を含めた受入体制の強化、水産業では、体験漁業による、新規就業者育成の支援などに取り組みます。

 第3は、働く若者への支援です。大学等の奨学金や教育貸付金の返済、移住者による起業、空き家や空き店舗の活用等を支援し、働く若者たちのUJIターンの促進を図ってまいります。

 第4は、移住者向けの住居確保施策です。

 本市の移住・定住施策を活用した移住者数は、平成29年度からこれまでの間に1,200人を超えました。また、移住フェア等でも、本市への関心の高まりを感じる一方、適当な住宅が見つからないなどの理由で、本市への移住を断念するというケースへの対応が求められています。活用可能な空き家の掘り起こしや空き家バンクへの登録を強化するとともに、空き家の社宅への改修や空き家を借り上げて移住者に転貸するサブリースへの支援など既存施策に加え、民間が整備する単身向け居住用賃貸住宅に対して補助金を交付し、ニーズに合った住宅の供給を促進してまいります。

関係人口増加への取り組み

 関係人口とは、域外に住みつつ、地域に対して特別なつながりや愛着を持って関わる人々を意味しています。関わりが深まると移住に繋がることもあります。本市では4つの取り組みにより関係人口の増加を進めています。

 1点目は、ふるさと納税などを活用した南あわじファンを増やす取り組みです。

 ふるさと納税による全国各地の皆さまからのご寄附は、ありがたいことに年々増えています。本市を応援いただいている温かい気持ちへの感謝とともに、返礼品を通じ、本市の特産物や観光資源などが、全国に知られ、また市内産業の活性化につながっていることも大変うれしく思います。

 引き続き、本制度の趣旨を厳守しつつ、着実な拡充に取り組み、特産物通販ECサイトもあわせて、南あわじファンの増大を目指します。

 南あわじを「志を果たしにいつか帰ってきたい」と思っていただける場所に。そう願いつつ、若者ふるさと応援便事業やふるさと同窓会応援事業を進めています。引き続き、運用改善を重ねつつ、本市を離れて奮闘する方々と「ふるさと」とのつながりを構築し続けてまいります。

 2点目は、シティプロモーションの強化です。民間人材を招聘し、広報の在り方を見直してまいりました。引き続き、確かな広報マインドを持つ職員を育成するとともに、市ホームページ、公式LINEなどSNSでの情報発信の充実やメディアへの露出度分析、広報の効果測定にも取り組み、本市のファンを拡大します。

 3点目は、遠隔地勤務等を活用した都市部からのビジネス誘致です。日常的になったテレワークやWeb会議は、二拠点居住、地方移住や職場移転を可能にしました。年間を通じて利用される市内3つのコワーキングスペースは、半数以上が県外からの利用者です。この利用が移住・定住、あるいは都市部の企業と市内事業者が結び付いた新産業創出のきっかけにもなっていくと考えています。

 4点目は、本市ゆかりの著名人による魅力発信です。元大相撲・幕内力士の照強様、阪神タイガースの村上頌樹選手に加え、今年度、新たにバイオリニストの益子侑様にもふるさと応援大使に就任いただきました。アーティストの清川あさみ様には、本市の地域魅力プロデューサーを務めていただいています。ご協力に厚くお礼申し上げます。

4.安全・安心のまちづくり

 第四の行動は、『安全・安心のまちづくり』です。

 気候変動に伴う豪雨、大型化する台風、地震などの自然災害に加え、「闇バイト」という言葉に象徴される特殊犯罪がクローズアップされています。

 どこにいても様々な危険にさらされる時代、だからこそ、「安全・安心に取り組むまち」は、市や地域の魅力となる。私はそう考えてきました。市民が防災、防犯に高い意識を共有し、一致団結してコミュニティ活動に取り組むまち、共助の精神を育むまちは、その温かさで住む人、訪れる人を惹きつけます。

防災力の強化

 阪神・淡路大震災から30年。1月に開催された追悼式典では、参加者が犠牲者に哀悼の誠をささげるとともに、自然災害への備えを怠りなくという誓いを新たにしました。

 「自助・共助・公助」という言葉があります。その順番に注目いただきたいと思います。大規模災害時、公助の到達には時間を要します。災害の被害防止・軽減の最大の鍵は、地域の防災力とそれを支える一人ひとりの防災力向上にある。それが、度重なる自然災害の教訓です。「自分の命は自分で守る」、「家族の命は家族で守る」、「地域の命は地域で守る」私たち自身が、ハザードマップの活用などで周囲の危険を把握し、備える。加えて、家族やコミュニティの中で、災害への備えや地域の安全について話し合う機会を持っていただければと思います。

 行政としては、次の3つを重点に、防災の取り組みに注力します。

 1点目は、災害発生、避難生活に備えた人的物的装備の強化です。

 能登半島地震では、避難生活における生活用水、とりわけトイレ確保の重要性がクローズアップされました。職員を派遣し、現地に貸し出していたトイレカーが、先日無事に役目を終え、本市に帰ってまいりました。この間、女性や妊婦、仮設トイレを使いづらい小さい子ども達からも感謝の声をいただき、その活躍ぶりが全国的なトイレカー導入の機運に繋がったことを大変心強く思います。相互支援のネットワークを拡大するとともに、本市でも2台目の導入を進めるなど、最新の技術動向等を捉えた発災時の備えに取り組みます。防災情報発信の要となる防災行政無線についても、新規格に対応した設備への更新を進めてまいります。

 地域防災の要であり、全国に誇る南あわじ市消防団。団員の皆さまのご尽力に心から敬意と感謝を表します。引き続き、消防車両をはじめ、備品の更新等による消防力の維持向上に努めるとともに、準中型自動車免許等、団員の資格取得費用の支援を含めた処遇改善に取り組みます。

 2点目は、総合防災訓練や地域自主防災組織の活動促進を通じた地域住民の備えの強化です。

 毎回、工夫と改善を重ねている市の総合防災訓練。メイン会場となる学校の児童生徒にも参加をお願いし、避難所の運営や防災啓発など役割を担っていただいています。心強い防災ジュニアリーダーの存在をはじめ、児童生徒自身の防災能力向上は、家族や近隣住民の意識喚起にもつながります。引き続き、参加者拡大、防災意識のさらなる浸透や地域の実践力向上に努めます。

 3点目は、防災に向けたハード面の整備です。

 福良港湾口防波堤、阿万本庄川水門などが、国・兵庫県のご尽力により完成しました。沼島の港口水門についても、着実に進捗しています。一方で、それら防災インフラの効果が最大限に発揮されるためには、住民がその機能や限界を理解し、防災訓練を積み重ねることが不可欠です。引き続きの取り組みをお願いいたします

 三原川流域等の低地対策にもたゆまず取り組みます。志知川や志知排水機場の設備更新事業に引き続き取り組むほか、県が進める大日川改修事業に協力してまいります。また、県の高潮対策事業と連携した福良浜町エリアの内水排水ポンプ設置工事、阿那賀地区、湊地区の内水対策の検討を進めます。土地改良施設である百間堀や塩屋の排水機場の改修、阿万下町排水機場の除塵機更新に向けた計画策定などにも取り組んでまいります。

道路・河川の環境改善と通学路の安全対策

 道路や河川、橋梁をはじめ、老朽化する社会インフラの維持管理や修繕は、全国的な課題です。自治会等からは道路・河川の修繕などの要望が毎年多数寄せられます。

 これに対し、道路については、傷みの程度や通行量等、河川については、土砂蓄積状況等から優先順位をつけ、緊急性に基づき修繕や浚渫、樹木の伐倒除去等に取り組んでまいりました。加えて、令和5年度、市道法面の草刈や側溝の清掃等にかかる自治会作業への助成制度を開始し、徐々に利用が増えてきました。来年度はその枠組みを試行的に市道、水路の小規模な修繕工事まで拡充します。自治会との協働により、簡易なインフラ補修等をきめこまかに実施する一方、市は基幹インフラの迅速な対応に重点化することが狙いです。私は、公共施設は、市民、地域と行政との協働により維持管理すべきものと考えています。自治会長をはじめ、市民の皆さまのご理解・ご協力をお願いします。

 子どもたちが日々使用する通学路の安全確保も重要な課題です。グリーンベルトや区画線の整備に重点をおき、学校から概ね500メートルの区間での取り組みに加え、市小学校周辺では、区域を定めて時速30キロの速度制限を行うゾーン30の整備も実施しました。引き続き、子ども達の安全向上に取り組みます。

人権啓発と犯罪防止

 すべての人々の人権が尊重され、相互に共存する豊かな地域社会の実現を目指し、人権啓発に引き続き取り組んでまいります。人権侵害の抑止を図るため、インターネット上の差別的な書き込み等のモニタリングを継続し、差別事象や人権相談などには、弁護士をはじめ有識者等で構成する人権相談等行動連携会議で共有し、適切に対応してまいります。

 インターネットの普及もあり巧妙化する悪質商法などによる消費者被害。消費生活センターに消費生活相談員を配置し、消費者トラブルの相談や解決に向けた支援を行うとともに、高齢者や小・中・高校・大学生などを対象に出前講座を実施し、普及啓発に努めます。

 本市においても、特殊犯罪被害件数は増加傾向にあり、また、交通事故件数もコロナ禍の終了とともに増加しています。

 引き続き、より安全・安心なまちづくりに向けて、地域、警察、行政がタッグを組んで、防犯の警戒や交通安全啓発を強化するとともに、地域の防犯カメラの設置や高齢者向けの防犯機能付き電話機購入を支援するなど、犯罪機会を抑制し、犯罪を予防する環境づくりに力を注ぎます。

公衆衛生を支える環境整備

 南あわじ斎場「桜花の郷」。関連する施設整備含め、多くの方々のご理解とご協力をいただき運用も順調です。深く感謝申し上げます。引き続き、人生の最期を厳粛に送り出す場に相応(ふさわ)しい運営に努めてまいります。

 また、更なるごみ減量化に向けて、生ごみ処理器の普及や雑紙の回収に加え、新たに、製品プラスチックの分別収集資源化や木製粗大ごみのチップ化などに取り組みます。

 広域可燃ごみ処理場の建設が進んでいます。2月には、契約締結式が行われました。ゴミ処理で発生する熱によって発電し、必要な電力を賄い、余剰分は売電する、環境に配慮したエネルギー回収型廃棄物処理施設となります。さらに、強固な災害対策、地場産の淡路瓦を内外装に使用するほか、環境学習設備など市民に親しまれる施設を目指します。施設の建設を進めるにあたりまして、地元の皆さまのご理解とご協力に厚くお礼申し上げます。

 下水道事業では、経営戦略に基づき、さらなる経営の合理化と、計画的かつ効率的な維持管理を実施していくとともに、下水道の事業区域外では、合併浄化槽設置補助金を継続し、生活排水の適正な処理を支援してまいります。

 5.「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり

 第五の行動は『「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり』です。

 「対話と行動」は、南あわじ市の行政全体の基本原則と考えています。その徹底のため、次の3つの視点から取り組みます。

住民・各種団体との対話の強化

 1つ目は、市民と行政が、現場の実態を踏まえ深く対話する機会が確保されることです。

 これまでに開催してきた「地域との対話」に加え、定期的に開催している、商工会や農協、社会福祉協議会との早朝懇談会や市内各種団体との「分野別対話の場」も継続して順次開催しています。

 また、コロナ対策やフレイル予防においては、医師会、歯科医師会をはじめ、医療・福祉関係の皆さまとの密接な連携が大きな力を発揮しています。

 対話を通じて、課題の共有や取組の方向性の統一、更には、協力体制の構築が図られ、時々の情勢に対応した施策の立案や対策の円滑な実施に多いに役立っています。

 関係者の皆さまに感謝申し上げますとともに、本市の強みとして大切にしてまいりたいと思います。

 良い対話が継続するためには、市役所の施策の目的、成果などが、市民や団体の皆さまに広く且つ適時的確に周知され、理解され、更には活用されることが必要です。近年は、情報メディアが多様化し、単独のメディアのみで全ての人に情報を届けることが難しくなっています。ホームページやSNS、ケーブルテレビや広報紙など市の持つあらゆるメディアを総動員した情報発信に取り組みます。施策を立案し施行するのみならず、その目的や内容を市民の皆さまにわかりやすくお届けし、活用いただき成果を上げるまでを一連としてやり抜く広報マインドを全職員に徹底してまいります。

地域コミュニティ力の維持・再強化

​ 2つ目は、市民の皆さま同士が円滑に意見交換し、協働できる地域コミュニティが確保されていることです。

 「地域づくりチャレンジ事業」は、各地区が抱える様々な課題解決への自主的な取り組みを支援する事業で、既に10地区11事業が認定され、取り組まれています。自治会への加入促進や若者をはじめ新たな地域の担い手による地域活動への支援に加え、令和7年度からは、地域づくり協議会に対し、次世代の担い手となる若者層が活躍できる場を設定した場合に地域づくり交付金を増額するなど、将来も睨んだ地域づくり協議会や自治会の組織・活動強化を支援してまいります。一方、高齢者の方々の交流機会の拡大、利便性の向上に役立つスマホ利活用の相談窓口を引き続き運営するとともに、老人クラブの組織活性化に向けた対話を進めます。

最強の市役所を目指す人材育成・組織開発

 3つ目は、市民の皆さまとの対話を踏まえて施策を企画立案し、協働して実行できる市役所職員の育成です。

 「最強の市役所を目指す」と、私は1期目の就任初日から言い続けてきました。目指すその姿は、第1に、市民や各種団体、企業等との幅広い対話を通じ、市民生活・産業活動の現状や課題を的確に把握し、第2に、専門的な知見を駆使して効果的な課題解決のための施策を企画立案し、第3に、その施策を梃子(てこ)に市民の皆さまと将来の姿を共有し、円滑な連携のもと市民の皆さまとともにその姿を実現していく組織です。本市独自の「目標管理制度」では、市全体の目標と一致させた部署ごとの目標を設定し、定期的に進捗を確認しながら、必要な修正を繰り返し、常時仕事の進め方を改善する仕組みを導入しています。また、人事評価もその制度と整合性をとって運用しています。

 その着実な推進のため、市長が率いるプロジェクトチームを組織し、人材・組織開発室を中心に2点の視点から人材育成と組織開発を進めています。

 1点目は、絶え間ない業務改革による、仕事の進め方の見直しやデジタル技術の取り込みです。現在、人工知能の導入等による業務効率化や職員満足度の向上、職員の健康確保、職務能力の可視化など、担当課を決めて10の課題に取り組んでいます。

 それにより、市役所業務の効率化・迅速化を進め、そこから生み出される職員の時間・労力の余裕を対人業務や行政課題の発掘、環境変化への対応などの充実に充てるとともに、子育てや介護、自己研鑽と両立できる働き方の実現を目指してまいります。

 マイナンバーカードを活用しコンビニなどで住民票などを発行する枚数は右肩上がりです。既に5割程度がその仕組みで発行されるなど、マイナンバーカードと暗証番号を登録し利用する電子証明書は、行政のデジタル化に不可欠な基盤です。カードの交付率は90%、4万枚を超えましたが、更なる普及促進のため、未交付の方への訪問申請の取り組みなどを進めます。

 行政手続きのオンライン化が進むにしたがって、より重要になってくるのが情報セキュリティです。市の情報セキュリティポリシーや個人情報安全管理措置などを厳守し、国が推進する行政システム標準・共通化や行政サービスのオンライン化などに対応すべく全庁的な取り組みを進めます。

 2点目は、組織における情報共有の徹底と部門間連携の強化です。益々、複雑・複合化する行政現場の課題は、これまでの縦割り行政の姿では、解決していくことが困難になりつつあります。観光政策一つとっても、高度な施設整備、自治会をはじめ地域との協働、移住やシニア活用等の労働力確保、交通手段の考慮など市役所全体の政策調整が必要となります。一次産業や福祉分野の人材確保も、人を呼び込む補助金の創設のみならず、住宅施策や子育て・教育施策等と連携して総合的な政策とする必要があります。市役所内部の組織においても、横の連携を任務とする組織を設置するなど、連携のための基盤を構築してきました。新年度においては、新たに市有施設及び跡地等の有効利用を検討・実施する部署を設置し、積極的利活用を図ります。

 以上の取り組みを一層着実なものとするため、新年度より副市長を二人とし、適切な役割分担のもと、円滑に関係部門が連携し市民の皆さまと対話・協働する体制と組織文化の構築を進めてまいります。

【令和7年度 歳入歳出予算】

 令和7年度予算の提案にあたり、市政運営、主要事業についての方針をお示しいたしました。世界情勢の変動や地球温暖化に伴う自然災害の脅威のみならず、5類に位置付けられたとはいえ、新型コロナウイルス感染症も未だ拡大と縮小を繰り返しています。こうした多くの不透明な要因に加え、厳しい財政状況は今後も続きます。少子高齢社会克服のモデルとなるまちを目指し、重点化と継続性にも配慮しつつ、全世代が活躍する魅力あるまちづくりに向けた「人と地域の可能性を伸ばす成長予算」とした編成の結果、令和7年度歳入歳出予算は、一般会計「329億7,000万円」(前年比 +6.3%)となり、当初予算では過去最高規模となりました。

 また、特別会計「123億5,593万8千円」(前年比 ―0.6%)、企業会計「63億1,507万9千円」(前年比 +5.9%)で、合計「516億4,101万7千円」(前年比 +4.5%)となっています。

【結びに】

 「共に歩み、共に創る」この大きな変化の時代を乗り切っていくため、行政が施策に取り組んでいくにあたっては、市民の皆さま、議会の皆さまとの信頼関係のもと、進めていくことが必須です。出会う人との関わりや各分野の方々から意見をいただくその時々も一期一会です。仕事に臨むその時々を大切にし、これからも謙虚な姿勢で進んでまいります。

 早いもので、市長就任から9年目。3期目の負託をいただきました。これからの20年、30年先に向かうための大きな布石となるよう、心を引き締め、職員とともに、令和7年度の施政運営にあたります。

 議員各位におかれましては、何卒ご理解賜り、慎重審議のうえ、適切なるご決定をいただきますようお願い申し上げ、私の施政に臨む方針といたします。

  令和7年2月21日

南あわじ市長  守 本 憲 弘   

 

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