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令和2年度施政方針

印刷用ページを表示する更新日:2020年3月1日更新 <外部リンク>

令和2年度施政方針 [PDFファイル/779KB]

目次

  • 時代認識と市政理念
  • 五つの行動
    • 超高齢化社会の克服
    • 子育て環境の向上と教育の充実
    • 地域の資源を活かした地元産業の活性化
      • 農畜水産業の振興
      • 観光産業の高度化
      • 商工業の活性化
    • 安全・安心のまちづくり
    • 「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり
  • 令和2年度 歳入歳出予算
  • 結びに

 第90回南あわじ市議会定例会の開会にあたり、議員各位にはご健勝をお喜び申し上げ、日頃のご精励ご活躍に対し敬意と感謝の意を表します。

時代認識と市政理念

 (新しい時代)

 昨年は、「令」の漢字で象徴されるとおり、皇位継承により新しい時代を迎え、日本全国が祝賀ムードとなりました。

 新しい時代には新しい流れが始まります。今年は、第二次世界大戦が終わって75年を迎えます。これは人一人の生涯に匹敵する期間です。私は、この令和の時代は、終戦後続いてきた国内外の社会の方向性が、大きく転換する時代になるという気がしてなりません。少なくとも次の三つの点でその流れを感じます。

 第一の大きな流れは、国際関係の変容です。戦後、世界は、国と国、民族と民族との協調・連携を強化することにより、国際関係の安定を維持し、平和と豊かさを共に享受することを目指し、努力を続けてきました。国際社会の責任ある一員として行動するため、自国においては、人々が多少の負担を分かち合うことも忍受すべきとの価値観が、相当程度共有されてきました。その背景には、二度にわたる大きな戦争を再び繰り返すべきではないという実体験に基づいた危機感、また、米国という大国を中心として、欧州そして我が国も参画して形作ってきた安定的な国際秩序により、周囲を含めた各国、とりわけ資本主義、自由主義の価値観を共有する国々が、豊かさを享受してきたという現実がありました。

 しかしながら、いくつかの変化により、その基盤が揺らぎつつあり、主要国においてさえ自国中心主義を前面に出すことを躊躇しない、あるいは出さざるを得ない状況になっています。変化の一つ目は、戦争を体験した人々が減少し、平和と安定の価値が、感覚というよりも抽象的な意識の上のものになってきているということがあります。その結果、平和という価値の優先順位が下がりつつあると言うこともできると思います。変化の二つ目は、情報技術などが発達する中で、産業の構造が変化し、持てる人と持たざる人の格差が拡大を続けていることです。国際協調を進めることは、貿易・資本の自由化、移民の受け入れなど、持たざる人により大きな負担感をもたらすことが往々にしてあります。それを受け入れる寛容度が低下し、政治的反発が出やすくなっているという社会の構造変化です。そして変化の三つ目は、国々のパワーバランスの変化、特に中国の成長です。人口面の優位に加え、近年、経済、技術の進展は目覚ましく、政治的にも覇権をとることを隠していません。それが、従来の覇権国である米国に強い危機感を抱かせ、国際協調よりも自国の勢力確保を優先するという選択を迫っています。歴史をひもとくと、社会の動乱が最も生まれやすいのは、既存のリーダーに対し新興勢力が挑戦していく時です。令和の時代、貿易や国際交流のさらなる拡大に向けた努力が継続される一方で、国際秩序において不安定要因が強まっていく可能性は非常に高く、我が国もその中で複雑な対応を迫られることが多くなると考えます。

 第二の大きな流れは、地球の持続可能性に関する価値観の転換です。地球環境、特に気候変動の問題が言われて久しくなります。私自身も国家公務員の時代に若干関わらせていただきましたが、1997年12月には京都に多くの国が集まり、気候変動枠組条約、すなわち、国々が二酸化炭素を中心とする温室効果ガスの排出を削減する約束を初めて行いました。交渉が難航し、合意できないのではないかと思われた時、米国のゴア副大統領が自ら続けてきた地球の変化の観察に基づく危機感を持った演説を行い、場のムードを変え、妥結に至りました。その時点では、ほとんどの人々の意識は「遠い将来への備え」であったと思います。今はどうでしょうか。一昨年も西日本で大きな豪雨被害がありました。昨年、宮城県丸森町では、台風19号により、平年一年間の降雨量の約半分の雨がもたらされました。近年、瀬戸内海では熱帯性の魚が泳ぎ、東北地方では今年、暖流の北上により、鮭が元の川に戻らなくなりました。気候変動が人々の生活に現実の重い負担をもたらし始めています。これまで地球環境の問題は、人々の生活の利便性や豊かさの次に置かれていました。すなわち、生活の利便性を犠牲にしない範囲で環境を守ろうということです。

 しかし、地球が億の単位で貯めてきた化石燃料を、私たちを含むせいぜい3、4世代の利便や豊かさのために使い切り、それによって人類が自らの存立基盤である地球環境を破壊することに対する強い反省と危機感が、特に将来を担う若い世代を中心に、大きく高まっています。今後、多少の不便や経済面での犠牲を受け入れてでも、持続できる地球や社会を作ろうという価値観がさらに支配的になっていくと思います。その象徴が、国連が提唱する17の持続可能な開発目標(SDGs)です。

 第三の大きな流れは、人と人との絆、コミュニティに対する考え方の変容です。戦中や戦後復興の時代まで、日本では、地域社会の相互扶助が非常に発達していました。そもそも助け合わないと、生活も産業活動も成り立たないという背景もありました。一方で、社会的な拘束も強かった時代です。その後、日本が高度経済成長を続ける中で、欧米、特に米国型の自立した個人により構成される社会という近代化を目指しました。そのため、制度面でも個人の自立・独立を促進するような仕組みが次々と導入されました。その象徴は年金をはじめとした社会保障であり、また、マイホームやマイカーを誘導する政策も打ち出されました。そうした流れの中、人々は、家族や地域との縁が切れても生活できる時代が来るという幻想を抱きました。都市化が進む中で、三大都市圏への大量の人口流入が起こりますが、仕事を求めて、という事情に加えて、田舎の人間関係が嫌だから都会に出たいという精神的な背景も共有されていました。

 日本の経済は、昭和後期、変動を経つつも成長を維持してきましたが、平成に入り、バブルの崩壊に見舞われます。これは、表面上は金融政策の失敗でしたが、その背景にもっと本質的な二つの社会変化がありました。一つは、東南アジア・中国の成長により、日本の経済成長の原動力であった世界の工場としての地位を失ったことです。もう一つは、出生率が低下し、日本の成長を支えてきた若く優秀な人材の供給が止まったことです。それにより、これまで追い求めてきた、経済成長を前提として、金銭的な手段により個人が家族や周囲の支援がなくても人生を全うする、という人生モデルの実現は難しいのではないか、困った時に様々な形で助け合える社会を再構築すべきではないか、という意識が生まれます。平成の時代は、そうした新たな価値観と、一方で、過去の成功体験の再現を求めて、その延長線上で企業経営を強化し、政策を打ち続ける流れとが併存した時代といえると思います。

 私は、令和の時代は、少子高齢化、産業競争力という点で、日本社会が置かれている状況を客観的に認識し、それに対応できるよう、自助・共助・公助が円滑に機能する社会を再構築しようという流れが明確になると考えています。現在、国で進めようとしている全世代型社会保障改革は、そうした考え方に基盤を置いています。新しい価値観のもとで、もう一度共助社会を作り直そうとしているのです。

 (大きな可能性)

 こうした大きな流れに照らし、本市の姿を見ると、私は、非常に大きな可能性を感じています。

 まず、国際情勢の不安定化の側面についてです。本市には、先の大戦において、学業半ばで様々な軍需工場での生産に動員され、そこで亡くなった男女学徒を追悼する施設として建設された「戦没学徒記念若人の広場」があります。過去の反省に立って平和を希求する精神の拠り所となり、メッセージを発信していく拠点を持つ自治体は、多くはありません。不安定化する国際情勢の中で、その意義は益々重要になるものと考えます。私たちは、その役割を認識し、この拠点をより一層活用すべきと考えます。そうした考えから、まず今年は、本市が例年実施している戦没学徒追悼献花式に加え、「永遠の灯(ともしび)」を利用した東京パラリンピックの採火式、また10月には兵庫県主催の全国戦没学徒追悼式を開催します。敬意と感謝の念を捧げるとともに、恒久平和を願い、世界に発信してまいります。

 次に、地球環境の視点です。本市、そして淡路島は、豊かな自然の資源に加え、自然と調和する農業、水産業などの一次産業があります。また、耕畜連携農法に象徴されるような自然と人との共存共栄の伝統もあります。その優位性を生かし、再生可能エネルギーの活用や廃棄物の有効利用によって、持続可能な循環型社会システムのモデルを構築していく可能性の非常に高い地域です。その取り組みも強化したいと思います。

 また、コミュニティの重要性の高まりという点では、本市はトップランナーに近い位置にいると思います。個人個人の独立性を重視するという過去のトレンドには一歩遅れたかも知れませんが、逆に、豊かな人と人とのつながり、地域の自治会、消防団をはじめとした助け合いの基盤が強い、共助の仕組みを色濃く残している地域です。それを新しい時代の形に変えていくことによって、日本の社会全体の課題に先行的に対応する、令和の先進地域となりうる地域です。

 本市は、今年1月11日に市制15周年を迎えました。7月の記念式典開催の機会には、本市のこの強みの原動力となってきた方々に光を当てたいと考えています。助け合いの社会を地道に支え、善行活動を行ってきた方々に対し、「おのころ賞」と称して表彰し、感謝の意を形として表すこととしています。

 (子育ての喜びが見えるまち)

 平成26年、日本創生会議は、20歳から39歳までの女性の数が2010年から2040年にかけて5割以下に減る自治体「消滅可能性都市」を公表し、本市もその候補に該当していました。私が市長に就任して3年になりますが、この間、残念ながら人口減少の波は止まっていません。しかし、徐々に交流人口は増加し、移住者も出てきており、この地の魅力が向上しつつあることを感じます。さらに努力すれば、人口減少に歯止めをかけ、逆転することも可能であると考えています。

 冒頭申し上げた通り、令和という時代に求められる地域社会の構築という点で、本市は非常に高い可能性を持つ地域であります。その具現化に向けて、本市の政策の柱「五つの行動」の取り組みを発展させながら、さらに地域の魅力向上を図ります。特にこれからの地域の持続的な発展にとって重要なことは、若者たちを引きつけるまちとなることです。これは、後継者を望む家庭、人材を望む産業界、担い手を必要とする地域、すべてに共通する課題です。

 若者たちが、ここで挑戦し、家庭を持ち、子どもを育てたいと思うまちになることは、簡単なことではありません。挑戦するための産業基盤を整えること、施設などの子育て環境が整備されていること、教育の質を高めること、これらはもちろん必要な要素ですが、それだけでは不十分です。地域住民が子育て家庭の課題を理解し、応援すること、共働きが普通の時代、産業界が子育てしやすい働き方に協力的であること。こうした要素で地域全体が若者のチャレンジや子育てをサポートし、彼らの成長・活躍を楽しみながら見守る地域社会であることが必要です。私はこのような地域を「子育ての喜びが見えるまち」と表現しようと思います。

 昨年、「兵庫2030年の展望」が発表されました。また、現在兵庫県議会において2020年からの第2期「兵庫県地域創生戦略」が提案されています。いずれも進学や就職で県外へ転出する20歳代前半に注目し、地元企業とのマッチングや第二新卒者など若者のUJIターンの支援に注力するなど、転出超過を解消することを最重要目標の一つに掲げています。

 本市は、「子育ての喜びが見えるまち」の実現に向けた取り組みを強力に押し進め、この動きの先陣を切って挑戦してまいります。私どもが取り組んでいる政策の柱「五つの行動」は、それぞれが互いに関連しつつ、このビジョンの具体化を支えるものに他なりません。

 3年間の実績を踏まえ、「五つの行動」をさらに発展し、本格稼働させていくため、ここに、市政運営及び主要事業についての方針を表明し、議員各位、市民の皆様のご理解とご賛同を賜り、皆様とともに希望に満ち溢れた南あわじ市を創っていきたいと思います。

五つの行動

(1)超高齢化社会の克服

 第一の行動は、『超高齢化社会の克服』です。

 (生涯活躍社会)

 2025年には国民の5人に1人が75歳以上となり、高齢者の生活を支える年金や医療、介護などの費用を賄うための現役世代の負担が高まると想定されています。人生100年時代が到来する中、国では、老若男女、障害や難病のある方々も、すべての人々が個性を活かすことができる社会を創ることで、少子高齢化という大きな壁を克服するため、全世代型社会保障の議論が進んでいます。

 本市は、全国に先駆け、高齢者等元気活躍推進事業に取り組んでいます。シニア世代の方々などが定年退職や既存の働き方などの固定観念に捉われることなく、これまで培ってきた経験やスキルを活かし、人手不足で悩む様々な分野で仕事や社会貢献活動を継続していただき、健康寿命の伸長や地域の人手不足の解消につなげていくことを目指しています。

 まず、シニアの方のボランティア活動に対してポイントを付与する「おもいやりポイント制度」から着手しました。立ち上げ時は、介護施設での活動がほとんどでしたが、最近は保育所での読み聞かせや見守りなど育児分野の活動も始まり、シニアの方々からは、身近なところで地域の役に立つやりがいを伺うことが増えてきていますし、短時間でも継続的な活動によって若い世代の負担軽減にもつながっております。地域のニーズとシニア世代の活動意欲をつなげ、制度の定着と拡大に着実に取り組んでまいります。

 加えて、昨年には「働くシニア応援プロジェクト」も開始しました。少子高齢化・人口減少社会が進行する中、地域の産業が必要な人材を確保しながら成長を続けていけるよう、シニア人材を活かす「柔軟な新しい働き方の創出」を目指します。現在、モデル事業者と協力して就労内容や採用手法を工夫するなど、シニア人材が無理なく働ける就労環境の整備と事業者の人手不足軽減を両立する方法を実証しています。事業の実施を通じ、事業者・シニア双方のニーズの大きさに手ごたえを感じつつあります。

 これらの取り組みをさらに発展させ、本格実施に向けて困りごとを気軽に依頼し請け負うことができるマッチングアプリの開発を進めるとともに、社会貢献活動から就労支援までシニア世代の活動の場をさらに広げてまいります。

 (市民の健康づくり)

 いつまでも健康で長生き出来る社会を実現するためには、自身の健康は自ら管理するという健康意識の定着が不可欠です。「町ぐるみ健診」の受診率の向上に引き続き取り組むとともに、今年度から骨粗しょう症健診の対象者に40歳以上の男性も加えます。

 高齢者の活力の衰え「フレイル」を予防する仕組みづくりが長寿社会の重要な課題となっています。八木地区と賀集地区のチャレンジ事業では、知識の普及と実践の両面から、病院と連携したフレイル予防に取り組み始めました。こういった取り組みをモデルとして位置づけ、その後押しをするとともに、本市も通いの場やサロンなどでフレイル予防を進めます。

 (地域で暮らし、地域で支える介護)

 介護保険制度は、従来、家族中心に担ってきた介護を社会全体で担うために創設されたものであり、今年の4月で20年を迎えます。利用者数、被保険者数が増加し、高齢者の介護に無くてはならないものとなりました。高齢者がいつまでも健康で安心して暮らせるよう、保険者として適正な介護サービスの提供と、地域住民が主体となって高齢者の交流及び介護予防ができる地域支援事業の充実に努めてまいります。

 もし医療や介護が必要になった場合でも、住み慣れた地域や高齢者自らが望む場所で安心して暮らし続けられるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが連携し、切れ目なく提供される地域包括ケアシステムの構築を加速します。

 (歩いて暮らせるまちづくり)

 人口減少及び自家用車の普及が進み、公共交通の利用者が減少したことで路線の減便や撤退が進み、利便性が低下しており、車を運転できない要介護者や高齢者などが移動に困難となる交通難民が社会問題となっています。住民ニーズに対応した移動手段の整備、市域を越えたバス路線の設定、高速バスや観光バスとの連携など、地域公共交通の充実は淡路島共通の課題です。兵庫県の支援もいただきながら、淡路島3市で協働してまいります。

 また、申請・届出についても、「市役所窓口に行かなければならない」、「書類の記入が煩雑」という従来の在り方を見直してまいります。まずは今年度、市民交流センターでの市役所補完業務を拡大するとともに、市民交流センターと本庁間でビデオ通話を介して直接つながる仕組みの検証を行い、より多くの手続きを身近な場所で済ますことができるよう取り組みを強化します。将来的には、大半の手続きを自宅にいながら完結できるよう、各種手続きの見直し及びマイナンバーカードの取得促進も含めた電子申請の手続きの確立を目指します。

 さらに、スマートフォンを活用し納税できる環境の構築に取り組みます。自宅で簡単便利に市税を納税できるモバイル決済を導入し、市民の皆様の利便性の向上を目指します。

(2)子育て環境の向上と教育の充実

 第二の行動は、『子育て環境の向上と教育の充実』です。

 本市は、以前より、子育て・教育環境の充実が若者に選ばれるまちの重要な要件と考え、大胆に注力してまいりました。その象徴は、全国に先駆けて取り組んだ3歳児以上の保育料無償化です。昨年、国策でそれが全国標準となりましたが、本市は一歩進め、さらに子育て環境の向上と教育の充実を図るため、次の三つの柱を打ち立て、踏み出してまいります。

 (学校教育の高度化)

 第一の柱は、学校教育の加速的な充実と高度化です。

 「学ぶ楽しさ日本一」。昨年、すべての子ども達がやりたいことを見つけ、自ら努力し、成長し、能力を最大限伸ばしていく教育環境づくりに取り組む地域を目指すと宣言しました。今年度は、各学校がその実現に向け、自ら課題を選択し、考え、実践し、発表するという仕組みを、スクールチャレンジ事業を活用して構築します。

 また、淡路島が誇る伝統文化である淡路人形浄瑠璃を使って子ども達の表現力を伸ばすコアカリキュラムの本格実施、防災を学びながら自立と助け合いの心を育む防災教育の充実に加え、遊びの中で学びを通して互いに成長していくアフタースクール事業を2地区で追加実施します。

 一流のアスリートやアーティストを小・中学校に招聘し、圧倒的なオーラや魅力を感じ、自分たちもこうなりたいと目標をもってもらう「夢プロジェクト」も引き続き行います。

 子ども達の持つ才能、能力は想像を超える、多様なものがあります。「好きこそ物の上手なれ」という言葉のとおり、すべての子ども達が、できるだけ多くの人と触れ合い、多様な活動を体験し、自分の才能に気付き、やりたいものを見つけ出し、成長していける環境をさらに整えていきます。

 これら他の自治体にはない特色ある事業への取り組みを通じ、「学ぶ楽しさ日本一」を本気で実現していくつもりです。これからも本市の教育にぜひご注目いただきたいと思います。

 また、今年の4月から新学習指導要領が全面実施され、アクティブ・ラーニングの視点からの学習やプログラミング教育が必修化されます。Society5.0に対応できる人材育成ができる環境を整えます。

 施設面では、4月から西淡志知小学校と三原志知小学校が統合し、新たに志知小学校としてスタートします。松帆小学校、賀集小学校とともに大規模改造を行い、より充実した教育環境を提供してまいります。

 (遊び場・世代交流の場の拡大)

 第二の柱は、子ども達が地域の人々に見守られて過ごす場の拡充です。

 子ども議会でも多くの要望がある遊び場の充実ですが、昨年から休日の小学校の校庭やゆめるんセンターの園庭の開放、シーパ内に雨天でも遊べるキッズスペースの設置などを順次行ってきました。特に子育て世帯から反響が大きかったのは、昨年4月からの淡路ファームパークイングランドの丘入場料の市民無料化です。単なる観光地ではなく、市民の皆様から親しまれる公園としての機能も大切にします。

 AI(人工知能)の時代に生き残る子どもは、単に知識を持っているということではなく、どんな人と対峙してもきちんとコミュニケーションが取れる能力を育てていかなければならないと思っています。公民館でのキッズスペースの設置など、子ども達を地域の人々が応援し、見守り、育み、地域全体で子育てを支援する基盤を形成し、安心して子育てができる環境づくり、世代間のふれあいができる場づくりに引き続き取り組んでまいります。

 (子育て世代のソフト支援)

 第三の柱は、子育て世代の総合的な支援体制の充実です。

 昨年1年間の日本全体の出生数は86万人余りとなり、対前年比で約6パーセントも減少しました。100万人の大台を割ったのは2016年のことで、わずか3年で90万人台を通り過ぎ、危機的状況にあります。平成27年の国勢調査による本市の合計特殊出生率は、兵庫県トップの数値ではありますが、新生児の総数は減少傾向が続いており、予断を許さない状況です。今年度策定する第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略では、20歳代から30歳代の女性の人口減少を抑制することを主要目標の一つとします。

 地方には、これまで都会へのあこがれの中で無視されてきた大きな可能性があると思います。職住近接など、女性が働き続けやすい環境もその一つです。本市の女性の就業率は、全国的に見ても高い水準にあります。出産を機に仕事を辞めるのではなく、産休や育休を利用して仕事を続けるなど、国は「女性活躍の推進」という方針を打ち出しています。本市は、さらにその先を見据え、行政、住民、企業、関係団体が連携し、男性の家事参加、働き方の見直し、地域の子育て支援などの方策を含め、男女共に仕事、家庭生活、育児・教育が両立する「子育ての喜びが見えるまち」の実現を目指します。そのため、関係者の課題共有、意見交換を行う連携、協議の場となるコンソーシアムを立ち上げ、新たな事業の実施に向けた検討を行います。

 良質な保育環境を整備するため、保育士の養成課程を持つ大学と連携し、幼児教育の充実や保育士不足などの課題に取り組みます。高度化・多様化する保育・幼児教育のニーズに応えるため、4月には幼保連携型認定こども園として市(いち)こども園を開園します。幼児期における教育の重要性に鑑み、質の高い幼児教育と保育の一体的な提供を行い、市内全体の保育・教育サービスの拠点施設として牽引役を担うこととしています。

 安心して出産できる環境づくりも欠かせません。不妊治療費や妊婦健康診査費の助成、島外医療機関での健診・出産に係る交通費の助成を引き続き行います。全国的に不足する産婦人科医師の確保は一足飛びにはいきませんが、淡路島全体の共通課題として、引き続き兵庫県や関係機関へ強く働きかけてまいります。

 これまで実施してきた中学校3年生までの入院、通院費無料化について、新たに訪問看護ステーションが行う訪問看護を助成の対象とし、子育て世帯の経済的負担軽減の拡大を図ります。

 (移住・定住支援)

 子育て・教育環境の充実に魅力を感じ、移住先として選んでいただけるよう、移住・定住支援を強化します。域外から移住した方々が取得するマイホームに対する支援については、島外から20歳代、30歳代の子育て世帯の利用が多かったことなどの検証結果を踏まえ、対象を島外在住者とし、補助内容の一部を見直し、リニューアルしてスタートいたします。また、結婚に伴う経済的負担軽減のため、新婚生活のスタートアップに必要となる費用の一部を補助し、新居の家賃補助を行う「新婚世帯家賃補助事業」とともに、切れ目のない支援を行います。

 一方で、定住をより一層促進するには、多世代同居や近居を推進することも重要であると考えます。世代間で支えあいながら生活することで、「安心して子供を産み育てられる」、「高齢者が安心して暮らすことができる」、「女性がいきいきと活躍できる」環境が形成され、住みやすい魅力あるまちにつながります。親世帯と子ども世帯が同じ地区内で新たに同居や近居する場合に必要な住宅改修費への支援制度を創設します。

 (地域文化・スポーツの振興)

 500年もの伝統を持ち、国の重要無形民俗文化財に指定されている淡路人形浄瑠璃。その特徴の一つは人形の大きさで、立役(たちやく)の人形の頭(かしら)は大きなものでは6寸、18センチメートル余りもあります。ダイナミックな動きと緻密な動きの組み合わせにより、本物の人間そっくりに動く不思議さに引き込まれます。

 淡路人形浄瑠璃の知名度や位置づけを高める活動を進めるため、本市は、2018年、AVIAMA(人形劇の友・友好都市国際協会)に加盟しました。昨年12月には、日本で同加盟都市である長野県飯田市の中学校と三原中学校郷土部の交流会を行いました。伝統芸能の担い手としての思いや、それぞれの地域の魅力を語り合い、人形を通じて親交を深めることができました。この淡路島の貴重な資産が、地域住民に愛され、かつ、世界に発信する大きな宝物となるよう、市民の皆様方と一緒に応援してまいります。

 「南あわじ市歴史を活かしたまちづくり実行委員会」において広くPRし、郷土意識の醸成を図ってきた松帆銅鐸が、調査研究を終え、いよいよ本市に戻ってきます。文化庁から認定を受けた日本遺産「国生みの島・淡路」を構成する歴史文化遺産を身近に感じるとともに、古代の歴史ロマンに想いを馳せるような魅力を発信してまいります。

 ゴールデン・スポーツイヤーズの2年目にあたる今年、東京オリンピックの聖火リレーや昨年から始まった近畿高等学校駅伝競走大会、また来年にはワールドマスターズゲームズ2021関西のビーチバレー競技が本市で開催されるなど、スポーツを通じて国内外からたくさんの方が訪れる機会が続きます。市民の皆様とともに心から歓迎するとともに、受け入れる環境を整えてまいります。また、本市出身で全国的に活躍されるスポーツ選手はたくさんいらっしゃいます。ビーチバレーでは、日本代表を目指しておられる村上礼華さん、ロンドンパラリンピック柔道100キログラム超級金メダリスト正木健人さん、角界では照強関など多くの本市出身のスポーツ選手が活躍しておられます。そして、たくさんの市民の方々がスポーツを楽しみ、また多様な分野で好成績を挙げておられます。これからもスポーツを楽しむ市民の皆様を応援してまいります。

(3)地域の資源を活かした地元産業の活性化

 第三の行動は、『地域の資源を活かした地元産業の活性化』です。

 (食を軸とする淡路島全体の魅力向上)

 淡路島の産業面での最大の魅力は、食の素材の豊かさです。東京23区ほどの面積の中に、肉、魚、野菜、牛乳、果樹などの豊富な食材生産が凝縮されている地域は全国的にも希少です。これらを素材のまま島外に出すのではなく、域内で料理・加工し、来訪されるお客様に提供したり、付加価値をつけて移出することが、地域の経済循環の拡大や農漁業の着実な発展につながります。

 スペインにサン・セバスチャンという街があります。その街は、30年ほど前までは、海や陸の食材を外に売っているだけの地域でした。しかし、今や世界中の美食家が集まる街になり、周囲の一次産業も潤っています。私は、洲本市や淡路市、そして地域の食産業に関わる方々、淡路島全体で力を合わせ、サン・セバスチャンのような成長を目指して食の島づくりに取り組むべきであると考えます。

 この取り組みを軸に、淡路島が併せ持つ大きな魅力である、豊かな観光資源、感動的な自然の神秘、深みのある歴史や文化を組み合わせ、京阪神や関西国際空港からもアクセスしやすい地の利も生かしつつ、関連産業の振興と裾野の拡大を進め、意欲ある若者達が自分から仕事を作り出していけるような環境づくりを進めてまいります。

 この方向を着実に進めるため、以下に述べるような、一次産業の振興、観光産業の高度化、域内商工業の活性化に着実に取り組んでまいります。

(1)農畜水産業の振興

 産業活性化の第一は、農畜水産業の振興です。

 (淡路島ブランド)

 大正、昭和、平成に続き、令和の天皇陛下即位に伴う大嘗祭で、丸山漁港で水揚げされたマダイが献上されました。この流れを途切れさせることがないよう淡路島全体でマダイの料理開発やPRを行い、さらなるブランド化を目指します。

 淡路ビーフ、淡路島たまねぎ、レタス、淡路島3年とらふぐは強力な全国区のブランドとなっており、度々メディアに取り上げられています。また、淡路島サクラマスや淡路島なるとオレンジもそれらに続く成長著しいブランドとなりつつあります。これら淡路島産の食材を一手に扱う美菜恋来屋では、販売だけでなく農業改良普及センターなどと連携した「島サラダフェア」などの様々なイベントを通じて、御食国たる淡路島が誇る豊かな食材の魅力を発信してまいります。

 今年は、兵庫県畜産共進会が本市で開催されます。県内各地の予選を勝ち抜いた最高級の但馬牛(たじまうし)が出品されますが、その中でも淡路島で生まれ、厳しい基準をクリアした牛だけが淡路ビーフと呼ばれます。細やかな肉繊維と上品な甘みのある赤身、人肌で溶けるほど融点の低い霜降りが特徴的で、食肉関係者の間でも注目が高く、優秀な牛は高値で競り落とされます。こうしたイベントなどを通じ、ブランドをより強力に広め、引き続き畜産業の振興に取り組みます。

 (農業生産基盤の強化)

 良い食材を生産できる力を維持することは良いブランドの必要条件です。本市の基幹産業である農業の生産力の強化のため、基盤の強化、環境の改善への注力は、その手を緩めることはありません。

 南淡路農業改良普及センターやあわじ島農協などと協働し、減少傾向にあるレタスや良質な淡路島たまねぎの産地強化に取り組みます。

 農業の担い手不足が深刻化していく中で、集落の担い手の確保が急務となっています。Uターン就農者への支援や、人・農地プランの実質化を進めるため、集落での話し合いを支援いたします。女性農業者は、その感性を生かした多様な農業活動や加工品の開発が期待されます。農業女子プロジェクト事業を通じ、女性農業者グループの活動を支援し、女性目線での新たな農業のPRを行います。

 ほ場整備にも継続して取り組みます。新田(しんでん)・養宜(ようぎ)・片田(かただ)地区に加え、新たに長田地区でも着手します。また、農地中間管理機構を利用したほ場整備では、八幡北に加え、阿万本庄川地区でも実施設計を実施します。

 イノシシ、シカ、ニホンザルの出没が急増し、農作物への被害が著しくなっています。加えて昨年は、下校中の中学生がイノシシと衝突し怪我をするなど、住宅地や通学路での被害も発生しました。地域との対話においても、対策の必要性を訴える声が多数あります。これらを踏まえ、地域と行政が一緒になって鳥獣被害への対策を総合的に実施するため、農林振興課に関係各部との調整役を担う部署を設け、全庁的に鳥獣被害対策に取り組んでまいります。また、従来から行っている猟師への活動支援、侵入防護柵の整備だけではなく、鳥獣の生態把握や専門家の活用による、より効果的な対策の検討、ドローンなどの新技術を活用した実証事業を通じて、鳥獣被害対策をさらに強化してまいります。

 農業者のセーフティーネットとしての役割を担うために本市が行ってきた農業共済事業は、今年の4月から兵庫県で1組合化された兵庫県農業共済組合に引き継ぎます。職員を派遣し、スムーズな移行をするとともに、引き続き運営に関わってまいります。

 (良質な漁場の確保)

 安定した漁獲量の確保のためには、良質な漁場づくりは欠かせません。瀬戸内海全域で問題となっている栄養塩不足に対応するため、河川の浚渫土を海底覆砂の原料として活用することで、栄養塩を供給できないか効果を検証します。この検証結果は関係機関と共有し、瀬戸内海全域で同様の対応が広がるよう取り組んでまいります。また、栄養塩不足に加え、海域の鉄分が不足することにより、稚魚の産卵や育成場である藻場が減少しています。北海道でコンブ群を再生させた実績がある企業の参画を得て、鉄分を含んだスラグ人工石による藻場造成試験を行います。つくり育てる漁業を実施するため、第2次南あわじ市漁村再生計画に基づき、今年度も沼島沖に並型魚礁を整備します。

 漁業者の減少が続く中にあっては、漁場づくりだけでなく、漁港の基盤整備や漁業の構造改善も重要な課題です。灘漁港の改修を進めるとともに、専門家からの提言も受けながら福良湾の底質改善に取り組むなど、漁業者の所得向上につながる取り組みを進めてまいります。

 (吉備国際大との連携・支援)

 平成25年に開学した吉備国際大学は、ジビエや淡路島なるとオレンジなど、地域資源を活用した八つの研究会による地域課題対応の実施、市民を対象にした生涯学習講座の開設のほか、地元小学生との実習農場での田植えや稲刈り作業などを通して大学と地域の連携が深まっています。

 昨年、大学内にジビエの食肉処理加工施設「志知ジビエ」が完成しました。市民の皆様と協働しながら有害獣を捕獲し、農業被害への軽減に寄与するほか、ジビエを使った商品開発などの研究が進められています。今後とも大学と連携し、農業、水産業をはじめとした地域課題の解決のための研究を支援してまいります。

(2)観光産業の高度化

 産業活性化の第二は、淡路島全域の観光産業の高度化です。淡路島は島外から見れば一つの島として、また淡路島ブランドとして認知されています。このブランドを今後とも発展させるべく、各々が切磋琢磨しながら観光コンテンツの磨き上げを行う必要があります。今年度においても引き続き一般社団法人淡路島観光協会に設置した観光戦略室と連携を図るとともに、淡路島定住自立圏の枠組みを活用しつつ淡路島3市でともに取り組んでまいります。

 近年、観光地がたとえ遠隔地であっても、SNSの情報を頼りに訪問する旅行客が増えています。集客のためには、発信力の強化が不可欠です。今年はビッグデータを活用した来島者の動態調査、案内板の整備、観光客の受入環境の整備を行い、インバウンドの誘客を促進します。

 (類稀な自転車道)

 昨年、兵庫県と徳島県が共同して大鳴門橋の下部に自転車道を新設する場合の風洞実験を行い、橋の強度に問題がないとする試験結果が発表されました。自転車道の設置が実現すると、渦潮を眼下に見下ろすサイクリングロードとなり、世界を見ても他に類を見ない希少性・話題性が生まれます。この機会を捉え、ASAトライアングル交流圏推進協議会の取り組みを一層強化するとともに、道の駅うずしおやみさき荘の再整備を含め、鳴門岬までの周辺環境整備に向けた基本構想・基本計画の策定に着手します。

 アワイチと呼ばれる淡路島一周サイクリングを目的に、日本各地から観光客が訪れています。碧く輝く海岸と手ごたえ十分な峠道が特徴的ですが、特に淡路島の西海岸は、瀬戸内海に沈む夕日と海がインスタ映えし、人気のコースとなっています。サイクリストが安全に通行できるようサイクリングロードを整備し、ナショナルサイクルルートの指定を目指します。

 (個別施設の整備)

 今年度、淡路花博20周年記念事業「花・みどりフェア」が淡路ファームパークイングランドの丘で開催されます。淡路人形浄瑠璃とのコラボや松帆銅鐸の啓発企画など、単なる観光イベントにとどまらず、来場者が見て、知って、感動し、満足してもらうよう工夫を重ねます。大型連休の駐車場不足に対応するため、フェア期間中の仮設駐車場を整備するとともに、公共交通を利用し島外から観光客がアクセスできるよう、フェア開催期間中、陸の港西淡を起点にコミュニティバスの観光周遊ルートを増便します。

 鳴門海峡のうずしおの世界遺産登録に向け、昨年ノルウェー・ボーダ市のサルトストラウメン海峡などを視察し、学術調査を行うとともに、同市との友好・協力関係の構築を図ってまいりました。これを契機に、世界遺産登録において、複数国における共同申請という新たな選択肢の実現に向けて前進したところです。今年は、美しい自然を生かした観光施策、サケの養殖や干しダラ加工の地場産業を有する同市との友好連携協定に向けて調整を進めるとともに、世界遺産の共同申請を模索してまいります。また、観潮船乗り場があるなないろ館の維持修繕を行い、年間約30万人が訪れる観光客の受入体制を強化します。

 南方系のコアラを見ることができる日本唯一の施設となり、人気のある淡路ファームパークイングランドの丘ですが、コアラの高齢化が進み、今後、繁殖による増頭が見込めません。そのため、新たなコアラの受け入れが急務です。再来年、兵庫県は西オーストラリア州と友好40周年を迎えるため、その機に寄贈していただけるよう、共同して表敬訪問し働きかけを行います。

(3)商工業の活性化

 産業活性化の第三は、地場産業をはじめとする商工業の活性化です。

 (地場産業の活性化と新規産業の創造)

 太陽の光で美しく銀色に輝くいぶし瓦を代表とする淡路瓦は、400年もの歴史を刻む日本三大瓦の一つです。しかし、需要の低下や後継者不足により廃業する業者も出てきています。地場・伝統産業を今後もつないでいくため、後継者の育成を支援します。

 また、市内での創業を促進し、産業の振興及び新たな雇用創出のため、今年度から新たに起業する方に対し事務所の開設経費を支援します。

 (資源循環産業体系構想)

 環境や健康に配慮した循環型のまちづくりは地域の持続に欠かせません。持続可能な開発目標(SDGs)を地方創生に生かす取り組みとして、「南あわじ市資源循環産業体系構想」の構築・実現に取り組んでまいります。そのため、玉ねぎをはじめとする野菜残渣や下水汚泥を複合的に処理し、副産物として発生する堆肥などを有効活用する資源循環の仕組みを検討し、実現可能性調査及びマスタープランの策定を行います。また、この中で生物(アメリカミズアブ)を活用し、食品廃棄物を飼料に変える実証試験も行います。また、昨年の地域新電力事業可能性調査の結果を踏まえ、地域新電力会社の設立など、地域エネルギーを地域の活性化に生かす取り組みを進めます。循環型社会は、限られた資源をいかに地域内で回していくかが重要な鍵になると考えます。この構想が全国の先駆的なモデルとなるよう取り組んでまいります。

(4)安全・安心のまちづくり

 第四の行動は、『安全・安心のまちづくり』です。

 (震災の教訓)

 今年1月で阪神・淡路大震災から25年が経過しました。淡路地域では死者・負傷者合わせて1,300名以上、住家被害が約25,400棟発生しました。私たちは、あの日のことを忘れるわけにはいきません。震災の教訓を生かし、日ごろから防災意識を持つことが大切です。「自分の命は自分で守る」。毎年の総合防災訓練には約1万人に参加していただいております。命を守るための避難行動をした後の避難所運営についても訓練を深化させていきたいと思います。

 (防災基盤整備)

 気候変動の中で、全国的に大雨やゲリラ豪雨など水害の危険性が高まっています。昨年は台風の影響により、関東地方で長期間にわたる大規模な停電が発生しました。改めて生活インフラの大切さを痛感したところです。また、長野県や関東、東北各地で河川の決壊を目の当たりにしました。市内には、農業用に多数のため池が存在します。従来の低地対策に加え、田主のご理解、ご協力を得てため池を利用し、大雨が想定される時期に、事前に放流して水位を下げておくことで、貯水機能を高める取り組みを進めています。これは全国に先駆けた取り組みで、国からも注目されています。

 今後30年以内に70から80パーセントの確率で発生するといわれている南海トラフ地震。兵庫県最南端に位置する本市は、津波による甚大な被害が想定されています。「兵庫県津波防災インフラ整備計画」を国や県と連携して着実に進め、福良湾の防波堤など強力な防護の方策を講じつつあります。また、平成30年度に続いて地域防災計画の修正を行い、防災体制の充実を図ってまいります。

 南あわじ市消防団は県内有数の団員数を誇っています。一方、人口が減少する中、人員の確保が課題となってきています。地域防災の核である消防団の機能を維持・増進するため、女性や学生も取り込んで、消防団活動の幅を広げることを検討してまいります。また、有事の際に迅速・的確に対応できるよう、老朽化した消防自動車の更新や消防器具庫の修繕などに引き続き取り組んでまいります。

 市内で災害が発生し、避難所を開設することとなった場合に備えるため、必要物品の備蓄を引き続き充実してまいります。また、長期間の避難生活が続く場合も想定し、避難後の生活水準の維持向上に配慮した対策にも力を入れてまいります。まず今年度は、発災後のトイレ環境を改善するため、清潔で障害者なども利用できる水洗式の自走式トイレカーを整備します。

 (犯罪・事故防止)

 犯罪や事故を防止することは、市民の皆様が安全・安心して暮らすことができる地域社会の実現のための重要な要素です。カーブミラーや防犯灯の設置・維持管理、防犯カメラの設置補助を引き続き行ってまいります。

 巧妙・複雑化する悪質商法などからの被害防止のため、引き続き消費生活センターにおいて消費生活相談員を配置し、消費生活トラブルの相談や啓発を行ってまいります。

 万が一、市民の方々が犯罪などにより心身に被害を受けた場合、そのダメージ軽減のためには、行政、市民及び事業者の支援が必要です。犯罪被害者が受けた被害の回復と軽減に向けた施策を推進し、犯罪被害者を支える地域社会の形成を図るため、「南あわじ市犯罪被害者等支援条例」の制定により、再び平穏な生活を営むことができるよう、経済的な負担を軽減するための支援金を支給いたします。

 (公衆衛生)

 適切なごみ処理、安定した水の供給、火葬場や下水道の整備は、衛生的な生活を営むうえで欠かせません。可燃ごみ処理場については、淡路島3市共同での整備を見据えた計画策定に着手しております。また、市民の皆様が安心して水道を使っていただくため、ニーズの高い方々には財政的な支援を行います。下水道事業では、処理場の統廃合などにより一層効率的な経営を目指すとともに、浄化槽処理区については、生活排水の適切な処理を行うため浄化槽の設置を補助します。

(5) 「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり

 第五の行動は、『「対話と行動の行政」の実現によるまちづくり』です。

 (地域の成長)

 平成29年度から地域づくりチャレンジ事業を開始しました。これまで7つの地区がこの事業を通じて課題解決に取り組んでおります。

 例えば灘地区では、若者を中心に地元海産物の販路開拓や灘みかんを使ったジュースのPRに取り組む過程で、自らの地域が全国に誇れる価値を持つことに気付くとともに、20年ぶりに納涼祭が復活し、地域の賑わいを取り戻す大きな一歩を踏み出しました。

 このように、地域づくりで大切なことは、地域にあるものを生かして育てていくことにより、地域自身の活力が増し、担い手が成長することです。そのためにも地域づくりは行政主導ではなく、地域の住民が自分で考え議論し進めていくものでなければならないと考えています。地域と行政が協力し、対話をしながら地域の将来について共通の認識をもって一緒に取り組めるようなまちづくりを進めます。

 その一環として、昨年から市内全域で地域との対話を実施しています。各地域の積極的な参加に感謝します。ここで貴重なご意見をいただくとともに、私も率直な意見を申し上げました。今回の対話を契機とし、課題やテーマを整理したうえで、地域づくり協議会や関係者を交えた深い議論を行っていきます。その中で話し合われた内容を地域と行政の共通認識とし、今後の政策にも反映してまいります。

 (関係人口の増大)

都市部に住む人々も、生まれ育った地域、両親の出身地、働いたことのある地域、さらには思い出に残る訪問地など、様々な形で関わった地域を大切に想い、「ふるさと」あるいは「第二のふるさと」として応援したい、貢献したい気持ちを持たれていることと思います。

 

 私は、本市の豊富な特産品や観光資源を通じて幅広い方々と市民とのふれあいのきっかけづくりを進め、本市のファン・サポーター、すなわち、市民の皆様一人ひとりとつながる関係人口を増やしていくことが大事だと考えています。その手段の一つがふるさと納税です。新たな制度に基づき、市民がふるさと納税の使い道を提案し、いただいた寄附者の「想い」を市民生活に活用することで、市民と寄附者がつながります。市民による観光案内や祭りへの参加など体験型の返礼品を通じて直接寄附者と市民がふれあったり、高齢者みまもり訪問サービスやタクシーチケットなど思いやり型の返礼品を通じて寄附者が市民の相互扶助をサポートすることによってもつながります。

 昨年度、市民の方に市外のお知り合いをご紹介いただく「送付先紹介レター」を始めました。ご参加された方に感謝します。その中で、久しぶりに友人と話ができたという声もいただきました。

 こうした工夫を重ねながら、関係する方々の「つながり」がより一層深まるよう、市民の皆様の参画を得て、共に地域活性化に取り組んでいきたいと考えています。

 (一期一会)

 今年の仕事始め式において、仕事に関して一期一会を大切にしようということを職員への訓示の中で話をしました。一期一会とは、元々茶道の用語で、ある茶会の機会は二度と繰り返されることのない一度きりのものなので、一生に一度のものと心得て亭主・客ともに誠意を尽くす、という心構えのことを言います。私は、この心構えは、すべての仕事に当てはまるものだと思います。目の前の仕事は、相手や時期、環境が違い、二度と同じものはありません。一つひとつの仕事の個性を見極め、その個性に合わせて最適の対応をすることがプロフェッショナルの仕事であると常々感じています。ここでも「好きこそ物の上手なれ」という言葉が当てはまると思います。プロフェッショナルになる近道は、仕事を好きになることです。業務改革プロジェクトにより、ペーパーレス会議を推進するとともに、RPAなどの導入により、効率よく仕事を進め、やりがいが感じられる環境を整えます。

 市民ニーズに的確に対応するためには、市民の皆様の声を聴き、それを政策に反映させ、その本質を市民の皆様に伝えることができる力が必要です。組織は人から、組織力向上のためには、職員の能力も一層向上させなければなりません。より風通しのよい、コミュニケーションが取りやすい職場づくりを進め、仕事を通じた職員の成長につなげてまいります。ひいてはそれが私の目指す「最強の市役所」にもつながると考えます。

 専門性の強化も急務です。大鳴門橋下部の自転車道の整備に合わせたみさき荘の改修など設計、施工監理を伴う大きな計画が控えるこの機に、関係機関と総合的な調整を行う営繕専門の部署を立ち上げ、専門的知見を持つ者を職員として迎えます。

令和2年度 歳入歳出予算

 令和2年度予算の提案にあたり、市政運営、主要事業についての方針をお示ししました。いよいよ今年で普通交付税の合併算定替の段階的縮減が終了し、一本算定となります。厳しい財政状況にありますが、本市が抱える様々な課題解決のため、必要な事業を積極的に展開する予算を編成いたしました。その結果、令和2年度歳入歳出予算は、

一般会計 「267億2,000万円」(前年比 ▲3.7%)

特別会計 「130億8,450万円」(前年比 ▲1.0%)

企業会計 「53億3,915万3千円」(前年比 ▲9.1%)

合計 「451億4,365万3千円」(前年比 ▲3.7%)です。

結びに

 今年の干支は、十二支で一番目の子です。鼠は繁殖力が高く、子宝に恵まれ、子孫繁栄の意味が込められています。本市も子の年にあやかって、子ども達で賑わい、子ども達の笑顔が絶えない、「子育ての喜びが見えるまち」を構築するため、豊かな地域資源を最大限に活かしつつ、市民の皆様と協働しながら鋭意取り組んでまいります。

 議員各位におかれましては、十分ご理解賜り、慎重審議のうえ、適切なるご決定をいただきますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。

令和2年2月21日


南あわじ市長  守 本 憲 弘 

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