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広報南あわじ「障害者雇用の促進」(令和6年12月号)
障害者雇用の促進
問い合わせ:福祉課(電話43-5216)
南あわじ市では、「誰もが自分らしく過ごせ、地域全体で支え合えるまちづくり」を目指し、さまざまな施策に取り組んでいます。しかし、障害者雇用については、さまざまな課題が依然として存在しています。
当事者団体や事業所のアンケートなどからは、雇用促進に必要なものが見えてきています。
障害者雇用に向けた一歩のために
- 就労や仕事に関する正しい情報や身近な相談先がある。
- 働く側、雇う側、お互いの「知らない」ことを「知る」「理解する」ことに変えていく。
- 個別にできることと苦手なことがあるため、それを理解して一人ひとりに合わせて応援する人がいる。
実際に障害者雇用を行っている事業所は一人ひとりの「はたらきたい」思いにどのように向き合い、雇用を進めていったのでしょうか。また、支援機関のサポート体制はどのようなものなのでしょうか。
事業所や支援機関のインタビューを通じて、ご紹介します。
障害者雇用を行っている事業所
養護老人ホームさくら苑
清掃業務等を行う4名の障害者の方を雇用
中川まゆみ施設長
- 障害者雇用を進める上で、どのような点を重視していますか?
最も重要なのは、障害の有無に関わらず、個人の能力に合わせた仕事を見つけることです。特別扱いするのではなく、その人が持つ能力を最大限に生かせる仕事を提供することが大切だと考えています。
具体的には、介護の業務から専門性を必要としない部分を切り出し、障害者の方に担当してもらっています。これにより、安心して働ける環境を作りつつ、職員の負担軽減にもつながっています。 - その他に、工夫していることはありますか?
仕事内容を明確に伝え、必要に応じて職員がサポートする体制を整えています。また、障害者就業・生活支援センターと連携し、障害者の方の特性や能力を理解した上で、適切な仕事内容や職場環境を検討しています。
さらに、作業環境の整備も重要です。例えば、清掃作業を行う方には専用の道具を用意し、常に同じ場所に置くようにしています。新しい道具を導入する際には必ず説明を行うなど、細やかな配慮を心がけています。 - 障害者雇用によってどのような効果がありましたか?
職員の負担軽減や業務効率の向上といった直接的な効果はもちろんですが、それ以上に大きいのは職場の雰囲気の変化です。障害者の方々と共に働くことで、職員の意識改革にもつながっています。多様性を受け入れることの大切さを学び、より温かい職場環境が生まれています。
また、人材不足の解消にも貢献しています。介護業界は慢性的な人手不足に悩まされていますが、障害者の方々に活躍の場を提供することで、新たな人材の確保につながっています。 - 障害者雇用を検討している事業所へのアドバイスはありますか?
障害者雇用を特別なことと考えず、「共に働く仲間を迎える」という意識を持つことが大切です。職場に新たな活力をもたらす機会だと捉えていただければと思います。
株式会社ミハラオートサービス
主に洗車作業を行う1名の障害者の方を雇用
塩濱武仁代表取締役
- 障害者雇用を進める過程でどのような変化があったかお聞かせください。
最初は正直、不安だらけでした。障害者雇用の経験がなく、受け入れ体制も整っていませんでしたから。また、障害者の方に対する理解が不十分で、雇用は難しいものだと思い込んでいました。
そんな中で、就労支援事業所「森の木ファーム」さんのサポートが大きかったですね。採用の準備から、障害者の方の特性を知るための研修、職場環境の整備まで支援していただきました。また、社員全員で障害者雇用について話し合い、ベクトルを合わせることを重視しました。 - 実際に雇用してみて、どのような変化がありましたか?
社員の意識改革が一番大きいですね。当初は不安や抵抗感がありましたが、実際に一緒に働く中で、障害者の方に対する理解が深まり、共に働く仲間として意識が変わっていきました。また、職場環境の改善にもつながりました。誰にでもわかりやすいように、1日の流れを可視化したり、洗車のマニュアルを作成したりしました。これは障害者の方だけでなく、すべての社員にとって働きやすい環境になりました。 - 業務面での変化はありましたか?
はい、「仕事の切り出し」という新しい働き方を学びました。特定の作業を障害者の方に任せることで、他の社員はより専門性の高い業務に集中できるようになりました。結果として、納期短縮や顧客へのサービス向上、社員の負担軽減につながっています。 - これから障害者雇用を検討している事業所へメッセージをお願いします。
障害者雇用は、企業にとって大きなメリットがあります。人手不足の解消だけでなく、従業員の意識改革や職場環境の改善にもつながります。特に中小企業の方々に伝えたいのは、規模に関係なく障害者雇用は可能だということです。ぜひ、一歩を踏み出してみてください。
障害者雇用を支援する機関
淡路障害者就業・生活支援センター
「障害のある方の就労支援」「企業への雇用支援」を行う支援機関
堂阪量一主任就業支援担当
- こちらでは障害者の就業に対してどのような取り組みを行っていますか?
まず、障害者の方が自分の特性を理解できるよう、アセスメント(評価)やカウンセリングを通じてサポートしています。自分の強みを生かせる仕事を見つけることは、働き続ける上で非常に重要です。職業評価も実施し、どのような仕事が適しているかを企業と一緒に考えます。また、企業向けの説明会や研修も行い、障害者雇用に関する情報提供や相談支援をしています。 - 近年、障害者雇用の状況に変化はありますか?
2023年4月から合理的配慮提供が義務化され、企業の障害者雇用に対する関心が高まっています。以前は「雇用は難しい」というイメージもありましたが、現在では障害者の方が働きやすい職場環境を整えようとする企業が増えています。製造業をはじめ、さまざまな業界で雇用機会も拡がっています。 - 企業にとっての合理的配慮とは?
合理的配慮とは、障害の特性に合わせて働きやすい環境を提供することです。例えば、業務内容の調整や職場のレイアウト変更、業務の補助ツールの導入などが考えられます。配慮は企業にとって負担にならない範囲で行われるものであり、雇用者本人が働きやすい環境作りが目的です。合理的配慮を通じて、企業側の理解が深まり、障害者が力を発揮しやすい環境を整えることが可能になります。 - 企業側で依然として課題となっている点は?
多くの企業は、障害のある方でもできることがたくさんあるという認識を持ち始めていますが、現場での偏見や不安が払拭されていない場合もあります。また、障害者の方自身も自分の強みや特性を理解しきれていないケースが多く、自己理解を深める支援が必要です。 - 障害者雇用を考えている事業所に一言お願いします。
障害者雇用は、企業にとっても職場環境の改善や業務効率化につながるとても良い機会です。ぜひ一緒に一歩踏み出してみてください。
森の木ファーム
福祉サービスを利用した後に一般就労した人が、 仕事を続けていくための支援を行う事業所
吉田智子就労定着支援員
- 障害者雇用において大切なことは何でしょうか?
「障害者だからできない」という先入観を捨てることが最も重要です。障害のある方にもそれぞれ異なる特性があり、中には健常者よりも優れた能力を持っている方もいます。まずは、その方の得意なことを理解し、生かせる仕事を見つけることが大切です。 - 企業側に求められる工夫はありますか?
仕事の切り出しや工夫で活躍の場を広げることができます。例えば、洗車業務を任せる場合でも、車の運転が難しい方であれば、洗車作業のみを担当させるなどの工夫が可能です。また、作業手順書やチェックシートの導入も効果的です。これらの工夫により、ミスを減らし、業務の効率化にもつながります。 - 障害者雇用のメリットについて教えてください。
企業にとっては、人手不足の解消や業務効率の改善につながります。
また、多様性を受け入れる企業風土が育まれ、社内コミュニケーションの活性化も期待できます。さらに、企業の社会的責任を果たすことにもなり、企業イメージの向上にも貢献します。 - では、障害のある方自身にとってのメリットはどのようなものがありますか?
経済的な自立を促すことができます。また、やりがいを感じ、自己肯定感を高めることができます。
さらに、職場という社会に参加することで、人とのつながりを作り、孤独感を解消することができます。規則正しい生活リズムを確立し、心身の安定を図ることもできるんです。 - これから障害者雇用を検討する事業所へのアドバイスをお願いします。
まずは、障害者の方の特性を理解することが大切です。そのうえで、丁寧なコミュニケーションを心がけてください。また、周りの従業員への周知徹底も重要です。不安や疑問があれば、私たちのような専門機関に相談してください。一緒に、障害者の方が能力を発揮し、活躍できる職場環境を作っていきましょう。
兵庫県立あわじ特別支援学校
障害のある児童生徒を教育対象とする、淡路地区唯一の特別支援学校
尾山 圭進路指導部長
- この学校では、障害のある生徒の就職支援にどのような取り組みを行っているのでしょうか?
本校では、生徒一人ひとりの希望に寄り添い、それぞれに合った就職先を見つけることを目指しています。具体的には、中学部では福祉サービス事業所の見学、高等部では一般企業も含めた見学を行っています。また、「ようこそ先輩」や事業所説明会、企業見学会などの取り組みを通じて、生徒たちが実際の職場を具体的にイメージできるよう工夫しています。 - 学校での生活経験や作業学習は、就職後どのように役立つのでしょうか?
学校での経験は、働く上での基盤を作ります。たとえば、日常生活動作のスキルを磨く掃除や洗濯は、職場でも重要なスキルとなります。加えて、作業学習では、生徒が実際の作業を体験することで、集中力や正確性を養います。 - 障害者を雇用する際のポイントを教えてください。
一人の従業員として受け入れることは、最初は難しいと感じるかもしれません。しかし、まずは「試してみる」という気持ちで接していただけるとありがたいです。
また、業務を細分化することが鍵です。従業員が通常行う業務の中から、障害のある方に適した部分を切り出し、任せるようにするとスムーズです。このような業務調整によって、本人の得意分野を生かし、結果的に企業全体の生産性向上にもつながります。 - 卒業後のサポート体制について教えてください。
卒業後は障害者就業・生活支援センターが重要な役割を果たしています。同センターは、卒業生と事業所の間に立ち、トラブルがあった場合の調整や、適切なアドバイスを提供します。 - 事業所にメッセージをお願いします。
まずは見学や短期実習を通じて、障害のある人たちの可能性を知る機会を設けていただければと思います。受け入れの準備に不安がある場合でも、学校や支援機関がサポートしますので、ぜひ一歩踏み出してください。
障害者雇用で働く方の声
養護老人ホームさくら苑
利用者の方が気持ちよく使ってくれたらという思いを込めて掃除の仕事をしています。利用者の方から「綺麗にしてくれてありがとう」と感謝の言葉をかけてもらうこともあり、それがやりがいにつながっています。
株式会社ミハラオートサービス
同僚や上司との良好な関係が、大きな安心感になっています。社長は対等な立場で接してくれ、丁寧にサポートしてくれるので、働きやすい環境が整っています。また、作業の進め方にも配慮があり、私のペースで無理なく仕事を進めることができています。
応援します!事業所のその一歩
- まずはご相談ください
- 障害のある方の就労支援・企業への雇用支援▶淡路就業・生活支援センター(電話38-6181)
- 障害のある方の就労支援・訓練の機会の提供▶森の木ファーム(電話53-0181)
- 学生の移行支援(卒業後の就労・社会参加)▶兵庫県立あわじ特別支援学校(電話22-1766)