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平成30年度施政方針

印刷用ページを表示する更新日:2018年3月1日更新 <外部リンク>

平成30年度施政方針 [PDFファイル/343KB]

目次

  • 時代認識と市政理念
    • 超高齢化社会の克服
    • 子育て環境の向上と教育の充実
    • 地域の資源を活かした地元産業の活性化
      • 農林水産業の振興
      • 観光産業の振興
      • 商工業の振興
    • 安心・安全なまちづくり
    • 「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり
  • 平成30年度 歳入歳出予算
  • 結びに

 第77回南あわじ市議会定例会の開会にあたり、議員各位のご健勝をお喜び申しあげ、日頃のご精励ご活躍に対し敬意と感謝の意を表します。

時代認識と市政理念

 昨年、市民の皆様の信託を得て南あわじ市長に就任し、この1年余りの間、南あわじ市政の舵取りを行ってまいりました。

 この間は、まさに「発見と出会いの一年」でありました。市内の各方面において、時代を先導する取り組みをされている方が多くいらっしゃることを発見し、大変心強く感じた次第であります。

 文化的な面に目を向ければ、鳴門海峡の渦潮を世界遺産にという取り組みは、徐々に人々の心を揺り動かしつつあり、だんじり唄は地域の方々に脈々と受け継がれています。国生み神話も島民上げての努力で日本遺産となり、さらに普及の度を強めています。また、淡路島が生んだ偉人たちをもっと表舞台にという動きも強まっています。

 産業、福祉、地域コミュニティ、それぞれの分野に、新たな時代を拓こうと全力で取り組んでおられる方々の姿が思い浮かびます。

 全国的に人口減少や東京一極集中が進み日本の将来への不安が高まりつつも、一方で、地域の持つ魅力や可能性にかつてない関心が向けられています。私は、こうした兆しを確固たるものとし、地域から日本を元気にしていく必要があると考えております。自らの地域をより良いものにしようと取り組んでおられる皆様と手を携え、南あわじらしさを最大限に活かして、それぞれが望む生き方、働き方を実現できるこれからの時代にふさわしい新しい地域社会の構築に向けて、地域創生に挑んでまいる所存であります。

 国では、アベノミクスの「新三本の矢」、すなわち「希望を生み出す強い経済、夢をつむぐ子育て支援、安心につながる社会保障」を掲げ、一億総活躍社会の実現に向けて、成長と分配の好循環の実現に取り組んでいます。

 また、経済の先行きについては、緩やかに回復していくことが期待されており、海外経済の不確実性や、金融資本市場の変動の影響等に留意する必要があるものの、国内では名目GDPが過去最高となり、実質GDPもプラス成長を続け、企業収益が過去最高の水準となりました。また、全国の就業者数は185万人増加し、有効求人倍率は史上初めて47都道府県で1倍を超え、20年近く苦しんできたデフレからの脱却に向けた道のりを前進しています。その結果、産業、福祉、教育などあらゆる分野において担い手の不足が顕在化しつつあります。

 また、兵庫県では、県政150周年という大きな節目を迎えました。明治維新に始まる激動の150年を経て、今、人口の減少と少子高齢化という大きな構造変化が進んでいます。未来は、待つものではなく、自ら創り出すものであるとの考えの下、少子高齢化等に適応しながら、新たな価値観や多様な生き方・働き方によって活力を保ち続ける地域を創る「地域創生」の取り組みが本格化しています。

 これらの動きは、すべての市民の活躍に焦点を当てて行政運営を進める本市にとっての追い風であると考えております。国・県の取り組みと歩調を合わせつつ、「南あわじ創生」の実現にまい進してまいります。

 それでは、本市の平成30年度予算案を提案するにあたり、市政運営・経営に取り組む基本的な考え方、主要事業等について私の政策の柱である「5つの行動」に基づいて説明いたします。

超高齢化社会の克服

仕事・社会貢献の継続による健康寿命の伸長

 まず、第一の行動である『仕事・社会貢献活動の継続による健康寿命の伸長』について申し述べます。

 本市が抱えている最大の課題は、急激な人口減少と超高齢化社会への対応です。平成27年の国勢調査では、高齢化率が33.5%と3人に1人が65 歳以上となり、「支える人」と「支えられる人」のバランスの悪化が懸念されています。

 この課題を克服するためには、シニア世代の皆様方に、できるだけ社会を支える側に立ち続けていただき、また、社会参加による生きがいや喜びを通じて健康を保ち続けていただくことが必要です。

 一方で、本市の65 歳以上の就業率は全国平均や兵庫県平均と比べ約2倍と高く、また女性の就業率も全国平均や兵庫県平均よりも約10%高い状況にあります。本市は他地域に比べ課題解決への素地がある地域、言い換えれば「一億総活躍社会に最も近いまち」と言うことができます。

 そのため、市民による主体的な地域活動や就業機会の創出を図るなど、シニア世代等の活躍の場を拡大し、健康保持による医療・介護費用の低減や地域の人手不足の解消を図ることを目的として、「高齢者等元気活躍推進事業」を最重要施策に掲げているところです。

 平成29年度は、その事業の仕組みと進め方を検討してまいりました。平成30年度は、実際にいくつかのモデル事業を実施してまいります。例えば、福祉施設において高齢者の方の配膳やベッドメイキングなど、高齢者に直接触れない場面でこれまで介護士が行っていた仕事をシニアの方々に担っていただきます。また、保育施設では、施設の日々の環境整備や読み聞かせなどによって、保育士でなくともできる部分を担っていただく予定です。併せて、これらの活動の潤滑剤として、ポイント
を付与し、管理するシステムを構築してまいります。このモデル事業の実施を通して、シニアのボランティア活動のすそ野を広げるとともに、シルバー人材センターをはじめとするシニアの就労の分野の多様化や参加者の拡大の仕組みを構築いたします。

 健康寿命の延伸のためには、意識的な健康づくりへの取組も重要です。

 老人クラブによる健康増進活動等を支援するとともに、いきいき百歳体操を通じて高齢者の体力づくりを推進します。今年度開始された賀集地区のチャレンジ事業である病院と連携した健康づくり事業には、先導的モデルとしての役割を期待しています。

 一方で、支援・介護が必要な方々が良質のケアを受けることができる体制づくりも重要です。

 高齢者福祉関連施設等整備事業「福祉の里」の施設整備を着実に推進するとともに、第7期老人福祉計画及び介護保険事業計画に基づき本格的に「地域包括ケアシステム」の構築を進め、高齢者の尊厳の保持と自立生活を支援します。加えて、広域化して運営される国民健康保険をはじめ、後期高齢者医療や介護保険事業などの適正運営に努めてまいります。

 健康づくりは、全世代を通じた地域社会の課題でもあります。

 少子高齢化や疾病構造の変化とともに、健康に対する市民の意識は多様化し、きめ細かな健康づくり施策が求められています。まちぐるみ健診の受診率向上を図るとともに、特定健康診査を支援して生活習慣病等の早期発見や重症化防止と生活改善に取り組んでまいります。

 予防接種事業では乳幼児における急性胃腸炎の主な原因であるロタウィルスの予防接種をあらたに行政措置予防接種に加え、各種予防接種によって市民の健康増進を図ります。さらに休日応急診療や病院輪番制時間外診療、休日・夜間小児救急体制を引き続き堅持してまいります。

 自殺対策基本法の改正を受け、自殺予防対策計画を策定し、自殺に追い込まれることのない社会の実現をめざします。

 また、第3次障害者計画及び第5期障害福祉計画・第1期障害児福祉計画に基づき、障がい者及び障がい児の支援に取り組みます。特に障がい者支援においては、「はたらく応援隊」を立ち上げ、その特性に応じた働き方や働く場を探す仕組みをつくるとともに、民生委員児童委員協議会の見守り活動も、引き続き支援してまいります。

子育て環境の向上と教育の充実

  第二の行動は、『子育て環境の向上と教育の充実』です。

 この二つは、今や人口減に悩む自治体の最重要課題となっています。若者・子育て世代の定着や移住の鍵は、魅力的な雇用機会に加え、そこで子育てをしたいと思える保育・教育環境が整備されているかどうかです。

 ゆめるんをシンボルとする少子対策は本市の看板施策の一つとして定着し、平成27年国勢調査による合計特殊出生率は1.83と県内トップとなっています。この大きな要因は全国に先駆けて保育料の無償化を実現し、様々な子育て施策を推進したからにほかなりません。いよいよ国でも無償化の方針が打ち出されました。その動きを注視しつつ、子育てにやさしいまちづくりに努めます。

 一方で、三歳未満児の保育所への入所希望の急増により、平成30年度は待機児童の発生が予想されています。その改善を図るため、平成32年4月の供用開始をめざし、市(いち)保育所の改築を進めます。また、広田保育園の移転用地を確保し、幼保連携型認定こども園の設置を推進するとともに、機動的な運営のため、公立保育所の民間法人への移管も検討してまいります。加えて、保育士の確保も急務です。日本全体で保育士が不足し、各自治体が保育士確保に知恵を絞っています。本市においても二つの事業を開始いたします。一つ目は、島外から市内に転入し就職した保育士に就労支援一時金を支給いたします。二つ目はその対象者の民間賃貸住宅の借り上げ等に要する経費について月額最大5万円の家賃補助を実施します。

 あわせて在宅子育て支援の充実についても検討するとともに、乳児家庭全戸訪問や中学3年生までの入院・通院費無料化など、すべての子どもと保護者への切れ目ない施策を継続します。

 義務教育段階での魅力ある教育環境づくりも重要です。中学生による防災研修会への参加や東日本大震災被災地への派遣等を通して、防災ジュニアリーダーの養成に取り組み、人間としての生き方・あり方を考える防災教育の推進に努めます。また、淡路人形浄瑠璃等を活用し、コミュニケーション能力や表現力を養う本市ならではの授業プランを作成します。こうした手触り感のある教育を通じて知識を蓄積するだけではなく、知識を消化し、行動方針を企画し、人に伝え、人を動かしていく、社会人基礎力の養成を進めます。

 また、市内小中学校に顕微鏡や天体望遠鏡などを整備し、探究する心の育成に努めます。

 放課後児童健全育成事業においては、市(いち)小学校区の学童保育所を新築し、学童保育の環境改善を進めるとともに、放課後子ども教室、土曜チャレンジ学習事業、学校支援地域本部事業を通して、学校・家庭・地域が一体となって次世代を担う子どもたちの成長を支えていく活動を推進します。また、小中学校における「夢プロジェクト」を継続しつつ、あらたに「プロから学ぶ創造力養成事業」を実施し、スポーツ・文化の魅力や楽しさ、努力する大切さを学ぶ機会を充実します。

 子ども達の健康確保も重要です。学校給食の完全米飯化や地場産食材の利用拡大を通じた食育を実施するとともに、小学生を対象に「早寝、早起き、朝ご飯、朝トイレ」等の生活習慣改善を通じた健康づくりを推進します。

 施設面での環境整備も進めます。倭文小学校、神代小学校ほかの空調設備設置工事を実施し、賀集小学校校舎の長寿命化を視野にいれた耐力度調査を行うとともに、南淡中学校におけるプールの改修、屋内運動場の卓球場吊り天井改修工事の実施設計に着手します。また、津井幼稚園園舎の大規模改造工事及び旧丸山幼稚園の園舎の解体を進めます。

 教育施設の再編につきましては、児童生徒のことを第一に考えた教育環境の向上を旨として、引き続き丁寧な情報提供を行いつつ適正に取り組んでまいります。

 すべての子どもに適切な教育環境を提供するため、就学援助対策や遠距離通学者に対するスクールバスの確保、離島高校生の就学支援を継続します。また沼島地区において、小中学校一貫教育などの柔軟かつ特色ある教育システムの導入について検討してまいります。

 近年、家庭や地域、そして社会の変容により、子供の教育において学校の担う役割が拡大し続け、教員の負担が増加しています。校務支援システムの導入により、業務の効率化及び教職員の資質向上の両立を図り、先生方が子どもたちと、より長く、より深く向き合うことができる環境を作り出します。

 地域への移住定住の促進のためには、子育て環境の充実と平行して、移住者ニーズに対して柔軟かつ丁寧な対応が求められています。このため、移住定住に関する相談窓口を一本化しつつ、転入者の住宅支援、新婚世帯家賃補助、通勤通学費補助を継続するとともに、縁結び事業や空き家の活用等を拡充し、より効果的な施策の構築を進めます。

 本市には郷土の誇りが数多く存在します。淡路人形浄瑠璃は最大の宝の一つです。淡路人形座では、一昨年12月に永眠された鶴沢友路師匠の遺志を引き継ぎ、座員たちが切磋琢磨しながら技芸の研鑽に励んでいます。本市としても、座員たちの情熱を活かして淡路人形座の知名度・集客の拡大を後押しすべく、淡路人形協会を支援するとともに、人形浄瑠璃資料館も活用し、国指定重要無形民俗文化財である淡路人形浄瑠璃の保存伝承を進めてまいります。

 また、市民の多様な文化・学習・交流活動を支える公民館について、湊地区公民館の大規模改修、広田地区及び福良地区公民館の耐震補強・大規模改修を推進するとともに、各地区公民館を拠点とした講座やサークル活動を支援してまいります。

 数十年に一度の大発見であった松帆銅鐸については、徐々に知名度も向上し、淡路島牛乳を使った「松帆銅鐸ミルクチョコ」など関連商品が開発され、各方面で事業化の兆しも見られます。引き続き国や県と連携して科学的分析調査を継続するとともに、松帆銅鐸を保存展示する設備の実施設計に着手します。淡路島日本遺産とあわせて、郷土愛を醸成すべく文化財の魅力を体験できる事業を推進してまいります。

地域の資源を活かした地元産業の活性化

 第三の行動は、『地域の資源を活かした地元産業の活性化』です。食、自然、歴史、淡路島はこの三つを兼ね備える、日本でも屈指の地域資源に恵まれた地域であると感じます。現在、淡路島の最大の吸引力の源は、豊かな食産業です。農・畜・水産業は食料自給率100%をはるかに超える生産力を誇るとともに、淡路島たまねぎ、淡路ビーフ、淡路島3年とらふぐなど、それぞれの分野で対外的なブランド力を持つ強力な産品が育ちつつあります。

 自然という面では、勇ましい鳴門の渦潮をはじめとして、美しく変化に富んだ海岸線、のどかな田園風景、めずらしい動植物、良質な温泉など、小さいながらも多様で身近に楽しめる自然がふんだんにあります。

 歴史に関しては、現存する世界最古の統一国家である日本の、さらにはじまりの島であるという希有のストーリー性を有する場所であり、銅鐸、鉄器、御食国と続き、数々の寺社、源平合戦、人形浄瑠璃、さらには近代の歴史に残る偉人の輩出という、掘り出せば無限とも言える歴史資産に溢れた地域です。

 この資産を、皆が大切に思い、磨き上げ、効果的に発信することが出来れば、国内・国際観光は言うに及ばず、産業の様々な分野に大きな波及効果を生むことができると確信しています。

 私は、淡路島を一つの地域と考え施策に取り組むことで、より効果が上がる分野が多いと考えています。そうしたことから、懸案となっていた淡路島定住自立圏構想に南あわじ市が参加することを決断いたしました。数々の行政分野の中でも、とりわけ、観光をはじめとする地域資源のブランド化等産業行政に関しては、淡路島が一体となって取り組むことが不可欠と考えています。既に、観光分野、交通分野では、淡路三市と県民局が協力した計画づくりも進みつつありますが、今後、さらに一体的な産業行政を実現すべく、仕組み作りを働きかけてまいる所存です。

 続いて、個別の産業分野についての取り組みについて申しあげます。

農林水産業の振興

 南あわじ市の農業は、高い生産性が強みですが、経営の安定と後継者の確保が大きな課題となっています。農業協同組合等とも連携しつつ、これらの課題克服に取り組んでまいります。

 将来に向けた担い手確保については、「集落の未来設計図」策定支援事業によって、地域の話し合いを後押しし、人・農地プランの策定を支援するほか、新規就農者の確保を円滑に行える仕組みづくりとして、親方農家の下での実践的な研修制度を推進し、就農時の住居や倉庫、ほ場などをマッチングするとともに、経営感覚に優れた若い担い手の育成を推進してまいります。

 また、農林水産業の重要な担い手として女性の活躍は欠かせません。「農業女子グループ」への活動支援を継続し、女性を含めた若手農業者の経営マインドの醸成を図り、地域農業の発展と担い手確保をめざします。

 担い手の問題は、農家の経営の安定と表裏一体です。従来の農業共済制度で対応できなかった農作物の価格変動等による農業収入の減を補てんする収入保険制度を導入し、平成31年1月の制度開始に向け、推進活動及び加入手続きに向けた準備を進め、総合的なセーフティネットを構築します。

 多面的機能支払事業において、農道、水路、農用地を守り維持することに努めるとともに、 ドローンを活用した農作物作柄や病害調査等に取り組み、効率的な事業実施とドローン産業の育成を推進いたします。

 約40年間続いた減反政策が大きく見直されます。需要見通し等適切な情報提供と新規需要米の作付け拡大により、本市の特色に合わせた混乱のない移行を進めます。

 畜産業では、淡路島牛乳株式会社など畜産関係団体によって構成される南あわじ市畜産クラスター協議会による新しい取り組みを支援します。淡路島牧場の牛舎新築及び先進的な搾乳ロボットの導入による省力化・低コスト化に取り組み、地域ぐるみで「淡路島牛乳」ブランドの確立に取り組みます。

 また、農業の基盤整備による生産効率向上は、産地の維持と経営の改善に不可欠です。平成30年度に完了見込である湊里地区に加え、新田(しんでん)地区、国衙(こくが)地区、養宜(ようぎ)地区ほかの大規模な県営ほ場整備事業を推進します。八幡北(やはたきた)地区においては、県内で先陣を切って、農地中間管理機構関連農地整備事業を活用した新方式のほ場整備を実施します。ため池については、北谷(きただに)池や高畠(たかはた)池の改修工事を着実に進めるとともに、白木谷(しらきだに)池や椿谷(つばきだに)池の実施設計に着手します。あらたに、雨水貯留容量を常時確保するための取り組みを支援します。また、ため池の堤体の補強盛土に泥土を再利用する新技術工法であるボンテラン工法に平成29年度から取り組んでおり、モデル事業により新技術の検証及び普及啓発を行ってまいります。

 オニオン道路の整備を推進し、地籍調査では引き続き倭文長田地区、慶野地区等において一筆調査を実施します。

 有害鳥獣被害は農業生産において深刻な問題です。引き続き侵入防止柵の設置や猟友会と連携した有害鳥獣の捕獲を重点的に行うとともに、狩猟免許取得への支援を行います。

 漁業・水産業においては、魚価の低迷、後継者難、栄養塩不足による漁獲量の低下等に直面しています。こうした課題を克服すべく、漁業協同組合等と協力し、育てる漁業、付加価値の高い漁業に向けた取り組みを推進します。

 近年、淡路島3年とらふぐがブランドとして確立しつつあります。これに加え、淡路島サクラマス養殖やワカメ養殖の取り組みも支援してまいります。あらたに食料産業・6次産業化交付金事業として淡路島3年とらふぐなどの養殖魚を用いた新商品開発、販路拡大ならびに地産地消の取り組みを推進します。

 一方、天然物については、並型魚礁及び築いそ整備を行うとともに、産卵用蛸壺やアオリイカ産卵床の設置、タイ・ヒラメ・オニオコゼ・キジハタ等の種苗の中間育成や放流事業に取り組みます。

 インフラ老朽化対策として、引き続き漁港施設を適正に維持管理していくとともに、突堤や護岸などの海岸保全施設を計画的に維持管理していくための計画をあらたに策定します。

 一次産業の生産力は、自然や生命の循環を活かしたエコシステムと密接不可分の関係にあります。

 その好事例が、三毛作農業と畜産業の相互補完による発展です。この何世代にもわたり形づくられてきた耕畜連携の伝統について、農林水産省が認定する日本農業遺産とすべく取り組み、三毛作農業のブランド化を図るとともに、この伝統を次世代へ引き継いでまいります。

 私は、こうした先人の知恵と努力に学びながら、より大きな仕組みで、一次産業全体の長期的発展の基盤を構築する必要を強く感じています。それぞれの分野が抱える課題を同時に解決していくためには、海・山・里のつながりを取り戻し、自然の力を借りながらそれぞれの産業が補完し合って潤っていく、いわば資源循環の仕組みを再構築していくことが必要です。例えば、山林を整備すれば、鳥獣の居場所を作り、里に押し出されて農作物に害を与える被害を軽減したり、腐葉土の再生により、洪水の低減や海への栄養の供給を進めることが可能となります。また、「かいぼり」は、農業と漁業が共に利益を享受する好事例ですが、さらに、農業用河川の浚渫土を、ほ場整備や海の藻場作りに使うことも考えられます。今般立ち上げた政策検討委員会において、こうした自然の資源循環を再生する方策を、外部の識者も交えつつ検討してまいります。

 一次産業のブランド化の推進や諸課題の解決にあたり、大学をはじめとする外部の知見や能力との連携は大きな意味があります。平成25年に開学した吉備国際大学は、本年4月に「醸造学科」が新設され、地域創成農学科との2学科体制となります。これまでも、地域産品のブランド化、有害鳥獣対策との連携によるジビエ料理の研究、かいぼり事業などに取り組んでこられていますが、今年度は、本市との連携を前提とした研究・教育計画が文部科学省の「私立大学ブランディング事業」に採択されました。大学と地域産業との連携による産地課題の解決や6次産業化の取り組みは、教授の研究を深める場、学生の学びの場ともなるとともに、将来の担い手育成の場ともなり得るものであり、我がまちの大学として引き続き支援してまいります。

 加えて、一次産業を巡る幅広い課題に対応するため、東京農業大学とあわじ島農業協同組合との三者による解決策の検討も進めます。

観光産業の振興

 つぎに、観光振興について申し述べます。淡路島を訪れる観光客数は約1300万人前後で推移しているところであり、その多くは近畿圏をはじめとした比較的近場からの日帰り旅行客が占めています。

 観光産業のさらなる発展のためには、首都圏をはじめとする国内遠方からの旅行客とインバウンド・外国人旅行客をいかにして受け入れるかということが課題であり、その取り組みの鍵は、行政や観光協会を含め、淡路島が一体となって行う効果的な広報と、交通網をはじめとする受け入れ態勢の整備であると考えます。

 オール淡路島で取り組んでいるコンテンツは増えつつあります。その一つ、鳴門の渦潮の世界遺産登録に向けては、兵庫・徳島「鳴門の渦潮」世界遺産登録推進協議会による学術調査、普及啓発及び情報発信を行います。

 また、平成28年4月に日本遺産に認定された「国生みの島・淡路」については、スマートフォン用ロールプレイングゲームを開発し、伝統・文化等の魅力発信を行い、誘客促進を図る淡路島日本遺産委員会の取り組みを支援します。

 現在、玉青館では、『淡路島のブロンズ展』と題し、松帆銅鐸に加えて淡路市舟木遺跡の中国鏡「鈕(ちゅう)」なども時代別に展示しており、また、銅鐸復元品を島内各種イベント等に貸し出し、観光客の皆様にも淡路島の歴史に思いを馳せていただくよう努めています。

 引き続き、兵庫県と淡路三市が連携して策定する淡路島総合観光戦略の方向に従って、淡路島全体を俯瞰した施策を推進してまいります。

 もう一つの鍵である交通網の強化についても、兵庫県と淡路三市が策定を進めている「淡路島地域公共交通網形成計画」の実現を進めてまいります。まず、観光の交通拠点として、陸の港西淡の改修と隣接するASAサイクルステーションの整備が本年3月末に完了します。高速バスの切符販売に加えて、あらたに観光案内や特産品の販売、レンタサイクルを行い、本市の玄関口としての機能を強化いたします。

 また、らん・らんバスについては、市民や観光客の誰もが利用しやすい地域公共交通とするべく再編を実施します。商業施設や病院など生活関連施設への移動ニーズに対する利便性の向上を図るとともに、市内の観光拠点である、淡路ファームパークイングランドの丘、美菜恋来屋、大鳴門橋記念館、淡路人形座、なないろ館、灘黒岩水仙郷などへの集客拡大につながる交通体系とすることをめざします。

 それぞれの拠点の強化にも努めてまいります。国民宿舎慶野松原荘は、本年4月から指定管理者制度を導入しリニューアルオープンいたします。民間事業者ならではのノウハウを活用し、地域と連携した経営を期待しております。大鳴門橋記念館については、レストラン施設を改修いたします。

 商工業の振興

 つぎに商工業及び地場産業の振興について申し述べます。

 淡路手延素麺や瓦といった地場産業の販売力強化は喫緊の課題です。

 首都圏など都市部に、淡路手延素麺をはじめとする地場産品流通の足場を築くため、協力店舗を増やし、継続的な魅力発信を行う南あわじ市三力(みりょく)発信事業を推進します。

 ふるさと名物応援制度等も活用しつつ、特産品の発信力を強化するとともに、瓦産業等の海外進出や中小企業の販売力強化を支援します。

 まちのにぎわいづくり、まちなみ整備に向け、商店街の街路灯のLED化を促進し、甍(いらか)街なみ景観形成のため淡路瓦を使用する個人住宅の屋根工事に対する助成を続けてまいります。

 企業誘致、企業立地による良質な雇用の拡大は重要な課題です。引き続き域外有望企業に働きかけを行うとともに、域内の意欲的な経営者の構想の事業化を積極的に支援し、企業立地につなげてまいります。商工会と協力し新規創業者の育成を支援するとともに、新技術開発補助金や、市による調達を活用して域内企業による新製品・新技術の開発や導入を支援し、中小企業者等の競争力強化に努めます。

安心・安全のまちづくり

 第四の行動は、『安心・安全のまちづくり』です。

 阪神淡路大震災から20年余りが経過しました。昨年は九州北部豪雨などの大規模災害が発生し、また、本市にも立て続けに台風が接近しました。火山の噴火や大雪などのニュースも相次ぎ、今や、日本全国どこにも安全といいきれる場所はないという状況であると感じます。

 南あわじ市では、特に二つの脅威に備える必要があります。一つは南海トラフ巨大地震による津波地震災害、もう一つは巨大台風による豪雨・高潮などの水害です。

 まず、近い将来発生が危惧される南海トラフ巨大地震については、兵庫県津波防災インフラ整備計画で重点地区に指定されている福良港、阿万港、沼島漁港における防波堤等の整備を国・県と連携しつつ着実に実施してまいります。また、指定緊急避難場所である賀集八幡公園を拡張し、かまどベンチや備蓄倉庫等、防災機能を兼ね備えた防災公園として整備します。引き続き、津波浸水地区における避難路のカラー塗装と太陽光避難灯の整備を計画的に進めます。

 さらに、県と協働している「防災ベッド」や「耐震シェルター」など、部分的耐震化への助成、簡易耐震診断の推進及び耐震診断に基づく建替や改修への支援等を推進します。

 水害対策についても、計画的に対策を進めます。

 三原川流域等の低地における浸水被害を防止軽減するため、平成28年度に策定された治水総合対策計画に基づき、治水総合対策協議会において県と連携協力を図りながら対策を進めてまいります。

 福良湾の高潮対策については、仁尾や向谷の排水対策を推進します。また、多くの要望をいただいている河川及び排水路整備などを順次実施するとともに、排水機場の適正な維持管理に努めます。

 正確な防災情報の収集と発信のため、デジタル防災行政無線による戸別受信機の設置や屋外拡声器及び防災監視カメラによる迅速な情報伝達体制を適切に運用し、全国瞬時警報システム(Jアラート)の新型受信機を整備します。

 ハード面の整備と並び、ソフト面での対策の強化も不可欠です。防災訓練における本市の参加者数は約9千人余りで、県内随一の参加者数を誇りますが、想定される災害の深刻さを考えると、満足はできません。消防や保健など分野ごとの訓練内容の向上、中学生による防災ジュニアリーダーの育成と活動、幅広い児童生徒の参加を通じた家族への啓発など改善を重ね、さらなる防災意識と実践力の向上に努めてまいります。

 また、平成26年度に策定した地域防災計画について、兵庫県地域防災計画や国等のガイドライン、近年の災害教訓等を踏まえた計画の改訂を進め、総合的かつ計画的な防災体制を構築します。

 地域の防災・減災の中核となって日夜活躍していただいている南あわじ市消防団は2,190人で構成されています。人口が減少する中、これだけの団員数を維持することは並大抵のことではなく、まさに地域の皆様の消防団活動に対するご理解ご協力の賜物であります。本市としても消防団活動を円滑に行えるよう消防車両や小型動力ポンプはじめ所有備品の更新を進め、いざという時に頼りになる消防設備の維持管理を行ってまいります。

 有事の際に重要になってくるのは関係機関とのスムースな情報伝達です。本市では、県の防災部局と更なる関係強化を図るため、職員の人材交流を行うとともに、兵庫県立大学大学院の減災復興政策研究科へ職員を派遣します。

 重要な公共インフラである道路や橋梁の老朽化が進んでいます。安全性が揺らぐ事態にならないよう早め早めに手を打つ必要があります。引き続き、国の社会資本交付金事業を活用し、道路・橋梁の長寿命化工事や点検に取り組みます。また、重要路線の整備や市道の維持修繕、グリーンベルトの設置などの通学路安全施設を整備します。

 適切に管理がされず、倒壊の危険性や周辺環境への影響が懸念される空き家が増加しています。複数の関係部署が連携して空き家対策の取り組みを進め、対策計画を策定するとともに管理システムを導入いたします。加えて、倒壊等により周囲に危険が及ぶ恐れのある空き家等の除去を支援します。

 また地域の安全のため、引き続き防犯灯の管理と防犯カメラの設置について補助を行います。治安維持や交通安全対策については、関係市民団体等と連携し地域の見守り活動への支援を継続してまいります。

 南あわじ警察署と淡路三原高校郷土部にご協力をいただいた人形浄瑠璃を使った振り込め詐欺撲滅番組は大変好評でした。今後とも、消費生活センターでの相談等も含め様々な形で啓発を行い、犯罪の未然防止に努めてまいります。

 市民の安心にとって、衛生環境の維持も重要な課題です。やまなみ苑での適正なごみ処理を実施するほか、下水道事業では経済性も考慮しつつ管渠敷設等の計画的な施設整備及び管理を行うとともに、加入促進に注力し、効率的で持続可能な事業運営に努めてまいります。また、淡路広域水道企業団と連携を密にし、安心・安全な水の供給体制を堅持します。

 懸案の火葬場につきましては、周辺環境との調和をめざした施設整備に取り組み、平成30年度は施設建設工事に着手します。

 「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり

 第五の行動は、「対話と行動の行政」の実現です。

 昨年春に市民協働課を設置し、チャレンジ事業補助金制度を創設するなど、「対話と行動の行政」の具体化に取り組んでまいりました。幸い、自治会をはじめ地域の皆様の積極的な取り組みにより、今年度、地域の活性化に向けた三件の事業が開始されました。平成30年度は市民協働課を市民部から新設する総務企画部へ移管し、全庁を挙げた「対話と行動の行政」の実現を一層強力に推進する考えです。

 各々の地域づくり協議会において、優先して取り組むべき地域の課題を特定し、行政の担当者も関与しながら、住民の主体的な参加によりプランを示していただきます。それを具体的な行動に移す際、チャレンジ事業補助金等で行政が後押しします。二年目となる平成30年度は、制度を本格的に実施し、「地域主体のまちづくり」という考え方を目に見える形にしてまいります。

 また、本事業にとどまらず、私自身も含めて、職員が市民の皆様と対話を重ね、ともに最適な対応策を模索し、地域づくりに資する行政を展開いたします。

 そうした行政を実現するため、市役所の業務の効率化や組織の最適化を進めます。まず、業務改革プロジェクトにより従来の業務の効率化・最適化に取り組みます。市民の皆様との一番の接点である窓口業務については、総合窓口を設置するとともに、窓口営業時間については利用件数の少ない休日の時間を縮減する一方、木曜日は会社帰りの方も利用できるよう延長窓口を設け、利便性の向上を図ります。

 また、庁内の機構改革を行い、課題解決により適した市役所内の意思決定プロセスを構築します。国の地方創生人材支援制度を活用し、国から地方行政に長けた人材を招聘し、本市の企画政策部門の統括を担っていただきます。

 さらに、市職員の政策形成能力の向上を図りつつ、本市が直面する課題の解決を進めるため、庁内にあらたに政策検討委員会を設置し、その下に若手・中堅職員を中心とした課題別の研究部会を設け、移住定住施策、子育て・教育施策、資源循環産業施策、地域開発施策などについて、外部の識者や専門家等からの意見聴取やフィールドワークを通じた検討を行い、施策につなげてまいります。

 今般発生した本市職員による収賄容疑事件は、市政を預かる責任者として痛恨の極みであります。一度失った信頼を回復することが容易でないことは百も承知でありますが、一歩一歩、信頼回復に向けて全力で行政運営にあたってまいります。

 『職員一人ひとりがこれまでの仕事の進め方を見直し、取り組むべき仕事、解決すべき課題を明確に把握し、責任を全うする。』『自身の仕事が社会にどのような影響があるのか見定め、外部との関係に緊張感をもって臨み、関係者の合意を形成する。』『仕事の精度を上げるために、各自が技術を磨く。』そういった日々の取り組みが組織の文化を醸成します。この組織文化をより良い方向へ進めてまいりたいと考えております。

平成30年度 歳入歳出予算

 平成30年度予算の編成にあたっては、今、申しあげました方針を実現すべく検討を重ねました。現下の厳しい財政状況に鑑み、緊急性と優先順位を厳しく精査する一方、私が市長に就任して初めて編成する当初予算として、地方創生施策等に積極的に財源を配分し、実現しようとする地域社会の方向性を皆さまにお示しできるよう努めました。その結果、平成30年度の歳入歳出予算は、

一般会計 「267億円」(前年比 +1.6%)

特別会計 「189億5,833万1千円」(前年比 -13.5%)

内訳として

  • 国民健康保険特別会計 69億2,422万8千円
  • 介護保険特別会計 48億6,490万7千円
  • 下水道事業会計 51億3,843万円
  • 他10特別会計 20億3,076万6千円

合計 「456億5,833万1千円」(前年比 -5.2%)

結びに

 本年は明治150年の年にあたります。明治期においては、従前に比べ能力本位の人材登用が行われ、機会の平等が進められました。そうした中において、若者や女性、また学術や文化を志す人々が貪欲に知識を吸収し、新たな道を切り拓いてまいりました。

 結果、先達は新時代の扉を開き近代化を成し遂げ、日本が国際社会の一員へと成長したことは、日本国民の英知と勤勉に対する誇りであります。

 現在は、それに比肩すべき、大きな時代の転換期にあると思います。日本は、課題先進国として、他のどの国も経験したことのない変化を乗り切ることが求められています。その答えは、周りを見るのではなく、課題の現場から導き出さねばならないものであると思います。私は、南あわじ市は、その現場と向き合い、課題を解決していく先進地域であって欲しいと切望しますし、その可能性が十分にある地域であると考えております。その実現に向け、職員が一丸となり、精進を重ね、周囲を巻き込み、大きな流れを作って行きたいと思います。一歩一歩、具体的な行動を通じて、成長し、誇りに満ちた南あわじ市をめざすことをここにお誓い申しあげます。

 議員各位におかれましては、本市の各種政策、また、国及び県の地方創生政策をご理解賜り、慎重ご審議のうえ、適切なるご決定を賜りますことをお願い申しあげ、平成30年度南あわじ市施政方針といたします。

 

平成30年2月23日


南あわじ市長  守 本 憲 弘

 

 

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