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ふれあい市長室(143)

印刷用ページを表示する更新日:2018年4月1日更新 <外部リンク>

上勝町の取り組み

平成29年9月 南あわじ市長 守本 憲弘

上勝町のゴミの分別を視察する守本市長

 8月半ばに知人の案内により、山村のまちおこしで話題の徳島県上勝町、神山町を見学してきました。どちらも印象的だったのですが、上勝町の取り組みは雑誌などで紹介されているイメージとは違う発見があり、一次産業の盛んな南あわじ市でも参考になるところが多々あると思いましたので、今回のコラムでご紹介することとしました。
 まず、葉っぱビジネスとして有名な「いろどり」です。
私は注文リストが表示されたタブレットを手にしたおばあちゃんが山中を駆け回って葉っぱを集める姿を想像していました。実際は少し違って、各農家が注文履歴などから将来の需要を予測して、自分の畑に南天、モミジ、ハスの花などを植えています。そして情報センターから送られてくる都会でのイベント情報や需要予測に基づき、あらかじめ葉っぱを摘んで水に浸しておくなどの下ごしらえをしておきます。誰かが悪い品質のものを出荷してしまうと、以後注文が来なくなるという危機感が出荷者の間で共有されており、頻繁に勉強会などを開催して品質確保に努めています。
 また、一部の農家が注文を独占してしまわないよう、一つの注文をクリックして納入予定者として登録すると、それをJAに納入するまでは、次の注文を受けられないシステムになっています。
 つまりこのシステムは、まずJAの営業部門が積極的なマーケティングにより注文を獲得し、農家はそれを踏まえて自ら作付けし収穫するものを決めるという、一次産業における受注生産の仕組みが基本にあります。これは日本の農業・漁業が今後実現せねばならない、「需要に応じて生産・収穫する」という目標を先行的に実現したものだと思います。そして、その作物がたまたま高齢化が進んだ山村という地域に合致した、重量もなく、腰を曲げなくても取り入れられる、「葉っぱ(ツマもの)」であった、またできるだけ多くの人を動員して、無理なくその需要に応えていく仕掛けを作ったということでしょう。「いろどり」が普及してから、喜んで働く高齢者が増え、医療費も削減されたと聞きました。
 この町はそれだけではなく、役場の若手職員の熱意を活かして、ゴミの綿密な仕分けとリサイクルを実現し、ゴミゼロの社会を目指しています。また、豊富な山林資源を活用すべく、様々苦労しながらも、公共施設等に木質チップのボイラーで熱を供給しています。
 住民の力で地域の資源をとことん使い尽くすという考え方を忠実に実行に移している姿に感動を覚えました。近年はこうした町のあり方に共感して若者の移住も増えているとのことでした。